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- 2006/10/12 掲載
【中国ビジネス最前線(1)】中国語もままならない日系企業が中国進出を果たせた理由
バイオジェニック
中国の西南端、周囲をベトナム、ラオス、ミャンマー、チベット自治区、四川省などに囲まれる雲南省。その省都である昆明の郊外でハイテク機器を駆使した変わった農業を行う日系企業バイオジェニック(本社:東京)を紹介する。
昆明はマラソンのQちゃんこと高橋尚子や格闘家のボブサップが高地トレーニングのためやってきたこともある標高2000m弱に位置する高原都市。四季はあるものの、南に位置するため夏には雨期、冬には乾期もある。そんな気候のため、夏は毎日のように短時間にスコールがざっとふり気温を落とし、冬は雨が滅多に降らないため気温を上げる。しかも高地にあるため、結果的に年中10~25度という常春の気候となる。このため昆明市は別名「春城(春の都市)」と呼ばれる。また高地で南に位置するということから日差しが強く、ここで農業を起業しようとする日本企業や個人は少なくない。
荏原実業の子会社である同社も、昆明で農業を展開する日系企業のひとつだ。「荏原」の単語を聞いて水と空気など環境をテーマにする「荏原製作所」を思い浮かべる人はいるだろう。荏原実業は荏原製作所がのれん分けした企業で、同じように環境をテーマにしており、その子会社である同社も同様に環境をメインに扱う生産職人が主体の企業だ。
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ヘマトコッカス藻乾燥バイオマス |
抗酸化ということは、万病の元である「活性酸素」の消去や、血中悪玉コレステロールの酸化抑制による生活習慣病の予防や、筋肉の疲労回復や、肌の老化を防ぐ作用があり、これを利用したサプリメントなどがにわかに人気になっている。
荏原実業グループが外国で工場を作るのは、同社の昆明工場が実は初めてだったという。ヘマトコッカス藻の培養には屋外において、年間の日照量が多く、良質の水があり、年間平均気温が10~20℃で、クリーンな空気というのが必要となる。そこで同社は当初は中国の昆明のほか、米国、豪州、ベトナムなどにも工場の候補地があったが、最終的に昆明を選んだ。
中国では活発な都市開発が行われているほか、経済成長に合わせて自家用車数も増えたため、都市部では環境が悪化し、昆明も例外なく空気が汚れてきている。しかし、市内から約20km離れた同社の昆明工場には環境汚染の影響は及んでいない。
ヘマトコッカス藻の生産現場は大変ユニークだ。百聞は一見にしかず、まずは右の動画を見てほしい。
工場の敷地内には屋外に延々透明のパイプが並んでおり、ぱっと見た感じは、淡い緑から濃い赤まで色とりどりの色水の入っていて下から上に気泡が流れていて、まるで映画や漫画の科学者の部屋が屋外に飛び出たような、そんな強烈な印象を受ける。
この謎の装置は同社が開発した「閉鎖式培養器:フォトバイオリアクター装置(略称リアクター)」というもので、ここでヘマトコッカス藻にアスタキサンチンを蓄積させる。ヘマトコッカス藻ははじめは緑色なのだが、アスタキサンチンが蓄積されると赤色に変色する。リアクター装置が装置によって緑色や赤色をしているのはそういった理由がある。
同社はリアクター装置と、ヘマトコッカス藻の培養技術を確立することでアスタキサンチンを大量生産することに成功した。現場では中国人が研究職で10名強、それに約70名がリアクター装置が並ぶところで収穫作業などを行っている。現在ヘマトコッカス藻の生産量はアスタキサンチン換算で年間400kgとなっている(注文が増大すれば1トンに及ぶそうだ)。
生産するだけでなく、研究者向けに1人1台のPCをあてがい研究や管理をするための研究棟もある。このPCには、経験上故障率が高い国産メーカーではなくレノボ(聯想)製PCが採用されている。通信環境はADSL。日本とやり取りする際には充分な速さとはまだなっていないのが、内陸都市の性だろうか。
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