- 2006/07/28 掲載
ビジネスブログはどこへ向かうのか、ブログも2.0の時代へ
【売上アップ】~「いかに発信するか」から「いかに発信させるか」~
2004年。日本におけるブログの黎明期ともいえるこの当時のビジネスブログのポイントは、「身近なところからの発信」にあった。
ビジネスブログ黎明期における成功要因は?
「日産自動車の菊池です。先日、表参道ヒルズに行ってまいりました。そう、先日お伝えした、日産モダンコレクション“MODERN BEAUTY”を取材しに」
これは、2004年の9月30日からスタートした『日産:TIIDA BLOG』(※1)のある日の冒頭文だが、このような親しみやすさこそブログで発信することの、大いなる特徴だったのだ。従来の企業サイトというものは、どうしてもトップダウンで情報を発信するというニュアンスが強かった。しかし、ブログという誰もが開設できるツールにおいては、発信者と受信者の温度差というのが、極めて少ない。
同じ目線で日々発信されるという印象が強いので、消費者は、その情報に対して親近感を抱きやすいという効果があったわけだ。日々更新できる。そして、親近感を持ってもらえる。企業サイドはこんなブログの特性を活かして「いかに発信するのか?」というポイントに腐心して、様々なブログを作りだしていったわけである。
<>br では、次にそんな流れの中で立ち上がった特徴的なブログをふたつばかりご紹介しておこう。
まず、グンゼの『さすらいの新マネ写真日記』。これは、新庄剛志リアルマネキン=「新マネ」を持って全国を旅し、各地での人々との交流を記録したブログである。残念ながら終了してしまったが、とても企業が行なうとは思えない、そのバカ、いやその茶目っ気ぶりは、続編となる『Big新マネBlog』(※2)でも、充分堪能することができる。
もうひとつは、『日産NOTEブログムービー』(視聴期間は終了)。こちらは、日産が楽天と共同制作した日産NOTE(ノート)のPRコンテンツ。妻・ムラカミトモミ(吉岡美穂)が綴るブログが、実際に撮影された動画と交錯しながら展開していくという大掛かりなもので、ブログを用いた表現方法の中でももっとも豪華なコンテンツのひとつだった。
最初の壁
このように各企業は、ブログを使って「いかに発信するか」という観点において工夫していったわけだが、そういった流れは一段落したように感じている。というのは、こういった発信方法の摸索は、とりあえず壁にぶち当たった感があるからだ。それはこういうことである。

このようにブログ黎明期においては、それなりに注目を集めた発信方法も、今となっては訴求力がなくなった感が強い。となると、人気ブログを作るためには、どうしても個人の才覚による部分が大きくなり、なかなかヒットブログを戦略的に作ることが難しくなってきたわけである。
つまり、「いかに発信するか」という摸索期は、ひとまず終焉したのだ。では、もうビジネスブログの発展は止まったのかといえば、答えはNOだ。これからは、「いかに発信するか」から「いかに発信させるか」に観点を変えて発展していくように思われる。
ビジネスブログ2.0の時代へ
何かをPRしたい。そんな企業サイドの思惑を、今までは「いかに発信するか」という観点で考えてきたわけだが、これからは多くの一般のブロガーに「いかに発信させるか」という観点で考えていくようなると感じている。
それは例えばこういうことである。
■『時をかける少女』ブロガー試写実施!30名様ご招待!
『時をかける少女』を一足早く見て、あなたのブログでレビューしよう!
■応募資格 個人で映画またはアニメのブログサイトを運営されている方ならどなたでも。Mixiなどでも可。
試写鑑賞後、映画の公開日(7月15日)までにブログサイトでレヴューをお書きいただける方。(決して良いレビューばかりを強制しません。それぞれの感性でお書きください。)
これは、『劇場アニメーション 時をかける少女』(※3)のサイトに掲げられたPR文である。これを読んでいただくと「いかに発信させるか」という観点がどういうことかがおわかりいただけるだろう。
ひとつのブログで何かを発信するよりも、多数のブログで言及してもらうほうが、PR効果が高いのは自明の理である。それゆえ、こういった「いかに発信させるか」という戦略は、ブログ人口が増えると予測されるこれからの時代に、実によくマッチしていると言えるだろう。
今、ネット界で盛んに用いられている言葉に「Web2.0」というものがある。いわば「一般ユーザーの発信する情報が核となるネットサービス」の総称であるが、この言葉に照らし合わせると、従来の「いかに発信するか」という観点で作られたのが「ビジネスブログ1.0」。それに対し「いかに発信させるか」という観点で作られたのが「ビジネスブログ2.0」と言えるかもしれない。
これからの主流となるのは、もちろん後者だ。
●執筆者紹介
岡部敬史(おかべ・たかし)
エディター/ライター。
宝島社で編集者として多くのムックを手がけた後、現在はフリーでブログ関連の テーマを中心に活動している。
著書に『ブログ進化論』(講談社プラスアルファ新書)がある。
自身のブログ「岡部敬史の編集記」は以下。
http://blogs.dion.ne.jp/okataco/
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