- 2006/07/21 掲載
米IT企業の第3四半期決算にみるIT勢力図
売上は軒並み過去最高を記録するも、収益の面で大きく分かれる
制裁金費用に泣いたマイクロソフト
米マイクロソフトが21日発表した4―6月期決算は、売上高118億400万ドル(前年比16%増) 純利益が28億2800万ドル(前年同期比24%減)だった。SQL Serverを中心としたエンタープライズサーバや、XBOXなどゲームが伸び、売上高は4月時点での予想を上回り、過去最高を記録している。しかしながら純利益は前年に比べ大きく落ち込み、アナリストの事前予測を下回った。
これは欧州委員会より独禁法違反として科せられた、3億5100万ドルの制裁金の費用計上や、MSNをはじめとしたインターネット事業が営業赤字を計上するなど、利益の圧迫が主因。その他にもWindows Vista など大型製品のリリースを来年に控え、他社との差別化が必要な技術分野への研究開発費の追加投資が増大したことも要因とみられる。
来年の大型製品の投入時期まで、同社は株価を下支えするためにもテコ入れ策を打ち出している。決算発表とあわせ、2011年6月末までに最大で400億ドルの自社株買いも発表した。第1弾として8月17日までに200億ドル分を買い付け、株主への利益還元を図る。
iPodの独走で高い収益を維持するアップル
この他にも音楽ダウンロードサービス、「iTunes Music Store」 はダウンロードサービス全体の80%のシェアを持っていると言われ、こちらもiPodと合わせ、まさに当社の「ドル箱」となっている。
しかしながら好調アップルにも不安要素はある。現在アップルは、iPodsとiTunes Music Storeの関連付けは違法だと主張する、複数の訴訟を抱えている。米国内でも、Slattery社が米国での独禁法にあたる、「シャーマン法」の第1条および2条、「カリフォルニア州の事業・職業規範」16700項違反に当たるとの訴訟を起こしており、今年6月6日に審理が開かれる予定。欧州委員会も同様の調査を進めており、もしこれが違法と判断されれば、当然制裁金の措置が講じられ、マイクロソフトの二の舞になりかねない。
各社が売上高で過去最高を記録する中、減収減益の渋い決算を発表したのが、米Intel。7月19日発表した第2四半期(4~6月期)決算は、売上高が80億ドル(前年同期比13%減)、純利益は9億ドル(前年比57%減)という結果であった。
Intelの説明によるとプロセッサの価格競争が過熱し、顧客が在庫縮小に動く中、マイクロプロセッサの販売台数が世界の全地域で季節パターンを下回ったとして外部要因による業績低下を強調したが、同社の事業戦略が大きな岐路に立っていることは事実だ。
こうした業績にも関係し、米Intelでは上級幹部を一新する大きな組織再編に動いている。21日の発表によると今まで、「モバイル」「販売/マーケティング」「デジタルホーム」「ソフト/ソリューション」などの部門ごとに二人配置していた共同責任者を一人体制に改め、意思決定の迅速化を図る。
世代交代が進む米インターネット業界
インターネットの業界でも着実に世代交代が起こっている。まず前年に比べ2倍以上の利益という好決算を発表したのが米グーグルだ。同社が20日発表した4―6月期決算は、売上高24億5600万ドル(前年比77%増)、純利益7億2100万ドル(前年比210%増)。売上高、純利益ともに過去最高を更新した。44.7%まで増加した検索サービスでのシェアを高めることで、同社の収益源であるAdwords(検索連動型広告)の売上も拡大していく戦略が功を奏し、Yahoo!やMSNなどを引き離し、検索エンジン企業では独走態勢に入っている。一方、グーグルと熾烈な覇権争いを繰り広げるYahoo!の4-6月期決算は売上高15億7600万ドル(前年比26%増)、純利益は1億6400万ドル(前年比78%減)という結果に終わった。純利益の前年比が大きく下回ったのは、4700万ドルにもおよぶストックオプション費用の計上が大きな原因であるが、事業全体での成長鈍化も目立ち始め、グーグルとの差は確実に開き始めている。
日本では検索エンジンのみの事業から、Webサービスを中心とした総合サービス事業へのシフトが引き続き好調なYahoo!だが、米国ではその戦略が成功しているとは言えない。好調なブランド広告や、音楽配信事業などを強化し、Yahoo!は巻き返しを図れるのか?次の決算の行方が今から注目されている。
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