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- 2006/04/04 掲載
IP電話の活用で経営革新を実現する(2/3)
このようにIP電話は、企業のコスト削減や経営革新を支援するソリューションとして期待が大きい。企業がIP電話導入を検討する場合、次の3つのサービス形態から選択する。「IP電話サービス(VoIPゲートウェイ)方式」「IP-PBX方式」「IPセントレック方式」である。それぞれの特徴とメリット・デメリットを簡単に紹介する。

IP電話サービス形態
[1.IP電話サービス(VoIPゲートウェイ)方式]
IP電話サービスとは、既存の電話設備(ボタン電話やビジネスフォン)をそのまま利用し、回線部分をIPに置き換えるしくみである。 追加の機器購入コストを抑え、割安な通話料金を利用できる。1拠点で数回線程度を利用する中小企業を対象としたサービスといえるだろう。
製造業のB社では、社内で使っている6回線のうちの4回線を、光ファイバ回線を使ったIP電話サービスに置き換えた。毎月10万円以上をあった電話代が3割程度削減できた。さらに、ブロードバンド環境に移行したことをきっかけに、LAN環境を見直しすべてのパソコンでインターネットとメールが利用できる環境を整備した。その結果、設計図や文書データを取引先と電子メールでやりとりするなど情報共有がスムーズになったという。
このようにIP電話サービスは、比較的安価に導入でき、コスト削減効果のみならず、情報共有の促進など副次的効果が期待できる。デメリットには、ADSLや光ファイバなどのブロードバンド回線との接続に必要となるVoIPゲートウェイという装置が、通信事業者が推奨する機器からしか選べないことがある。あくまでも「音声通話」をターゲットにしたサービスであり、IPを利用した様々なアプリケーションとの連携などの拡張性は他の方式に比べて高くはない。
[2.IP-PBX方式]
IP-PBX方式とは、従来のPBXが行なっていた電話の発着信の制御などをIP-PBXに置き換えるものだ。拠点間がIP網で接続されていれば、離れた拠点の内線電話も管理が可能となり、運用保守業務が一元化できる。拠点毎のPBX設置が不要で、内線通話は社内ネットワークを利用するので電話代が無料となる。また電話線をLANケーブルに統合できるので、電話専用の配線が不要となり運用コストを削減可能だ。
IP-PBXのもう一つの特徴は、アプリケーション連携などの拡張性が高いことだ。電話とEメールとFAXを一元管理(ユニファイドメッセージ)したり、パソコン上で電話(ソフトフォン)を利用したり、無線LAN環境で会議室などから自由にアクセスするなど、コミュニケーションやワークスタイル(仕事のやり方)をかえる可能性を持っている。
利用するためにはIP-PBXとIP電話機への買い換えや、LANの再構築など、移行のための費用が発生する。一般的には、既存のPBXのリースアップ時、ネットワーク再編時やオフィス移転時にあわせて検討される。IP-PBXは、ある程度の回線数を複数拠点で利用している企業向けの方式であり、コストメリットよりも、グループウェアやアプリケーション連携による業務効率アップを期待して導入されることが多い。
[3.IPセントレックス方式]
IPセントレックス方式とは、通信事業者などが自社に共用型のIP-PBXを設置して、企業向けにIP電話を利用できる環境を提供するサービスのことである。
IP-PBXやIP電話への置き換えが不要となり、拠点に設置されているPBXの一部または全部が撤去されリース支払いや保守・運用コストが削減できる。もちろん通信コストも他の方式と同様に削減される。更に、IPセントレックスでも、電話会議やユニファイドメッセージといった音声とデータの統合による付加サービスが提供されている。IP-PBXを自社で構築・運用するのが厳しい中小企業でも導入可能だ。
このように非常にメリットが多いIPセントレックスであるが、一方で課題もある。例えばIPセントレックスで提供されているPBX機能は、従来のPBXが搭載している機能(400~500)に対して、基本機能に限定して(20~40)提供されている。特殊なPBX機能を利用したいときは既存のPBXを残す必要がある。アプリケーション連携についても、通信事業者が提供するサービスに制限される懸念がある。
IP電話の3つの方式は以上の通りである。どの方式を選択するかは、自社の回線規模や拠点数、電話の利用状況や電話設備の状況をふまえ、IP電話への移行コストや費用削減効果などを把握した上で、自社に最適なものを見極めていく。

IP電話のコスト試算
コストと共に留意して欲しいのが、アプリケーションの連携機能である。IP電話のメリットを最大限に享受するためには、短期的なコスト削減効果に加えて、将来的にはユニファイドメッセージやグループウェアなどアプリケーション連携に柔軟に対応できるようなシステムを検討しておくことが重要だ。
IP電話導入時の留意事項
IP電話導入を検討する場合は他のシステムと同様、導入の目的を明確にし、自社の現状をふまえて、期待できる効果が高いモノからはじめよう。
また電話網という企業のライフラインをリプレースするにあたっては、音声の品質やシステムの信頼性、セキュリティについて、どのレベルまで要求するのか? その考慮が必要だ。
最後に、コミュニケーションやワークスタイル変革のためには、システム面の考慮だけではなく、社員の意識や業務ルールの変革、利用者への操作研修や啓蒙活動などを並行して推進することが成功のための鍵となる。
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