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DXが加速する中、インフラ管理の自動化への関心は増すばかりだ。そこで見込まれるメリットは多岐にわたるが、現在進行形で関連技術の整備が進む中、どう進めるべきかで悩む企業も数多い。ガートナー バイス プレジデント,アナリストのケビン・ジー氏が、インフラ自動化によりもたらされるメリットを独自に整理するとともに、具体的な取り組み方について指南した。
インフラ自動化に取り組む企業は2025年に7割超
インフラ自動化は今後のDXにおける核となる取り組みだ。それを抜きには、現場の要請に応える迅速なデジタルの配備は困難だ。ガートナーではビジネスの俊敏性向上に向けインフラの自動化に取り組む企業は、21年の20%未満から25年には70%まで急増すると予測する。
一方で、自動化に取り組む上で多くの目標を掲げるものの、そのパフォーマンスの測定/報告はできていない課題があるという(上記グラフ参照)。
では自動化への取り組みのメリットをどう考えればよいのか。ガートナー バイス プレジデント,アナリストのケビン・ジー氏によると、インフラ自動化のメリットは、いくつもの側面から確認できるという。まずは「
Infrastructure as Code(IaC)」からの切り口だ。
IaCとはクラウドという分散した環境における、文字どおりのコードとしてのインフラだ。従来、インフラはサーバやストレージ、ネットワークなどのコンポーネントを自前で用意することで整備。ただ、それらの結合性は低く、「記述したコードによりインフラとしての整合性を保っていました」(ケビン氏)。
そこでのコード記述作業をツールにより自動化し、クラウド上のコンポーネントの自動構成を実現したのがIaCだとケビン氏はかみ砕いて説明する。
「IaCによりコード記述の手間が抜本的に削減されます。加えてツールが管理プロセスも提供することで人的ミスの一掃と同時に、ツールによる構成の自動化も可能となり、ひいてはCCA(Continuous Configuration Automation:継続的な構成自動化)と、インフラ整備のセルフサービス化も実現します」(ケビン氏)
インフラ自動化で目指すべき4つの目標
また、インフラ上のアプリの側面から見ると、インフラ自動化はアプリ開発作業を強化し、アプリ自体の価値を高めるという意味も持つ。
従来型のいわば固定化したインフラでは、アプリ改修時にはアプリの機能向上だけでなく、アプリをインフラに適合させる作業も発生していた。だが、インフラの柔軟性の飛躍的な高まりを通じてインフラ側からのアプリへの適合が可能になることで、「開発チームはアプリ開発のみに集中でき、それだけ機能と品質の向上につながります」(ケビン氏)。
負荷に応じたリソースの自動配分を通じて処理速度の維持/向上も実現するとともに、インフラへの実装時の作業もAPIの開発程度と格段に簡略化される。
「コードによるインフラのバージョン管理も可能になり、管理性も格段に増します。ツールで新バージョンをリスクなく試すこともでき、インフラの俊敏性もそれだけ高められます」(ケビン氏)
インフラにまつわる情報共有を通じて、全社システムの可視性も格段に高められる。そこで発見された課題のインフラ側の修正により、ムダのない最適な全社組織へのIT配備も実現する。
経営の側面からも語ることができるという。従来型のインフラでは、管理の主体は人であり、リスクをゼロにするのは不可能だった。
「ただし、インフラ自動化によるインフラの仮想化を通じて、ツールによる事前検証によりリスクを負うことなく、インフラの側面からビジネス活動をこれまでとは異なる側面からサポートできるようになります。つまり、IT部門によるビジネスそのものの支援が可能になるわけです」(ケビン氏)。
ケビン氏は、インフラを4階層に分け、各層での自動化によるメリットであり目指すべき目標を、最下層から順に次のように整理する。
- 作業/労力/リスクの削減に向けた「効率性の向上」
- デジタルの作業量の増加を通じた「サービス品質/速度の向上」
- ボリューム当たりのコスト削減による「組織の有効性の向上」
- 新たな価値創出による「顧客価値とビジネス・パフォーマンスの向上」
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