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「DXの裏側」、かんぽ生命が直面した“オンプレ前提”の運用監視の限界

郵政民営化によって2007年に設立されたのが、かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)だ。約2万の郵便局の窓口とかんぽ生命の支店を通じて、養老保険・終身保険を中心とした簡易で小口な商品と各種サービスを提供している。同社はデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中でクラウド化を推進していたが、システムがクラウド化するにつれ、「システム監視」に大きな課題を抱えるようになったという。同社はいかにしてその課題を乗り越えたのだろうか。かんぽ生命のシステム開発・運用、IT戦略を支える、かんぽシステムソリューションズのキーパーソンが語った。

2018年から始まったクラウド化の進展に伴って直面した新たな課題

 かんぽ生命がDXに着手し、クラウド活用を本格化したのは2018年ごろからだ。かんぽシステムソリューションズ システムサービス本部 クラウドインフラ部 兼 NEXTプロジェクト統括本部 クラウドCoE室 上席専門役 一井 茂雄 氏は、次のように説明する。

「かんぽ生命では、情報システム部門とは別にDX推進する組織を新たに立ち上げて、そこが主管部門となってクラウド活用を推進することになりました。まずは、SoE(System of Engagement)と呼ばれる顧客との直接のエンゲージメントを実現するシステムからクラウド化に着手しました」(一井氏)

 具体的には、契約者が自分の契約内容を確認できる「マイページ」、コーポレートサイト、テレビ会議での顧客の相談支援や社内コミュニケーション等のサービス、アプリケーションをクラウド上で構築することからスタートしたという。

 しかし、2021年に入ってから、状況が少しずつ変わってくる。

「マイページの機能がどんどん拡充され、保険金の請求や保険内容に応じて貸付/弁済が行えるサービスの提供などが始まり、ミッションクリティカル度が高まってきました。さらに中期経営計画で全社的なDX推進がうたわれ、社内の事務システムや基幹システムなどのSoR(System of Record)の領域でもクラウド化を推進することになったのです」(一井氏)

 そこで重要になったのが、クラウドの可用性のレベルアップだ。従来であれば、マイページに障害が起きても、一時的に契約内容を確認できなくなる程度だった。しかし、保険金の請求や資金が移動するサービス、もしくは基幹システムで障害が起きたら、そのマイナスのインパクトは計り知れない。

 こうして同社は、クラウド上で稼働するシステムの安定稼働に向けた取り組みを大幅に強化することになったのである。

この記事の続き >>

  • ・オンプレ時代の常識が通用しない?クラウド化で直面した運用の難しさ
    ・クラウド内部のブラックボックス化を解決する可視化の方法とは?
    ・障害検知範囲を90%まで拡大、調査時間を50%削減できた理由
    ・目指すのはクラウドに特化した組織文化とマインド醸成

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