AWSが解説、リモートワーク特有の課題はこう解決せよ
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実施して初めてわかるリモートワークの難しさ
社員の働き方が変わることにどう対応するか。この課題対応に向けてIT部門にかけられるプレッシャーが今、かつてないほど高まっている。背景にあるのは新型コロナ対策としてのリモートワークの急速な広がりだ。経済活動のグローバル化が進む中、海外に多拠点を構える企業では、場所や時間に縛られない現地社員と協働が従来から行われてきた。その裾野が一気に拡大しつつある。
「ただし、大多数の企業にとってリモートワークはなじみが薄く、利用して初めて気づく課題も多いのです」と語るのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパンでプリンシパルソリューションアーキテクトを務める荒木靖宏氏だ。
「社員同士の物理的な距離に起因するコラボレーションの困難さもその1つ。また、自宅から社内アプリを利用する際のセキュリティ確保の厄介さも挙げられます。それらを放置しては作業の遅滞、ひいては生産性も低下は避けられません。そこで、現場と経営層の双方から早急な対応を強く求められ、かつ、その声が日増しに高まっていることが、IT部門にプレッシャーとして重くのしかかっているのです」(荒木氏)
AWSがリモートワークに“効く”理由
それらの課題解消の現実解として荒木氏が提示したのが、リモートコラボレーションやリソースへのセキュアアクセス、コンタクトセンターの整備を目的にしたAWS(Amazon Web Services)の5つのサービスだ。荒木氏によると、AWSはリモートワークに極めて有効だという。
「業務利用で極めて重要なセキュリティのための機能を、AWSは豊富に備えています。スケーラビリティにも優れ、従量課金制でセットアップは無料なため、社員へ低コストで柔軟に展開することも可能です」(荒木氏)
では、それらは具体的にどうサービスに落とし込まれているのか。荒木氏がリモートコラボレーション向けサービスとして紹介したのが、オンライン会議/チャットサービスの「Amazon Chime」と、コンテンツ作成/ストレージ/コラボレーション用サービスの「Amazon WorkDocs」だ。
前者のAmazon Chimeは、オンライン・コラボレーションに必要な機能を高い水準で網羅したサービスだ(図1)。音声、ビデオ、テキストを個別、あるいは組み合わせて利用できることはもちろん、専用アプリをインストールすることなくWebブラウザで簡単に会議を開催できる。
コミュケーションの“円滑さ”にも配慮されており、ネットワークの問題から接続が不安定な場合でも、切断時の再接続機能により、「VPN環境であってもユーザーに手間をかけさせず、また、切断を感じさせない会議を実現しています」(荒木氏)。
高い管理性も見逃せない。会議のオーナーが急に参加できなくなることはしばしばあることだが、その場合には権限委譲により別の社員に会議の開催を容易に引き継げる。通信の暗号化に加え、認証されていない社員以外の会議へのロックなどのセキュリティ機能も標準で備える。
「SIPとH.323による一般的なビデオ会議製品との相互接続性も確保しており、過去のそれらへの投資がむだになることもありません」(荒木氏)
料金は、会議に参加するだけであれば無料。会議を開催できる契約では月額で15米ドルほどだ。
使い勝手の良い、AWS流コラボレーション
後者のAmazon WorkDocsは、ドキュメントを安全に保存、共有し、共同作業を行うためのサービスだ。アクセス制御や通信暗号化、データセンターの厳格な運用ポリシーなどにより、文書の共有やグローバルからのアクセス、共同編集を安全かつ簡単に実施できる。特筆されるのは使い勝手の高さだ。Webブラウザだけで利用でき、主要なファイル形式の確認に加え編集まで行える。共有法もメニューから共有相手のメールアドレスなどを登録してアクセス権限を設定し、保管先のURLを相手に伝えるだけだ。
共同作業時にはファイルの世代管理が問題になりがちだが、Amazon WorkDocsでは同一のファイル名であっても自動的に世代管理が実施され、管理の手間も大幅に軽減される。専用アプリのインストールにより、AndroidやiOSなどのモバイル端末からも同様にファイルを扱える。
「これらの機能性が高く評価され、ファイルの共有ストレージとしての利用のほか、データ同期アプリ『WorkDocs Syncクライアント』と組み合わせてのデータバックアップ領域、さらに容量を追加することでのファイルサーバ用途など、多目的に利用が進んでいます」(荒木氏)
料金は1TBのストレージが利用でき、1ユーザーあたり月額7米ドルだ。
安全な社外からの接続を担保する3サービス
次に、セキュアアクセス向けサービスとなるのが、社員用PCでのアクセスを想定した「AWS Client VPN」と、BYOD端末でのアクセスを想定した「Amazon WorkSpaces」「Amazon AppStream 2.0」だ(図2)。このうち、AWS Client VPNは、VPN機能に必要な機能一式とともに、Client VPN接続数を自動的に拡張/縮退させるVPNサービスだ。「その利用を通じ、AWS上に配置されたClient VPNのエンドポイントを経由した社内ネットワークへの安全な接続を、最適なコストで実現します」と荒木氏は解説する。
一方、Amazon WorkSpacesとAmazon AppStream 2.0は、AWS上で稼働するPCやアプリの画面データのみを端末に転送する仮想デスクトップサービスとアプリケーションストリーミングサービスになる。なお、Amazon AppStream 2.0は、管理者は配信したいアプリを事前にAppStream2.0化する必要がある。利用者はWebブラウザだけで利用可能だ。
「双方、実データのやり取りは発生せず端末へのデータ保管も発生しないため、端末からの情報漏えいリスクを一掃できます」(荒木氏)
Amazon WorkSpacesでは、OSとしてWindowsとLinuxを選択できるほか、GPU搭載の仮想マシンも用意されるなど、用途に応じて最適なタイプを選択できるという。
外部連携でコンタクトセンターの機能を底上げ
さらに、コンタクトセンターの整備を目的としてAWSで提供しているサービスが電話やチャットなどのオムニチャネルに対応した「Amazon Connect」だ(図3)。リモートワーク環境下ではオペレーターやマネージャーが地理的に分散するため、コンタクトセンターの運用が難しくなる。対してAmazon Connectは、オペレーターへの従来と変わらぬインバウンド/アウトバンドの業務環境とともに、マネージャー向けのダッシュボード、サービスレベルや通話録音のモニタリング、パフォーマンスの追跡機能などをオールインワンかつ従量課金で提供することで、リモートワーク環境下での円滑な運用を支援する。
「仕組みがAWS上に構築されているため、業務量の変化に応じてリソースを柔軟に調整でき、運用コストを最適化できます。また、セットアップも非常に簡単です。必要とされるのはログイン後、権限設定やストレージのロケーション選択などを指示に従い行うだけ。ものの数分で作業を完了し、即座に利用に乗り出せます」(荒木氏)
外部システムとの連携も容易だ。すでにSalesforceの顧客データの活用に向けた無料のライブラリを提供しており、今後、他サービス向けライブラリも順次、追加する計画だという。
また、テキストベースでの問い合わせ対応では自然言語処理技術が重要になるが、すでにこの領域で業界をリードするNTTコミュニケーションやアドバンスト・メディアなどとパートナー契約を締結しており、ユーザーはそれらのソリューションを統合することで、対応の質のさらなる向上が可能になるという。
リモートワークへの移行で直面する課題はいくつもあるが、そのためのサービスをAWSは包括的に取りそろえる。今後、 IT担当者にとってはさらに頼れる存在になりそうだ。