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京王百貨店は2013年、オンプレミスのメールシステムからクラウドへの移行を果たした。社外に漏れては困る顧客とのやりとりを安心して行えるように、HDEのクラウドセキュリティ製品「HDE One」を採用。不正アクセスの防止、誤送信回避、証跡としてのアーカイブの保存などの対策を行なうことで、社外からも安全にメールを送受信できる環境を構築している。
グループウェアのメール機能終了を機にクラウド化へ
京王百貨店は、東京の大手私鉄である京王電鉄のグループに連なる百貨店だ。新宿店、聖蹟桜ヶ丘店のほか、近年ではららぽーと新三郷店やセレオ八王子店といったサテライト店舗も開業している。
京王百貨店では従来、オンプレミスのシステムでメールを運用していた。グループウェアの一機能として提供されていたものだ。メールの主な用途は社内の連絡と、取引先とのビジネスコミュニケーション。取引先とのメールには受託開発中の商品に関する情報も含まれており、外部への情報漏えいを避けるため、メールの送受信は社内からのアクセスに限られていた。同社の経営企画室 倉林 孝行氏は当時を振り返って次のように語った。
「メールの数や頻度が高まるにつれて、従業員からより使いやすいメール環境への要望が上がりはじめました。多かったのはメール容量やシステムのレスポンスに関する不満、外出先からもメールを送受信したいという要望でした」(倉林氏)
そうした要望について検討を始めた矢先、グループウェアのバージョンアップに伴いメール機能が終了することが決まった。これをきっかけにメールシステムのクラウド化に取り組むことになったと、京王百貨店 経営企画室の三木 敬氏は語る。
「移行先の候補として挙がったのはクラウド型コラボレーションサービスでした。クラウドを選択したのは、社内でも社外でも同じようにメールを送受信できるようになり、なおかつ運用コストや管理負荷を削減できると考えたからです。しかし、セキュリティ面に不安があったため、セキュリティソリューションと組み合わせての導入が前提でした」(三木氏)
業務にメールを使うのは、ITスキルの高い従業員ばかりではない。クラウド型コラボレーションサービスを安全に使うためにはセキュリティポリシーを充実させるだけではなく、セキュリティを「仕組み」として実装しておく必要がある。満たすべきセキュリティ要件として挙げられたのは、クラウド型コラボレーションサービスへの不正アクセスの防止、添付ファイルの自動暗号化と誤送信防止機能の実装、そして万一の際の証跡として自社にアーカイブを残せることだった。
機能要件を満たし、支援体制も万全なHDE Oneを選択
クラウド関連の展示会に足を運び、情報収集を行なった末に候補として挙げられた製品は3つ。その中から検討の末に選ばれたのが、HDE Oneだった。機能面で要件をすべて満たしていたことももちろんだが、販売するHDEからのこまめなフォローに安心感を覚えたことも大きな決め手になったと三木氏は言う。
「HDEさんは頻繁に来社して、製品の機能だけではなくクラウド型コラボレーションサービスへの移行に関するノウハウまで細かく教えてくださいました。具体的な設定や運用方法に関する不安や疑問に1つずつ真摯に答えてくださるその姿勢から、導入後も安心して使っていけるだろうと確信しました」(三木氏)
また、グループ企業である京王パスポートクラブが既にHDE Oneを利用していたのも後押しになったようだ。両社はシステム担当同士の交流もあり、選定基準や使い勝手をヒアリングして参考にしたという。
こうして選ばれたHDE Oneとクラウド型コラボレーションサービスが導入されたのは、2013年初夏のこと。各種の設定や既存システムからの移行に苦労した点もあったというが、HDEからの支援を受けながら課題を1つずつ解決していったという。京王百貨店 経営企画室の小澤 みどり氏は、導入時を振り返って次のように語る。
「選定時に期待したとおり、HDE Oneとクラウド型コラボレーションサービスの連携設定など細かく指導してもらえたので、助かりました。業務システムにクラウドを採用するのは初めての経験でしたが、スムーズに移行できたのはHDEさんの支援のおかげだと思っています」(小澤氏)
2013年6月から7月にかけて部門ごとに順次移行が進められた。全社一斉に移行せず部門ごとに移行を進めたのは、移行日に経営企画室のメンバーが立ち会えるようにするためだ。操作や設定、使い方に関する疑問にその場で答えることで、切り替え初日の混乱を避けるのが狙いだった。こうした移行支援体制が功を奏したのか、移行後の使い方に関する問い合わせは予想より少なかったという。
セキュリティを「仕組み」として組み込むことでポリシーを徹底
HDE Oneとクラウド型コラボレーションサービス導入がもたらした効果は、大きかった。特にインパクトが大きかったのは、添付ファイルの暗号化と誤送信対策としての5分間滞留だ。
「以前から、機密情報は必ず暗号化して添付するようセキュリティポリシーで定められていました。しかし運用は現場に委ねられており、実際に徹底されているかどうかまでは把握しきれていませんでした。これが仕組みとして整備されたことで、今後はセキュリティポリシーの徹底を保証できるようになります」(三木氏)
効果について三木氏はそう語った。セキュリティポリシーによりZIPファイルを受け取れない取引先もあったが、これらはドメイン単位で例外設定を行なって対応している。こうした細かい設定ができるのも、HDE Oneを導入してよかったと感じるポイントだという。
もう1つの誤送信防止機能は、導入以前にはどの程度の効果があるのか見込めなかった。どの程度の誤送信があったのか把握できていなかったためだ。しかし導入後の使用履歴を見る限り、かなり役立っているようだと小澤氏は言う。
「メールの送信ミスは、送信した直後に気づくことが多いんですよね。HDE Oneなら送信時に文面や送信先を確認する画面が表示されるので、冷静に見直すチャンスがあります。ここでミスに気付いて撤回できた例が実際にいくつもあるようです」(小澤氏)
ただし、社内でのメールのやりとりには不便とわかり、宛先が社内の場合は即時送信するよう、導入後に設定が変更されている。これらの設定変更作業は、運用に慣れるまではHDEが請け負ってくれるため、導入後に慣れないシステムと現場の声の板挟みになるなど、経営企画室のメンバーが不必要に苦しい思いをすることはない。
HDE Oneで安全性を確保してクラウド化を継続推進
それぞれのセキュリティ機能の効用を紹介してくれたうえで、しかしHDE Oneがもたらした最大の効果は、こうした個別の機能にあるのではないと倉林氏は述べる。
「HDE Oneの最も大きな効果は、クラウド型コラボレーションサービスの安全面を担保できたことだと思います。HDE Oneでセキュリティ面の懸念を払拭できなければ、クラウドを業務に使うこと自体が認められなかったでしょう」(倉林氏)
クラウド型コラボレーションサービス導入によってメールを社外からも送受信できるようになったことで、外商担当者などのワークスタイルも変わりつつある。法人外商は特にメールのやりとりが多く、素早い返信がビジネスを左右することもあるだけに、セキュリティを確保してメールをクラウド化したことのメリットは計り知れない。現在、一部の外商担当者はタブレット端末を持ち歩き、外出先からこまめにメール対応を行なっているが、こうした対応もHDE Oneがなければ実現できなかっただろう。
また今後の展開について話をうかがったところ、クラウドの活用をさらに広げていきたいという答えが返ってきた。クラウド型コラボレーションサービスではさまざまな機能が提供されているが、京王百貨店が現在利用しているのはメールのみ。その他の機能は、利活用方法の検討を進め、順次展開を図りたいと倉林氏は展望を述べる。
「今回取り組んだメールのクラウド化で、オンプレミスに比べて管理負荷が低いことが実感できましたし、HDE Oneと組み合わせることでセキュリティ面の不安も払拭できました。クラウド型コラボレーションサービスは利用しているサービスの数にかかわらず同じライセンス料金なので、できるものからクラウド型コラボレーションサービスに移行した方がコスト面でも有利になります」(倉林氏)
ITを資産として抱え込んでしまうオンプレミスでは、利用者数の増減に追従できないが、クラウドなら今後想定される従業員数の変動に対して柔軟に対応できる点も評価されている。HDE Oneもクラウド型コラボレーションサービスもユーザー数に対して課金されるため、必要なときに必要な分だけのコスト負担で済む。
「日本企業独自の風土というものもあり、グループウェア機能のすべてをクラウドに移行するのは難しいかもしれません。足りない部分はサードパーティのサービスと組み合わせながらクラウドに移行していくのが、現状でのベストプラクティスだと思います。最適な組み合わせを見つけ出して、管理負荷、コストの両方を削減していくのが今の目標です」(三木氏)
こうした目標に向けて進めるのも、クラウドを安心して利用できるセキュリティをHDE Oneで確保できたからこそのことだと、三木氏は笑顔で語ってくれた。
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