- 2025/03/12 掲載
5%賃上げ定着を確認、日銀のコアCPI目標は要検証=山田法政大教授
[東京 12日 ロイター] - 法政大学の山田久教授(日本総研客員研究員)は12日、2025年春季労使交渉(春闘)を踏まえ賃上げ率は昨年並みとなるとの見通しを示し、「5%賃上げが定着し始めたことを確認できたことは良かった」と述べた。一方で、食料価格のさらなる高騰が新たなリスクだとし、全般的な物価動向を測る上で日銀がコア消費者物価指数(CPI)を物価目標としていることに疑問を呈した。ロイターの電話インタビューで語った。
山田氏は労働政策の専門家。この日の大手企業の回答状況を踏まえ、今年も賃上げ率は昨年並みの5%台となるとの見通しを示した。24年の賃上げ率は、ベースアップと定期昇給を合わせた連合の最終集計で5.10%だった。
山田氏は、今年は「賃上げにおける第1弾のハードルは越えてきた」と指摘する。「大手企業がまず安定的に5%賃上げを行わなければ、デフレ脱却や(景気の)好循環といった政策は何も始まらない」とし、5%の賃上げが定着し始めたことに安どしたと述べた。
賃上げの流れは来年以降も続くと見込むが、中小企業における賃金引き上げは依然として課題だとみている。企業間の格差是正を促しつつも、無理な賃上げによる中小・零細企業の倒産リスクにも注意が必要だという。
ただ、今年の賃上げは、低迷する「個人消費のカンフル剤にはなりにくい」とみている。特に生鮮野菜を含む食糧価格の上昇は「消費者の節約志向を強め、賃上げの好影響の流れを止めてしまうリスク」となり得るとしている。
その上で、日銀の物価目標について、正確な物価上昇は測れないにもかかわらず生鮮食料を除いたコア指数が「採用されているのはおかしいのではないか」と指摘する。金融政策の正常化に向け、生鮮食品を含めた全般的な物価が望ましい形で上がっていくのかという課題が出てきたとし、「賃金が5%超上がっても物価上昇には届かない異常な状況が続き、実質賃金が今年中にプラス転嫁するかは微妙な情勢。(生活費を)食料以外に回す、可処分所得が減っているといった状況で、日銀はコア物価指数を金融政策のターゲットとして掲げ続けるべきなのかという議論を始める時だ」との見方を示した。
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