- 2024/07/19 掲載
アングル:ユーロ戻り歩調鮮明、ECBが利下げに慎重との観測
[ロンドン 18日 ロイター] - 18日の外国為替市場で、ユーロは力強い戻り歩調を維持した。フランスの政治情勢を巡る先行き不安に代わって、欧州中央銀行(ECB)が9月に2回目の利下げをした後は慎重な政策運営に転じるとの観測が、主な取引材料になったからだ。
市場では米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げが織り込まれた一方、ECBは不安定な物価動向に対する懸念を強調しており、これが6月にフランスの政治的混乱で動揺したユーロが足元で約4カ月ぶりの高値水準で推移し続ける要因になっている。
6月に中銀預金金利を5年ぶりに引き下げて3.75%としたECBは18日の理事会で政策変更を見送り、ラガルド総裁は政策金利の今後の経路には何もコミットしないとくぎを刺した。
対照的にFRBのパウエル議長は15日、米国の物価上昇率が本格的に減速してきたとの自信を深めていると発言した。
これが少なくとも当面のユーロ押し上げにつながり、今月に入って対ドル上昇率は2%を超えている。6月は約1%の下落だった。
18日のユーロ/ドルは1.093ドル前後で、このままなら月間上昇率は昨年11月以来の大きさになる流れだ。
ロンバー・オディエのマクロストラテジスト、ビル・パパダキス氏は「フランスの政治リスクを巡る極端なシナリオは影を潜めつつあり、市場はFRBが間もなく利下げすると確信しているので、ドルが主要通貨に対して軟化する展開をわれわれは想定し始めた」と述べた。
ただユーロは今月、スイスフランとポンドに対して下落。投資家からは、11月の米大統領選でトランプ前大統領が返り咲くとすれば、一本調子のユーロ高予想にはならないとの警告も聞かれる。トランプ氏が提唱する関税引き上げはユーロ圏経済に打撃を与え、米国ではインフレが再燃して米金利とドルの上昇をもたらす可能性があるからだ。
アムンディのマルチ資産ポートフォリオマネジャー、アメリー・デラムビュア氏は「今後ユーロ圏と米国の金利差が縮小し、ある程度のドル安になるはずだと見込んでいる。しかしトランプ氏の勝利は市場でドルの強気材料とみなされており、大統領選までドルの下げは限定的になるだろう」と話した。
<仏政治不安は後退>
短期金融市場では、年内のFRBの利下げ回数は2回以上、ECBの利下げ回数は2回弱が織り込まれている。
ドルは今年これまでずっと主要通貨に対して堅調だったが、7月になって利下げ観測が強まるとともにドル指数も2%下がってきた。
一方でユーロは6月、フランスのマクロン大統領による国民議会(下院)の解散総選挙が政治不安を招き、同国の大幅な財政赤字が注目されたことから、対ドルで2カ月ぶりの安値に沈んだが、そこから持ち直している。
足元のフランスとドイツの10年国債利回り格差は約65ベーシスポイント(bp)で、6月に記録した14年ぶり高水準の85bpから縮小したのも、不安後退を裏付ける。
フランクリン・テンプルトンの欧州債券責任者を務めるデービッド・ザーン氏は「(ECBは)9月と第4・四半期に利下げするというのがわれわれの考えだが、彼らの利下げサイクルはゆっくりしている」と指摘した。
<トランプ氏のリスク>
ECBのラガルド総裁は18日、世界的な貿易戦争が起きる恐れがあるという文脈で、ユーロ圏の経済成長について心配していると発言した。
エドモン・ドゥ・ロスチャイルド・アセット・マネジメントのベンジャミン・メルマン最高投資責任者は、トランプ氏が約束している輸入関税引き上げは、輸出重視のユーロ圏経済にとって深刻なリスクだと主張。「より政治的な影響があるため中国が矢面に立っているが、欧州も格好の標的にされてもおかしくない」と付け加えた。
メルマン氏は、来年末までにECBの中銀預金金利は2.5%以下まで下がると予想した上で、利下げ観測がプラスに働く短期国債の投資に前向きな姿勢を示した。
パシフィック・インベストメント・マネジング・カンパニー(PIMCO)のポートフォリオマネジャー、コンスタンティン・ベイト氏は、ユーロ/ドルが現行水準から大きく動くとは想定していない。「(ECBの政策担当者は)とても急いでいるわけではない」という。
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