- 2024/04/12 掲載
アングル:ECB金融政策、実際にはFRBが左右か
[フランクフルト 11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は11日、金利据え置きを決めた理事会後の記者会見で「ECBは米連邦準備理事会(FRB)に依存しているのではなく、データに依存している」と言い切り、FRBの政策の道筋と関係なく早期利下げに踏み切る可能性を示唆した。しかしECBが望むと望まざるとにかかわらず、実際のところECBの政策はFRBの動きに大きく左右されそうだ。
ECBはユーロ圏20カ国のインフレ率が引き続き鈍化していることを踏まえ、恐らく6月の次回理事会で主要政策金利を足元の過去最高水準から引き下げる方針を固めている。
一方、ECBと対照的に、米国は物価の伸びが3カ月連続で市場予想を上回り、FRBは利下げを9月まで先送りすると予想されている。
ラガルド氏は11日の会見で金融政策におけるFRBから独立を強調した。ただアナリストや政策当局者からは、米国の高いインフレ率と高金利が、金融市場や貿易を通じてECBの政策に影響を及ぼすのは間違いないとの声が上がっている。
フィデリティ・インターナショナルのシニア・グローバル・マクロ・ストラテジスト、マックス・ステイントン氏は「ECBが主要中銀として今年最初に利下げに踏み切るとの見立てに変更はないが、その先の政策パス(道筋)は引き続きFRBの動きに左右されるだろう」と述べた。
スウェーデン中銀は11日、5月の利下げという政策見通しにとって主なリスク要因はFRBとECBによる緩和サイクルの先延ばしとの認識を示し、中銀同士がいかに密接に結びついているかが浮き彫りになった。
複数の消息筋が11日のECB理事会後にロイターに語ったところによると、ECBの政策担当者は依然として6月の利下げを想定しているものの、米国のインフレを視野に入れ、次回理事会での利下げ見送りが濃厚になっているとの見方も出ている。
見送り派によると、ECBは米金融政策のパスに安心感が出るまで、夏半ばに予定している利下げを見送る可能性がある。
<為替相場の影響>
というのもユーロ圏の金利が米国より低くなればユーロ相場が下落し、原油などドル建て商品の価格が上昇するのは間違いないからだ。
既にこうした動きは起こり始めており、10日発表の3月米消費者物価指数(CPI)の上昇率が前月から加速すると、ユーロは対米ドルで1.3%下落して2月以来の安値を付けた。
ミラボー・アセット・マネジメントの債券部門責任者、アンドリュー・レイク氏は「われわれはECBがFRBより先に利下げに踏み切る公算が大きいとの見方を維持している。だがECBの利下げ回数はユーロの対ドル相場の動きによって幾らか抑制されるだろう」と述べた。
短期金融市場はECBが12月までに行う利下げの回数を数週間前まで4回とみていたが、今は3回との想定だ。
加えて、米国のインフレ率はユーロ圏のインフレ率に数カ月先行しており、その精度は驚くほど高い。
物価上昇の主因はユーロ圏では燃料費の上昇だった。これに対して米国では堅調な需要であるなど、米国とユーロ圏では物価上昇の原因が異なっていたかもしれない。しかし米国とユーロ圏は金融・貿易面で緊密に関係しており、コンテージョン(伝染)の余地は残るとの見方がある。
「ECBはFRBから独立している。しかしFRBもデータに依存しており、米国の経済指標が好調を続ければ欧州の指標にも影響を与える可能性がある」と、ジェフリーズの欧州担当チーフエコノミスト、モヒット・クマール氏は指摘する。
アナリストの間からは影響はもっと複雑になるのではないかとの指摘も聞かれる。
ユーロ圏の国債利回りは米国債利回りと連動して上昇する可能性が高いことから、金融環境が引き締まり、ECBが一段の利下げを迫られる可能性すらありそうだ。
ウニクレディトのグローバル・リサーチ・ヘッド、マルコ・ヴァッリ氏は「さまざまな要因を相殺した正味で見た場合、金融環境が緩んでECBの利下げ意欲が後退するかどうかははっきりしない」と述べた。
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