- 2024/04/04 掲載
焦点:割高感増す米株式市場、国債利回り上昇が新たな試練に
[ニューヨーク 3日 ロイター] - 割高感を増しつつ過去最高値を更新している米株式市場にとって、米国債利回りの上昇が新たな試練になりそうだ。
米国債利回りがこの数週間で急上昇しているにも関わらず、S&P500種株価指数は米連邦準備理事会(FRB)が年内に利下げに踏み切るとの期待を背景に、第1・四半期に10%上昇。米国株はバリュエーションも高まっており、LSEGデータストリームによるとS&P500種構成企業は予想利益に基づくPER(株価収益率)が21倍と、2022年1月以来最で最も割高になっている。
足元では、好調な経済指標によってFRBの年内の利下げ幅に対する期待が後退。10年物米国債利回りは2日に4.4%と4カ月強ぶりの高水準を付けた。
米国株はこれまでのところ底堅い景気、堅調な企業業績、人工知能(AI)ブームなどを支えに、年初来の利回り上昇の影響をほぼ受け流している。しかし投資家の間には、金利が上昇し続ければ高いバリュエーションによって株式は一段と下落しやすくなるのではないかとの懸念もある。利回りが上昇すれば企業や家計の資本コストが上昇するだけでなく、「リスクフリー」な国債は株式に比べて投資妙味が増す可能性がある。
ホライズン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「(利回りが)これまでの上限を超えつつあることで一時的な戸惑いが生じている」と指摘。「こうした金利の動向は気がかりだ。利回りは上昇を繰り返しており、今日もそれが続いたのだから」と話す。
米株式市場はこの数年で何度も利回り上昇に動揺させられてきた。10年物米国債利回りが16年ぶりの高水準となる5%強まで急上昇した昨年9月と10月には売りを浴び、利回りが反転下落すると株価は急反発した。22年にはFRBが高騰するインフレを阻止するために政策金利を急速に引き上げたため、S&P500種は19%も急落した。
投資家が今年に入ってからの利回り上昇に楽観的なのは、FRBが年内に利下げを行う意向を示していることが一因。しかし好調な経済指標が相次いだことで、投資家はFRBが従来の予想ほど積極的に利下げできるかどうか疑心暗鬼になっている。
2日の金利先物市場が織り込む年内の利下げ幅は70ベーシスポイント(bp)程度。これはFRBが見込む75bpよりも小幅だ。
同時にさまざまな指標から米株式のバリュエーションが魅力的でなくなりつつあることが読み取れる。
トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者(CIO)によると、S&P500種の益回り(PERの逆数)から10年物米国債の利回りを差し引いた株式リスクプレミアムは第1・四半期に2002年以来初めてマイナスに転じた。
ネッド・デイビス・リサーチの米市場チーフストラテジスト、エド・クリソルド氏は「(米国株にとって)債券は真の競争相手になっている。10年物米国債利回りが昨秋のように5%台まで急騰すれば株価は影響を受け、米国株のバリュエーションは低下せざるを得ないだろう」と述べた。
一部の投資家は株価の反落がいつ起きてもおかしくないと見ている。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのデータによると、S&P500種指数は昨年10月以来大幅な下落を一度も経験していない。しかし長期的に見れば株式市場は5%超の調整が平均で年3回起きている。
マーフィー・アンド・シルベスト・ウェルス・マネジメントのシニア・ウェルス・アドバイザー兼マーケットストラテジスト、ポール・ノルテ氏は「当社は数カ月前から3─5%の調整が起きる可能性を指摘してきた。それが目前に迫ったのかもしれない」と警鐘を鳴らす。
利回り上昇に対する株式市場の反応は、経済が引き続き根本的に堅調で、インフレが沈静化していると投資家が考えているかどうかに左右されそうだ。
フェデレーテッド・ハーミーズのマルチアセットソリューション部門責任者、ダミアン・マッキンタイア氏は「成長が予想以上に力強いため、利回りが上昇しても投資家はそれをよしとするだろう。しかし成長が鈍化し始め、インフレ率が上昇するようなら、投資家心理が圧迫され始めるだろう」と述べた。
試金石となるのは5日発表の3月米雇用統計で、内容が予想を上回れば利回り上昇が続く可能性がある。また今月末には四半期決算発表シーズンを迎え、LSEG・IBESによるとS&P500構成企業の今年の増益率は10%程度と予想されている。
ホライゾン・インベストメント・サービシズのカールソン氏は「企業が収益を確保できれば米国株は多くを乗り切ることができる。しかし収益が予想を上回り続けることができず、金利が4カ月ぶりの高水準になれば、株式市場にとって問題になるだろう」と危惧を示した。
PR
PR
PR