- 2024/03/11 掲載
米地銀NYCB、経営立て直しの道険し 商用不動産融資の負担重く
[8日 ロイター] - 経営不安の米中堅地銀ニューヨーク・コミュニティー・バンコープ(NYCB)は、商用不動産(CRE)関連債権の不良化に備える引当金積み増しが財務を圧迫し続けると見込まれており、経営立て直しの道は険しそうだ。
NYCBは8日の週に実施した105億ドルの増資が一助となって株価の急落に歯止めが掛かり、目先の懸念が和らいだ。しかし家賃が規制されている集合住宅物件へのエクスポージャーが依然として経営の先行きに暗雲を投げかけている。
NYCBの経営不安をグラフで読み解いた。
<商用不動産への集中>
NYCBはこれまで50年間に渡り集合住宅関連融資に重点を置いており、昨年12月31日時点でこうした融資が846億ドルのポートフォリオに占める割合は44%に達していた。NYCBは1月の情報開示で、集合住宅関連融資のうち8.3%近くがデフォルト(債務不履行)リスクの高い「要注意」債権だと明らかにした。
RBCキャピタル・マーケッツのアナリストチームはノートで「短期的に与信の質の基調全体が管理可能であり続けている点はある程度心強いが、NYCBが引当金の適切な水準を真剣に模索することを期待している」と書いた。
集合住宅のポートフォリオには家賃が規制の対象となっている物件が含まれている。こうした物件の家主は、借り入れ金利が高い今も家賃を自由に引き上げることができない。
NYCBによると、オフィス向け融資がポートフォリオ全体に占める比率は4%。ムーディーズによると、オフィス関連のポートフォリオの半分強がマンハッタン地区に集中している。
<貸倒引当金>
NYCBは第4・四半期の貸倒引当金が5億5200万ドルと、前年同期から4倍に跳ね上がった。しかしアナリストは、商用不動産を筆頭にローン債権がさらに不良化するリスクに備えて引当金を積み増す必要があると指摘している。
レイモンド・ジェームズのアナリスト、スティーブン・モス氏によると、NYCBは現在、商用不動産の全ローン債権に対する引当金の比率が1.4%で、同業他社の中央値2.48%に比べて低い水準にとどまっている。
JPモルガンのスティーブン・アレクソポロス氏はノートで、NYBCは増資が「まだ先に控えているローンポートフォリオ内の問題を管理し切るのに十分かどうかが鍵だ」と指摘した。
<預金の流出>
NYCBは今週、2月中に預金の7%相当、58億ドルが流出したと明らかにした。のれんの急激な減損などNYCBの最近の経営不安も預金コストの上昇や純金利マージンの悪化につながったとアナリストは見ている。
一方、NYCBは無担保預金の比率が20%近くと比較的低い。DAダビッドソンのアナリスト、ピーター・ウィンター氏は、今回の経営不安や信用格付けの引き下げを考えると7%の預金流出は想定よりも少なめだと述べた。
昨年経営破綻したシリコン・バレー銀行や他の地銀2行の場合、無担保預金の比率がもっと高かった。
<株価動向>
NYCBは1月31日にさえない決算と70%の減配を公表した後、株価が3分の2近くも下落し、3月8日もさらに5%下げた。
投資家心理の悪化でKBW地銀株指数も下げており、1月末以来の下落率は7.3%に達している。
レイモンド・ジェームズのモス氏は、NYCBは集合住宅向け融資のポートフォリオの状況について見通しがもっとはっきりするまで株価が足元近辺の水準を続けると見込んでいる。
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