- 2024/02/26 掲載
アングル:米国債、早期利下げ観測後退で売り加速 足元一段安の予想も
[ニューヨーク 26日 ロイター] - 経済が好調なことから、米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退しており、米国債売りが加速している。
投資家はここ1カ月の間に、2024年の利下げ回数予想をおよそ半減させた。好調な雇用情勢と根強いインフレを背景に、FRBは早急な金融緩和を躊躇するとみているためだ。
その結果、米国債は下げ足を速めており、利下げ・国債価格上昇を予想していた投資家にとって見通しが複雑になっている。10年物国債の利回りは4.35%に上昇、昨年11月末以来の高水準となった。
ベルエア・インベストメント・アドバイザーズのシニアポートフォリオマネジャーで債券部門の共同責任者であるクレイグ・ブラザーズ氏は「24年は、インフレ率が低下する以外あり得ないと誰も考えていた。債券にポジションを取りさえすれば、勝ったも同然だった。それが今では、そのような取引はうまくいっていない」と語った。
フェデラルファンド(FF)金利先物が23日に織り込んだ今年の利下げ幅はおよそ80ベーシスポイント(bp)で、1月上旬の約150bpから縮小。利下げ開始時期の予想は3月から6月にずれ込んだ。
10年物国債利回りは昨年12月の低水準から約50ベーシスポイントbp上昇。国債価格は昨年10月に16年ぶりの安値を記録したが、FRBが利上げを終了して24年中に利下げに転じるとの見方から、再び上昇に転じた。
直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、当局者が拙速な利下げを懸念していることが示され、政策金利がいつまで現在の5.25─5.50%にとどまるかを巡り幅広い不透明感が浮き彫りになった。FRB高官もここ数週間、利下げへの慎重姿勢を示している。
SLCマネジメントの米トータルリターン債券担当最高投資責任者(CIO)、リッチ・ファミレッティ氏は、FRBが政策緩和を躊躇していることで「金利がここからさらに大きく低下することは非常に難しい。ファストマネーはそのポジションを維持するのが困難になるだろう」とし「痛みを伴う取引は金利の上昇であり、われわれはそれを経験する可能性が高い」と指摘した。
<ボラティリティー高まる見通し>
BofA証券のストラテジストも米国債のさらなる下落を予想している。今月には、金利は「過度に制限的」ではないとの理由で、10年物利回りは今後数週間で4.5%程度に上昇する可能性があるとした。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジウェイ・レン氏は、利回りは今年4.75%まで上昇する可能性があるとみている。「われわれはデュレーションをアンダーウエートにしている。利回りはもっと上昇する可能性があり、市場のボラティリティーは高まるだろう」と述べた。
国債がさらに下落する可能性から身を守る方法を検討する動きもある。LGIMAで米債戦略を担当するアンソニー・ウッドサイド氏は、インフレ率が上昇し続けた場合のプロテクションとして、顧客に物価連動国債(TIPS)で債券ポートフォリオをヘッジすることを勧める。
それでも、米国債の下落が長引くとは考えていない人も多い。FRBは昨年末、24年に75ベーシスポイントbpの利下げを予想したが、パウエル議長は今月、この予想は依然として政策決定者の見解に沿ったものだと指摘している。
モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのブロードマーケッツ債券チームの共同責任者であるヴィシャル・カンドゥジャ氏は、利下げのタイミングよりも、予想される金利の方向性の方が重要と指摘。最近の利回りの急上昇は「サイクル半ばの調整」であり、金利はいずれ低下して債券保有が有利になるとし「道のりはでこぼこしているかもしれないが、インフレとFRBの進行方向は下向きだ」とした。
関連コンテンツ
PR
PR
PR