- 2025/04/22 掲載
情報BOX:トランプ米大統領はパウエルFRB議長を解任できるか
<トランプ氏はパウエル氏を解任できるか>
トランプ氏にその権限があるかどうかは不明だ。
FRBを設立した1913年の連邦準備法では、大統領によって任命され、上院によって承認された任期14年の理事は「正当な理由」でのみ解任できると規定されている。これは長い間、政策上の意見の相違ではなく不正行為を意味すると考えられてきた。
ただ、7人の理事のうちの1人であるFRB議長の4年の任期に関する記述からは、解任の制限に関する言及が省かれている。
<未知の領域か>
これまでにFRB議長の解任を試みた大統領はおらず、直接的な判例はない。しかし、トランプ氏による別の解任を巡る複数の裁判が現在進行中で、同氏が権限を持つかどうかの判断材料として注目されている。そのうちの1件は現在最高裁判所で係争中だ。パウエル議長解任の試みはほぼ確実に最高裁に持ち込まれることになるだろう。
<パウエル氏解任は実際に何を意味するか>
これは主にトランプ氏がパウエル氏をいかに解任するかに左右される。
パウエル氏は、これまでの歴代議長と同様、FRB議長、理事会メンバー、そしてFRBの金利決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)の議長という3つの役割を担っている。
<FRB議長職のみの解任は可能か>
トランプ氏がパウエル氏をFRB議長としてのみ解任しようとした場合、パウエル氏は理事には任期満了となる2028年1月末までとどまる可能性がある。理事のポストは26年1月まで空席にならないため、その間、トランプ氏には他の現職理事から議長を指名する選択肢しかない。
残り6人のうちウォラー理事とボウマン理事の2人はトランプ氏が1期目に任命した。ボウマン理事は最近、金融監督担当のFRB副議長に指名された。両氏ともパウエル氏と同様にFRBの独立性について重要性を訴えており、トランプ氏が望む利下げを直ちに実施するかどうかは明らかではない。
<FOMC議長からの解任は可能か>
トランプ氏はFOMC議長の人選について直接的な権限を持っていない。FOMC議長は7人の理事と5人の地区連銀総裁の計12人で構成されるFOMCが毎年選出する。地区連銀総裁はニューヨーク連銀を除いて、4地区が持ち回りで参加する。
FOMCは伝統的にFRB議長を議長に、ニューヨーク連銀総裁を副議長に選出する。しかし理論上はメンバーの誰でも選出することが可能で、パウエル氏が理事にとどまっていれば同氏を選ぶこともできる。
<理事の解任は可能か>
パウエル氏の理事解任は最も大きな影響を与えるだろう。
もしこれが法廷闘争を耐え抜いた場合、トランプ氏は理事会と議長の空席を自らの指名で埋めることになる。また、トランプ氏が望むだけ他の理事を解任し、自身の意向に沿うと考えるFRBの指導者を幅広く任命する道も開かれることになる。
<パウエル氏は異議を唱えることが可能か>
パウエル氏は解任された場合、連邦裁判所で異議を申し立てる権利を有するが、個人的な資金で賄わなければならない。弁護士で、かつてプライベートエクイティ(PE)企業の幹部でもあった同氏は、そうした資金を調達できるだけの私財を保有している。
パウエル氏は、自身の解任は法律で認められていないとの考えを繰り返し表明している。また最近では、トランプ氏による他の独立連邦機関の委員解任を巡り、現在裁判所で審理中の訴訟はFRBには適用されないという見解を示している。
<実際に解任されるか>
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、トランプ氏がパウエル氏を解任し、06年から11年までFRB理事を務めたケビン・ウォーシュ氏を後任に起用することを検討していると報じた。
同紙によると、ウォーシュ氏はこれに反対し、26年5月までの任期を全うさせるべきだとトランプ氏に助言した。
また、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長も先週、パウエル氏解任について、政権内で検討されていると述べた。
PR
PR
PR