- 2023/08/31 掲載
粘り強く緩和を続ける必要、中小企業の稼ぐ力注視=中村日銀委員
[岐阜市 31日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は31日、岐阜県金融経済懇談会であいさつし、当面は現在の金融緩和を粘り強く続ける必要があると述べた。販売価格の上昇が賃金上昇につながる前に金融引き締めに転換すれば、需要が抑制され、企業の稼ぐ力が再び低下しかねないと警戒感を示した。
中村委員は7月の決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用柔軟化について、企業の稼ぐ力が高まったことを確認した上で実施するのが望ましいとしてボードメンバーで唯一、反対票を投じた。
あいさつでは企業、とりわけ中小企業の稼ぐ力の強化の重要性を強調した。中村委員は、中小企業の経常利益について2023年度はまだ減益計画になっていると指摘。賃上げ原資の確保という点で、稼ぐ力の強化に向けた進展があるかはなお不透明で、2%物価目標の達成に「確信を持てる状況には至っていない」と話した。
中村委員は、現状の物価上昇は「まだ輸入コストプッシュインフレの色彩が強い」と話した。現状では、賃金上昇を伴う2%物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず「金融引き締めへの転換にはまだ時間が必要だ」と述べた。人々の成長期待が再び低下し、回復に多大なコストと時間を要することになるとして、金融政策の修正には「丁寧な状況把握と慎重な判断が必要だ」とも話した。
経済・物価のリスク要因のうち、海外の先進国経済について「利上げの効果が見えにくくなる中、食料品およびエネルギーを除いた物価上昇率が高止まりし、利上げ継続による経済のオーバーキルも懸念される」と警戒感を示した。
中村委員は、今年の春闘が強い結果になり、名目の賃金上昇率が伸び始めるなど「日本に定着したデフレマインドから成長マインドへ転換する千載一遇のチャンスが到来している」と指摘。成長とともに賃金も上昇する経済構造の実現の進捗を測るため、各経済主体の実感に近い名目GDP(国内総生産)の成長に注目していると述べた。
(和田崇彦)
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