- 2023/05/29 掲載
助言会社ISS、トヨタ株主提案に賛成推奨 気候変動情報開示で
株主提案を行ったのは、オランダのAPGアセット・マネジメント、デンマークの年金基金アカデミカ―ペンション、ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメントの3社で、トヨタの気候変動関連の情報開示は「投資家の期待に照らして不十分」と指摘。気候変動に関する渉外活動報告書を作るよう定款の規定追加を求めている。
提案では、トヨタの気候変動関連の渉外活動が同社グループにもたらすリスクの減少にどう寄与しているか、2050年カーボンニュートラル実現という同社目標や世界の平均気温上昇を2度未満に抑え1.5度未満を目指すというパリ協定目標と整合しているかを毎年度評価し、その評価結果をまとめた報告書を作成することを定款に入れるべきとしている。
ISSもこの提案に賛同し、トヨタの渉外活動を評価するのに情報開示が「不十分」と指摘。同社が事業展開する地域での「直接的・間接的・草の根的な渉外活動情報を開示することで株主は恩恵を受ける」とした。
同提案に対し、トヨタは10日、反対を表明済み。21年から関連活動の報告書を出しており、23年は活動に対する評価の透明性向上のため海外で実績のある第三者に評価を委託し評価の数を倍増させ情報開示をさらに充実させると説明している。開示のあり方は「適時に変化させていく必要がある」とし、会社の組織・運営の基本事項を定める定款には今回の株主提案のような「個別具体的な業務執行に関する事項は規定すべきではない」との見解を示している。
決議には3分の2以上の賛成が必要だが、株主の多くがトヨタの取引先のため株主提案が可決される可能性は低い。
<取締役の独立性にも懸念>
ISSはまた、トヨタが独立性があるとみなす社外取締役候補者4人のうち3人は、現在または過去の所属組織がトヨタの関係先として「独立性がない」と主張している。候補者は、トヨタがモビリティ・パートナーとなっている国際パラリンピック委員会の会長だったフィリップ・クレイヴァン氏、トヨタの主要借入先である三井住友銀行副会長の大島真彦氏など。
ISSの見解では、取締役候補者10人のうち独立取締役は1人だけで、東京証券取引所(東証)の基準である「取締役の3分の1以上が独立」という条件を下回る。だが、ISSは反対票を投じて社外取締役が減ると「経営陣の支配力をより高める危険性がある」として、候補者全員に賛成することを株主に推奨した。
ISSの見解に対しトヨタの広報は、候補者は「東証の独立性の基準を満たしている」と反論。三井住友銀行との関係については「取引規模に重要性はなく、一般株主と利益相反が生じる恐れはない」と指摘し、候補者全員「客観性・独立性・適切な監督を行う能力についての懸念はないと判断している」と述べた。
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