- 2023/05/26 掲載
焦点:ドル140円突破、「円安ロケット」再点火か 日本株高も支え
[東京 26日 ロイター] - 外為市場でドルが半年ぶりに140円台へ乗せた。米債務協議の進展期待や米利上げ打ち止め観測の後退がドル全面高につながっているが、最近は日銀のハト派姿勢などを受けて、昨年のように円の下落が目立つ場面も増えてきた。33年ぶりの日本株高も、海外勢によるヘッジ目的の円売りを促している。
<6月米利上げ予想が一転優勢に>
140円乗せを主導してきたのはドル高だ。ドルは対豪ドルやNZドルでも半年ぶり、ユーロや英ポンドに対しても2カ月ぶり高値を更新。相次ぐ利上げと介入で年初来上昇が続いていたスイスフランに対しても、1カ月半ぶり高値圏へ切り返す堅調ぶりを見せている。
その背景は米国の利上げ打ち止め見通しの後退だ。3月に発生した米銀破綻をきっかけとする金融システム不安が沈静化する一方、インフレは依然高水準で、最近の米連邦準備理事会(FRB)のアンケートでは、物価高で「暮らしが悪化した」と回答した家計の比率が過去最高に達した。
FRB幹部の間でも利上げ継続を容認する声が出始めており、市場では「6─7月会合で利上げの一時停止が明確に宣言される可能性は低い」(大和証券)との見方が勢いを増している。米債券市場では2年債、10年債利回りがともに2カ月ぶりの水準へ上昇した。
CMEグループのフェドウオッチによると、米金利先物市場は現在、6月会合で0.25%の利上げが行われる確率を51%織り込み、据え置きの48%を上回った。ひと月前の利上げ予想は8%、据え置きが70%だった。
ステート・ストリート銀行東京支店長の若林徳広氏は「米国のインフレが思ったほど冷え込まない。ドルは強気相場となっており、今週の終値が140円台を維持した場合、142円半ばや143円が次のターゲットになる」と話している。
<海外勢による日本株投資とヘッジの円売り>
さらに最近は円安の動きも目立ってきた。円の対ドル下落率はこの2カ月で6%超と主要通貨間で最大に達したほか、今月に入って円は、利上げ期待の根強いユーロに対して15年ぶり、対スイスフランで8年ぶり、対英ポンドで7年ぶりの安値を相次ぎ更新した。
政府が異例の円買い介入に踏み切った昨秋、円全面安の原動力とされたのは、過去最大に膨らんだ貿易赤字だった。しかし4月貿易赤字は4324億円と、21年10月以来1年半ぶりの水準へ赤字幅が縮小したほか、月間輸入額の前年比も2年ぶりに減少へ転じた。
それでも円安が加速し始めたのはなぜか。市場関係者が注目するのは、日経平均を33年ぶり高値へ押し上げた海外勢の過去最大級の日本株投資と、それに伴う為替変動リスク回避に向けた円売りだ。
財務省によると、海外勢の対内株式・ファンド投資は4月に4兆9760億円と、現行統計が始まった2005年以来最大を記録した。東証の週次データでは、買い越しは5月以降も続いている。
一方、日銀の植田和男総裁が大規模緩和の早期修正に慎重姿勢を見せていることで、当初は新体制下で政策修正を期待する声が多かった海外勢の間でも「日銀が近く本格的に動くとの予想はほとんどなくなった」(外銀幹部)。緩和長期化が現実味を帯びた円資産へ大きく投資するには、円安による減価を防ぐ為替ヘッジ、つまりまとまった円売りが必須と考える向きが増える、というわけだ。
JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長の佐々木融氏によると、為替リスクを排した形の日本株投資は、株高と円安の同時進行といった「日経平均とドル/円の相関を強める可能性」もあるという。
海外勢が保有する日本株が上昇すれば、手元の評価額が増えるため為替ヘッジを積み増す必要が生じ、円を売る動きが活発になりやすい。株が下落すればその反対のトレードが起きるが、海外勢の思惑通り、日本株高が今後さらに勢いづけば、結果的に円安もさらに進む公算が高まることになる。
(基太村真司、坂口茉莉子 編集:伊賀大記)
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