- 2023/05/22 掲載
アングル:AIは米景気後退を阻止できるか、熱い期待とリスク
<株価をけん引する5社>
今年に入ってから9%上昇したS&P総合500種をけん引しているのは、ごく一握りの超大型株だ。それらは対話型AI「チャットGPT」の人気をきっかけとしたAIブームの中心に位置する。
データトレック・リサーチの共同創設者ジェシカ・レーブ氏は、S&P総合500種の年初来リターンをもたらしてきたのは、マイクロソフトとグーグル親会社アルファベット、エヌビディア、アップル、メタ・プラットフォームズの5社で、これらの株価上昇の25─50%前後はAIを巡る熱狂に起因するとの見方を示した。
ソシエテ・ジェネラル(ソジェン)が最近、運用資産総額が年初来で約40%増えたAI関連上場投資信託(ETF)が幅広く所有する20銘柄に焦点を当てて分析した結果でも、これらの銘柄を除外すれば、S&P総合500種は年初来でマイナスに転じることが分かった。
ソジェンの米国株戦略責任者マニシュ・カブラ氏は「最も力強いリターンを獲得しているのは、AIに引っ張られた銘柄だ。恒常的なテーマとして、これが魅力的なのは間違いない」と語った。
急速なAI開発を目の当たりにしたアナリストが期待を膨らませているのは、新たな収入機会の到来や生産性改善が企業に大きな利益をもたらす可能性だ。
ゴールドマン・サックスのストラテジストチームは、生成AIが生産性を押し上げ、結果的にS&P総合500種構成企業の利益率は向こう10年間で4ポイント前後高まってもおかしくない、との試算を明らかにした。
実際、米株式市場は連邦債務上限引き上げ問題や米国債のデフォルト(債務不履行)リスク、米連邦準備理事会(FRB)の利上げに伴って景気後退(リセッション)に陥る恐れといったさまざまな逆風にさらされており、AIに対する楽観論に何とか支えられていると構図になっている。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏は「チャットGPTは米リセッションを阻止するか」という見出しのノートに「AIが世界を変えるという強固な考えを持っている」と記した。
確かにAIを巡る熱狂によって、幾つかの銘柄は大きく値上がりしている。例えば、米国株で時価総額第2位のマイクロソフトの年初来上昇率は32%。同社はチャットGPTの生みの親であるオープンAIへの出資や、自社の検索エンジンBingとAIを融合させた取り組みで話題をさらってきた。
時価総額第5位のエヌビディアも、同社の半導体がAIブームで中核的な存在となっているだけに、株価は年初来で110%も跳ね上がった。
<バブルに弱かった歴史>
ただ、同時に世の中を一変させる可能性を秘めた技術を有する企業の株でさえ、バブルには脆弱なことを歴史が証明している。1990年代後半には、ドット・コム銘柄への投資熱が株価を押し上げたが、数年後には暴落が訪れ、残ったインターネット関連企業はごくわずかにとどまった。
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチが19日公表したリポートによると、AI関連株は、過去数十年間で見られたようなインターネット関連株やビットコインなどの大きな価格変動と比べても、「ミニバブル」の様相を呈しているという。
それでも多くの投資家は、AIは単なる一過性の流行ではないと言い切る。
ベーカー・アベニュー・ウエルス・マネジメントのチーフストラテジスト、キング・リップ氏は、AIの開発と発展を「ゲームチェンジャー」と呼び、同社はマイクロソフトやエヌビディア、アルファベットに投資している。
同氏は「生成AIがこれらの企業の利益をどのように伸ばしていくかに関する道筋は、かなり明確だ」と強調した。
(Lewis Krauskopf記者)
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR