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- 2022/04/05 掲載
AWSが「とどめを刺した」メインフレームの終焉、市場を巡る富士通、IBM、NECの思惑
メインフレームの余命に「とどめを刺した」AWSの発表
メインフレームの2018年に経産省が示したDXレポート「ITシステム2025年の崖の克服とDXの本格的な展開」の中で既に問題視されていた。コンピュータ黎明期から築き上げられてきた「レガシーシステム」は、日本がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実施する上で障壁となっているとの指摘である。では、DXの障壁となり得るレガシーシステムとは、具体的にどのような業界のどのようなシステムなのか。それらの業界は、今後どのような施策を取ろうとしているのか。
富士通のメインフレーム事業からの撤退が明らかになったおよそ3カ月前、関連する動きがあった。それが2021年11月30日のアマゾン ウェブ サービス(AWS)の発表である。メインフレームとレガシーワークロードをより迅速にクラウドに移行できるという新サービス「AWS Mainframe Modernization」を発表したのである。
メインフレーム上で動いているCOBOLなどのアプリケーションワークロードを、AWSのサービスを使ってマイグレーション(移植)するための専用サービスと、それをAmazon EC2で動作させるためのランタイムがセットになっている。
クラウドシフトを強力に推進するAWSが、レガシーシステムから脱却できずにいるメインフレームユーザーを明確なターゲットとしたことは明らか。AWSの新サービスの登場は、国内外のメインフレームメーカーのビジネスに大きな影響を及ぼすと考えられる。
クラウドでは代替できないメインフレームの機能は数多く存在すると言われているが、同時にそれがDX実行のボトルネックになっている面がある。
そのメインフレームが担っていた機能をAWSのサービスによってモダナイズ(現代化)することが可能になるというのが先のAWSの発表と同社の主張だ。
メインフレームの領域に、クラウドならではのスピード、セキュリティ、回復力、弾力性、コスト効率などのメリットを導入できるという。
市場関係者は、「聖域」とも呼ばれるメインフレームからの移行というターゲットを絞り切ったサービスに、AWSが本気で挑んでくるとは想像していなかったと考えられる。
金融やインフラ系などのミッションクリティカルな領域では今も十分に「現役バリバリ」であるメインフレームだが、ついに「聖域なきモダナイゼーション」の波が押し寄せようとしている。
国産メインフレームの動き
今後を展望するために、日本でのメインフレームの動きをおさらいしておく。富士通は、1980年代、IBMに対抗するために互換機を作るなど、メインフレーム市場では今なお国内最大手のメーカーである。
また、東京証券取引所の株式売買システム「arrowhead」や世界最速のスーパーコンピュータ「京」(2010年)、「富岳」(2020年)など、オープン化、ダウンサイジング化を経た今でも、国内のコンピュータメーカーとして常に話題の中心になってきた。
その富士通も世界シェアでは4.7%。IBMは93.4%と、20分の1にまで追い込まれている(ガートナーの2020年メインフレームの世界売上高シェア調査)。
そして、メインフレームのユーザーの多くは、国内トップのそうそうたる企業が並ぶ。
しかし、複雑化、ブラックボックス化したレガシーシステムを今すぐにDX化できない状態にあるのも事実である。富士通の撤退が10年後に設定されているのも、そのための猶予期間と言えるだろう。
もともと長期的にメインフレームの存在感が薄れていくことは予想されており、従来から富士通はクラウドサービスへかじを取ろうとしていた。同社が持っていたクラウド関係のサービスを「FUJITSU Hybrid IT Service」というサービスに集約、コンサルティングから移行・運用など一連のソリューション事業を展開している。
一方、国内のメインフレーム事業を行うメーカーとして残ることになるNECは自社のウェブサイトで「ACOSシリーズ継続宣言」をしている。2032年ごろまでのメインフレーム製品ロードマップを公表し、メインフレーム開発を継続する構えだ。
共通点は、メインフレームユーザーが持つソフトウエア資産の延命である。クラウドシフトすることが決して簡単ではないことを示しているとも言えそうだ。
【次ページ】IBMの対抗策
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