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  • 2021/04/12 掲載

分散型エネルギー源(DER)とは?調査結果にみる再生可能エネルギー市場の4大トレンド

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2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目標に掲げ、災害時の電力供給網の強靱(きょうじん)さも求められる日本では、再生可能エネルギーを含む分散型エネルギー源(DER)の重要性が増してきています。DER市場を調査した米国の市場調査会社Lucintel社のレポート「分散型発電市場:動向・予測・競合分析」では、DER市場の今後を形作ると予測される4つのトレンド、世界と日本の市場動向、分析を示しています。この記事ではそのレポートの中からその要点とともにLucintel社が考察したDER市場の今後を占う4つのトレンドと日本市場のシナリオを紹介します。
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脱炭素社会に向けて欠かせない「分散型エネルギー源(DER)」とはいったい何なのか?
(Photo/Getty Images)

分散型エネルギー源(DER)とは何か?なぜ注目されているのか

 分散型エネルギー源(DER)とは、発電所からの電力供給に集中させる代わりに、電気が使用される場所(住宅あるいは商業ビルなど)の近くで発電し、供給する小規模発電源です。これは、消費者に低コスト、サービスの信頼性、エネルギー効率の向上およびエネルギー自給の可能性を提供するものです。

 度重なる電力不足、計画停電(輪番停電)、電力品質の問題および電気料金の高騰を経験し、多くの消費者は、高品質で信頼性のある他の電力供給源を求めるようになりました。DERの登場は、発電方法や電力網への送電方法を変化させています。

 まさに、私たちは世界的にグリーン(環境にやさしい)電力発電がこれまで以上に急速に変化する時代にいます。これは、太陽光発電、風力発電ユニット、蓄電池および熱電併給(コージェネレーション)をはじめとする技術によって可能となるDERの成長、拡大、そして急増を世界中で経験している時代なのです。

 中でも、鍵となるパラダイムシフトは、仮想発電所、技術の発展、集中型から分散型発電へのシフト、環境にやさしい再生可能エネルギーに向けた政府の規制および政策です。

 気候変動や炭素排出量削減に関する懸念は、政府の政策決議に影響を及ぼし、ほとんどの国で、DERにとって有利となるように規制された市場が形成されています。

 2011年3月の東日本大震災以降、日本では需要側の消費電力要求が増大し、政府は、エネルギー効率、安定供給できる再生可能エネルギーの開発、そして電気料金の低減と炭素排出量削減によって低炭素社会を促進してきました。

 日本は、高コストのエネルギー輸入に頼っているため、再生可能エネルギー源である現場でのDERを奨励しており、商業ビルでは、次第にオンサイトでのDERが重要になってきています。2012年7月、日本政府は、再生可能エネルギーの採用を加速するために固定価格買取制度(FIT)政策を打ち出しました。

 DERの主要な成長の推進力は、再生可能エネルギー源としてのDER展開の増加、脱炭素化と温室効果ガス(GHG)排出量の削減および電力供給システムの強靭性(レジリエンス)です。

 世界のDER市場のキープレイヤーであるGeneral Electric、Siemens、Vestas Wind Systems、Capstone Turbine Corporation、Schneider Electricは、最も影響力のあるマーケティング手法で販売促進をさまざまな戦略を取っています。

 この市場での将来的な課題および機会に関する洞察から、Lucintelは、企業は特定の主要ターゲット市場のトレンドを追求することで、低価格戦略および技術革新戦略の双方で利益を得ることができると考えています。

分散型エネルギー源(DER)市場に影響するトレンド

 Lucintelは、世界的な分散型エネルギー源(DER)市場に影響する4つのトレンドを特定しています。ほとんどの業界関係者や専門家が、この4つのトレンドが近い将来、DER産業の発展を加速させると予測しています。

 しかし、すでに利用可能となっているDERについての知識は広く行き渡っているにも関わらず、業界が積極的に発展に向けて取り組む、統一された方向性がいまだ欠如しています。

 このギャップを明らかにするために、Lucintelはこの変化の方向性に対する懸念、そして変化がどのようにDER市場に大きく影響することになるのかを調査しました。ここではその洞察の一部を紹介します。

●トレンド1:分散型エネルギー源(DER)の技術開発
 分散型エネルギー源(DER)は、特に太陽光および風力発電による再生可能エネルギーの使用増を目指した政策と併せて、急速な技術発展を要因として、頭角を現してきました。 この市場でさらに潜在成長力のある技術の一部は、太陽光発電、風力発電、エネルギー貯蔵システム(ESS)、熱電併給システム(コージェネレーション:CHP)です。

太陽光発電
 太陽光発電は、最も早く成長している再生可能エネルギーをベースとした発電技術の一つです。太陽光発電は、発電の際のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を削減するために、世界中で設置が顕著に増えてきました。

 ソーラーパネルの安定供給と財政的な到達性は、地方の電化を可能にする家庭用ソーラーパネルの設置を促進してきました。太陽光発電の設置の増加は、DERの需要を促進します。

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全世界の太陽光発電設置累計(単位GW)
(出典:Lucintel)


風力
 風力発電は、広く受け入れられている再生可能エネルギーの中で、太陽光発電に次ぐ重要なエネルギー源です。風力発電の成長にとって、クリーンで安定供給が可能で、手ごろな電力への需要と有利な政策が最も重要な要素です。

 日本は、海岸線が多く、洋上風力の大きな潜在性があります。技術力があるにもかかわらず、国内の洋上風力発電の設置は、他の多くの先進国より遅れたままです。

 日本の累積風力発電の設置は、2014年は3ギガワット(GW)で、2020年に4GWに増加し、2025年までに、8GWに成長するとLucintelは予測しています。

 しかし、これは、世界の累積風力発電の設置と比較すると、まだ低い伸び率です。日本政府は、洋上風力の規制緩和を含めた規則の見直しなどの法整備を行い、国内外の市場で洋上風力発電の促進を民間セクターと協力して図ることを表明しています。

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全世界の洋上発電設置累計(単位GW)
(出典:Lucintel)

エネルギー貯蔵システム(ESS)
 エネルギー貯蔵施設は、未使用エネルギーを獲得し、それを何らかの形でいったん保存します。電力消費ピーク時あるいは再生可能エネルギーの発電が皆無の間に、それを電力に戻して、電力として供給することができます。

 エネルギーを保存する形としては、揚水発電、圧縮空気、フライホイール、バッテリーおよびスーパーキャパシタが挙げられます。ESSを牽引する主要な2つの部門は、電力システムと輸送です。

熱電併給システム(コージェネレーション:CHP)
 熱電併給システム(CHP)は、発電と熱供給を同時に行うDER技術です。CHPプラントは、住宅、産業、自治体および商業用暖房向けの従来型発電ユニットから出る廃熱エネルギーを回収するように設計されています。廃熱を作り出すDER技術は、高い燃料利用効率とより良い財政的な観点から、CHP技術における活用が可能です。電力および熱エネルギーを同時に必要とするオフィスや施設に設置する傾向があります。

●トレンド2:増加する仮想発電所(VPP)の実装
 再生可能エネルギーの発電量が天候に大きく左右されるため、エネルギー供給は、消費の増加に従って不安定になるため、エネルギーサービスの新しいコンセプトは、電力供給の安定を維持するソリューションになると予想されます。

 仮想発電所(VPP)は、分散型発電源あるいは蓄電池などの散在するエネルギー源を、まるで一つの発電所であるかのように、IoT機器や機能を用いて制御することができます。


 VPPは、電力調整としての24時間年中無休の集中型火力発電所にとって代わり、同等の必要不可欠なサービスを提供します。VPPは、再生可能エネルギーの導入と拡大の促進、そして脱炭素社会に貢献すると期待されています。

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VPPの構成要素
(出典:Lucintel)

【次ページ】図解:日本市場のシナリオ、再生可能エネルギーは50%に
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