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DX(デジタルトランスフォーメーション)の先進事例としてよく取り上げられる企業と言えば、アマゾンやネットフリックス、ウーバーなど名だたる海外企業だ。だが、多くの日本企業にとってそれらは、遠い世界の話のように思える。国内企業が現実的にDXを推進するにはどうしたらいいのか。その疑問に、
『いちばんやさしいRPAの教本』『いちばんやさしいDXの教本』著者であり、自社でDXの旗振り役も担ったディップ 進藤圭氏が答えた。
「あなたにもできる」DXの勘所とは
「RPA、うちにもできますか?」、「DX、うちにもできますか?」
ディップ 執行役員 次世代事業準備室/dip AI.Lab室長の進藤圭氏の元には、多くの企業からこんな質問が寄せられているという。
「たしかに不安になりますよね。取り上げられるのはGAFAなど海外の事例ばかりですから。日本の会社は何をやっているのか、自分たちはどうすればいいのか。その気持ちはとてもよくわかります」と進藤氏は語る。
実際、DXと言われても、どこか遠い世界の話のようにしか聞こえない企業は少なくないのではないだろうか。目的はビジネスモデル変革にあると説かれても、ほとんどの企業はようやくRPAに取り組みはじめたばかりというレベルにあり、現実とのギャップは非常に大きい。
それでも進藤氏は自信をもって答える。「あなたにもできます」、と。
そして、これだけ覚えておけば良い勘所として強調するのが、「いきなりDXを目指さない」「RPAからなし崩しにデジタル化しよう」「ITで会社の強みを伸ばすのがDX」の3点だ。
DXにはきちんと踏むべきステップがある
進藤氏が示すDXの勘所について、順を追って説明しよう。
まずは「いきなりDXを目指さない」ということだが、進藤氏は「素人が何もせずにオリンピックに行こうと考えるでしょうか」と問いかける。言われてみればそのとおりで、DXもまったく同じことなのだ。
何事においてもステップを踏むことが必要である。そして新しいことを始める際には、何かを変えるのではなく、先に成果から作ることが重要だ。これを基本原則として、進藤氏は次のような3つのポイントを示す。
1つ目は「RPAから始めよう」。ここで留意すべきが、RPAの対象として業務フロー全体を狙わないことだ。進藤氏が所属するディップのビジネスを例にとると、人材サービスを主事業とする同社は、数十万社の顧客に対して1,000人を超える社員が営業活動を行っており、営業リストや日報の作成、予算管理、広告掲載依頼、原稿作成、サイト掲載、レポート提出、請求書発行など、日々膨大な業務が発生している。これらの業務をすべて自動化しようと考えること自体が、そもそも無理な話である。
そこでディップでは、3~5分以内で終わる簡単な業務からRPA化を開始した。
「これなら予算も少額で済みますし、仕事の流れも変えずに済みます。それでいながらロボットが動き出した瞬間に、自分の作業が楽になるというメリットを社員は享受することができます」(進藤氏)
2つ目は「誰でもできる業務整理から」。RPAやDXといった言葉をあえて使わず、自分たちがやるのは“業務改善”だということを周知し、現場で進めていくのである。
実際に業務改善の方法はRPAだけではなく、AIを使って自動化したほうが得策なものもある。また、自動化できない業務についてはアウトソースすることや、やめてしまうことも考える必要もある。要するに、そうした業務の仕分けを現場主導で進めていくわけだ。
3つ目が「脱ハンコ、脱紙、OA化でデジタル化を広げよう」。いまさら……と感じられる方がいるかもしれないが、多くの日本企業の現在位置がまだここにあるのが現実だ。
「DXに向かうためには前段階として、アナログデータをデジタル化する『デジタイゼーション』、ビジネスプロセスをデジタル化する『デジタライゼーション』のステップを踏まなければなりません。つまりOA(Office Automation)化しないことにはデジタルに行けません」(進藤氏)
そこで話を戻すと、大量のカロリーを消費するDXから始めるのではなく、RPAから小さな一歩を踏み出すことが重要となるわけだ。
【次ページ】「これだけ覚えておけば良い勘所」の残り2つ
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