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  • 2020/06/09 掲載

なぜITエンジニアは「カタカナ専門用語」で“マウントを取ってはいけない”のか

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IT業界は変化が早く、トレンドも海外から流入することが多いため、勉強熱心なITエンジニアほど、つい「カタカナ」や「英語の略語」などを使いがちではないでしょうか。エンジニアを含めた2万5,000名の人材育成に関わってきたコンサルタントの片桐あい氏は、特に顧客相手に「カタカナ」を使ってしまうのは問題があると指摘します。いったい何が問題なのか、片桐氏に解説してもらいました。
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カタカナや横文字による専門用語はなるべく使わないほうがいい
(Photo/Getty Images)

エンジニアの欲求を満たす話し方になってはいけない!

 エンジニアはこれまでのキャリアの中で、ご自身の技術レベルを高めるために資格取得のための勉強をし、本を読み、プログラムを書き、障害解析をしてきたことでしょう。楽しいときばかりではなかったと思いますが、せっかくそうして自分のものにしてきた技術力も製品やサービスに反映されなければ意味がありません。

 上司や関連部署・顧客から、その技術力を認められて今の仕事をしているのであれば、そこからさらに頭一つ抜け出すためには、自分の伝えたいことを伝えるよりも、相手が知りたいことや困っていることに焦点を当てて伝えることが大切です。技術的に深い知識があればあるほど、良かれと思って技術的に詳しい内容や、最新の情報を伝えたくなります。

 しかし、それが「自分がどれだけその件について詳しい人なのか、数多くの経験をしてきた人なのか、ということをわかってほしい」という承認欲求からきているということはないでしょうか?


 エンジニアの頭の中では、あんなこともできる、こんなこともできると思って、浮かんでいるソリューションを全部話したり、お客さまと会話をする前にどれだけ調べてきたかを全部話したりすると、顧客は消化不良を起こします。顧客の最大関心事は、「自分たちのビジネスがいかに安定的に発展するのか、そのために、ITがどれだけ効率的に安全に稼働し、働いている人々や自分たちのお客さまが楽に便利になるのか」なのです。

 もちろん技術的に納得しないと、YESとは言わないお客さまもいますが、そのような技術レベルが高いお客さまには、合わせて話をすればいいのです。そして、技術的に詳しくない方には、なるべくわかりやすく、相手から見た問題点を明確にしつつ、それに対してどうしたらいいかをプロとしてアドバイスできればそれでいいのです。相手が社内の他部署の人であっても同じです。

 大きな障害が起きると、障害対策会議が招集される場合があります。その際、顧客は今の障害がいつ復旧するのか、トラブルが長引いたときに業務にどんな影響があるのかを知りたいのです。どんな調査をし、どんな技術を使って問題を解決したのかという情報は、最低限でいいのです。もちろん技術的に詳しい人はそこを求める人もいますが、そこはお客さまのご要望に合わせられるといいでしょう。

 つい自分の仕事アピールになってしまいがちですが、“マウントを取る”ようなことをして、自己満足で大切なお客さまの時間を奪って不快な思いをさせてしまうことは避けたいものです。

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技術に詳しい人ほど専門用語でマウントを取ってしまいがちだ
(Photo/Getty Images)

常に「顧客目線」を意識し、言葉を選ぶ

 お客さまをイライラさせるもう一つの原因は、エンジニアが「専門用語を並べ立ててする説明」です。たしかに外資系メーカーが使う用語やコンピューター用語は、カタカナや英語の言葉の頭文字を取ったような表現が多いです。社内ではそのような言葉が飛び交っているので、日常的にそのような言葉を使っているエンジニアも少なくありません。

 社内で共通言語として使っているのはいいのですが、お客さまはIT業界の人であるとは限りません。また、データセンターの管理や社内システムの担当であるとも限らないため、専門用語を使う場合には、神経を使わなければなりません。

 拙書のタイトルである、『一流のエンジニアは、「カタカナ」を使わない!』も、エンジニアがまったくカタカナを使わないわけではなく、相手や場合によっては、よりわかりやすい言葉を使用してほしいという意味です。

 本当に相手にわかってほしいと思えば、相手のレベル感に合わせて話の内容を調整したり、専門用語は使わないようにする工夫があってしかるべきです。つい専門用語を使ってしまった場合、相手がわからなそうな顔をしていれば、言い直したり、補足説明をするような余裕が必要です。

 人によっては、相手を威圧するためにあえて難しい言葉を使うようなエンジニアもいますが、相手にはフラストレーションがたまります。バカにされているような気がすると感じるお客さまもいらっしゃるため、特に込み入った状況のときには、なるべくシンプルでわかりやすい言葉を使うことをお勧めします。

 もちろん、うまく日本語に訳す言葉が見つからない場合もあると思いますが、そんな場合には、「ご存じの通り○○という意味ですが」「このような意図で○○という言葉を使いました」などと補足をすればいいでしょう。2度目に使用するときには、補足なしでもご理解いただけるはずです。

 また、聞き取りが難しいような言葉の羅列が続く説明の場合には、事前に資料を準備し、補足は(  )を使い日本語で表記するなど、相手目線での配慮は必要です。このひと手間をかけることで、相手に恥をかかせずに済むので面倒でも実践してほしいと思います。

【次ページ】説明をしながら「顧客を育てる」意識を持つ
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