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  • 2020/03/05 掲載

監査業務のデジタル化への取り組み、丸2日のExcel業務を半日にした以上の成果とは?

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今、多くの企業がデジタル化の波に直面し、ビジネスをどのように変革し、どのようなデータおよびデジタルツールを活用するかについて模索しているのではないだろうか。筆者が所属するPwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)はデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みとしてAIやデジタルツールの活用を前提とした業務変革、人材育成およびカルチャー醸成を行っている。ここではその取り組みの概要、同プロジェクトを進めるDX推進部門の現場メンバーからみた取り組みの成果および若手から挙がった生の声を紹介したい。
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監査業務にもデジタル化の波が到来している
(Photo/Getty Images)

PwCあらたが行う監査業務変革のためのDX推進

 テクノロジーの進化により、監査の概念も根底から変わろうとしている。監査制度始まって以来の変化に対応すべく、筆者の所属するPwCあらたは、監査業務のDXに取り組んでいる。

 まず、会計プロフェッショナルが高度な判断を要する業務や被監査会社とのコミュニケーションに集中できるようにするため、会計プロフェッショナルが実施する業務内容を見直すこととした。

 法人内のさまざまな取り組みと連携し、監査チームごとに非効率な業務の削減と標準化できる業務の洗い出しを行った。標準化が可能な業務は、AI・デジタルツール、または会計士以外のメンバーで構成されるテクニカル・コンピテンシー・センターに集約する。

 従来、会計プロフェッショナルは、データの加工から分析結果を基にしたコミュニケーションまで一貫して実施していた。しかし、分析自体ではなく、被監査会社と分析結果に関してコミュニケーションする時間をより多く確保するため、大量のデータ分析をテクノロジーのスキルを保有するテクニカルスペシャリストに移管する。

 さらにPwCあらたでは2019年6月から、すべてのパートナーおよび職員約3,000人に対してデジタル研修を実施した。実際の監査業務を想定したデータ分析ツールやデータ可視化ツールを操作するだけではなく、業務の標準化やRPAによる自動化も取り扱い、研修を通じてデジタル時代に向けた現場の意識改革を促した。

 デジタル研修で学んだことを実際の業務に落とし込む仕組みとして、監査実務を担当するすべての部門から選抜された130人のデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーが連携し、ツールを現場に最適化して導入を推進するデジタル・トランスフォーメーション・チームとして立ち上がった。

 実際の業務におけるツールの活用事例として、売上および粗利分析がある。デジタル研修で学んだツールを使い、実際に被監査会社から提供されたデータの加工および可視化を行う。

 売上高と粗利率の関係性を前期と当期で比較し、異常な変化が生じていないかを視覚的に把握する。データ分析ツールを使い短時間でデータを加工するとともに、データ可視化ツールで直感的に異常性を把握することができるようになることで、より効果的かつ効率的な監査を実施できるようになった。

 実際の業務で作成したツールやその活用事例は、部門ごとに開催される勉強会で紹介されている。また、イントラネットを通じて法人全体で共有され、各監査現場で活用されている。まさに監査業務のDXは現場から広がっている印象だ。

 以上のような取り組みを通じて監査現場にどのような変化が生じてきているのか。監査現場の若手職員と監査業務のDXをリードする監査業務変革部のメンバーが対談を行った。

Excelで2日かかっていた作業が半日になる一方、教育面の課題も

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2019年11月に開催したDXに関する記者説明会において、デジタルツールを活用した「売上および粗利分析」のデモを実施する鈴木志於氏(左)と高橋侑也氏(右)

──今年度から全職員の必須研修としてデジタル研修を実施しました。受講してみてどんな感想を持ちましたか?また、チームの状況に変化はあったのでしょうか?

鈴木氏:若手時代に受けられたのはとても良かったと思います。入社1年目はデータ加工や資料整理などの雑務に時間を取られることも多かったのですが、デジタルツールの導入により作業も効率的に行えるようになりました。

 たとえば、従来はExcelで2日間かかっていた作業が、今ではツールの構築時間も含めて半日程度で終わるようになるなど、劇的な変化がありました。

 また、オーディットアシスタント(会計士の補助を行う監査アシスタント)やテクニカルスペシャリスト(AIやデジタルツールの開発や導入、監査現場でのツール実装を担当する技術者)など、会計士以外の人とチームを組んで、それぞれの得意分野を活かしながら業務を行っていこうという意識も高まりました。

 一方で、現在1年目の後輩たちは私たちが1年目に経験した雑務をほとんど経験しないため、育成については手探りという状況です。

高橋氏:法人全体としてツールを使ったり、会計士以外の人に仕事を依頼することが一般的になったので、会計士としては専門的な判断を必要とする業務により集中できるようになったと感じます。若手のうちからそういった判断業務に携わる機会が増えたので、仕事の難易度としては上がったように思います。

 私の印象としては、大きなチームのほうが比較的対応が早い気がしています。色々な人材を集めやすいというのもありますし、関与時間も長く取れるので、必然的にDXに割ける時間も多くなります。小さいチームだとやはりそこに割けるリソースが少なくて後回しになりがちです。

──なるほど。デジタルツールの活用を加速していくにはどうしたらいいと思いますか。

【次ページ】現場からイノベーションが湧き上がることの重要性
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