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企業のITシステムは今後、複数のクラウドを必要に応じて連携させて利用する形になるのではないか、との見方から「マルチクラウド」への注目が高まっている。その実態はどうなのか。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がユーザー企業のIT部門に対して行った意識調査からマルチクラウドへの期待や課題を探った。
CTCがマルチクラウドをテーマにユーザー企業調査を実施
とある大手の損害保険会社が先頃、最新技術を採り入れたサービスを発表した際、筆者はそれを支えるITシステムの形態に注目した。
Amazon Web Services(AWS)を中心にクラウドを全面採用した形だが、金融分野のAPI(アプリケーションインターフェース)連携ではすでに多くの実績を上げているIBMのサービスが採用され、AWSとIBMによる「マルチクラウド」形態が適用されたのだ。
現状では大手が中心だが、こうした複数のクラウドを必要に応じて連携させるマルチクラウド利用が、金融だけでなく幅広い分野に普及しつつあるようだ。
そんな折、大手のシステムインテグレータ(以下、SIer)であるCTCが先頃、ガートナー ジャパンが開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」のセッションにおいて、「マルチクラウドに関するユーザー企業のIT部門への意識調査結果と最新トレンド」について解説した。本稿ではその内容をもとに、企業におけるマルチクラウドへの期待や課題を探ってみたい。
まず、CTCについて少し紹介しておこう。同社は250社を超えるマルチベンダーパートナーシップにより、顧客企業に最適な組み合わせでサービスを提供している。クラウドについては、国内5カ所7拠点のデータセンターで提供する同社独自のクラウドサービスを始めとした多彩なサービスを展開している。
同社が取り扱っているクラウドは、図1の通り。2008年から左側のオリジナルクラウドを手掛け、2012年からは右側のメジャーパブリッククラウドも取り扱っている。今回のマルチクラウドに関する調査も、このように複数のクラウドを取り扱っているからこその臨場感があるというのが、筆者の印象である。
また、ここで言うマルチクラウドはITインフラに注目している。CTCはITインフラについて2つに分類する。
1つは「守りのIT」。従来の基幹システムで安定性や堅牢性が最も求められる。
もう1つは「攻めのIT」。こちらは最新のデジタル技術を駆使してさまざまなビッグデータ分析などを行う領域。スピードと柔軟性が最も求められる。
2種類のITインフラがあることを踏まえたうえで、その潮流は図2のように3つのフェーズがある。「オンプレミス中心」から「ハイブリッドクラウド」、そして「マルチクラウド」といった流れだ。ちなみに、攻めのIT領域が使用するITインフラは、クラウドのみになることを示している。
マルチクラウドを利用する企業の割合が半数上に
では、本題であるユーザー企業 IT部門への意識調査の結果を見てみよう。その内容について説明したCTCクラウド・セキュリティ営業部 部長の本田義隆氏によると、調査結果は2019年6月24日から27日にかけて、上場企業のIT部門の役職者255人から得た回答を集計したものだ。
まず、「クラウド基盤への取り組み状況」については、図3に示すように、「マルチクラウド利用中」が47%とほぼ半分を占め、ハイブリッドクラウドによる「組み合わせ利用中」の25%を合わせると、7割がクラウドを利用している結果となった。
ちなみにこの結果には、パブリッククラウドとしてインフラ(IaaS/PaaS)だけでなく、クラウドアプリケーション(SaaS)も含まれている。
たとえば、クラウドベースのメールやチャットも含まれることから、意外に高い割合となっているようだ。ただ、意外に感じたのは筆者の印象であり、クラウドおよびマルチクラウドはすでに実態として、この結果が示すように広がっていると言えそうだ。
【次ページ】マルチクラウド環境へ移行する際の課題とは
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