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労働人口の減少などを背景に、採用難の時代が続いています。こうした中、注目を高めているのが採用広報です。自社に合った優秀な人材を集め、入社するだけでなく入社後に活躍してもらうために採用広報を行う企業が増えています。今回は、その必要性が高まる背景の解説と、パナソニック、LINE、ニトリの事例から採用広報を成功に導くヒントを探ります。
「採用広報」とは何か
採用活動は、「入社」がゴールではなくその後の「定着」「活躍」までを見据えた活動です。その実現に向け、今「採用広報」が欠かせなくなってきています。
「採用広報」とは、企業が求める人材に自社を就職先・転職先として検討してもらうための広報活動です。
リアルな場での説明会やパンフレット配布など、昔ながらの方法に加え、現在ではオンライン説明会が行われるなどWeb上での情報発信が主流です。今、多くの企業が、コーポレートや製品、サービスに関する情報発信を行う「企業広報」を行っていますが、なかでも特に(潜在)求職者をターゲットとした広報活動が「採用広報」と言えます。
ただし、企業広報と採用広報の境目を完全に分けることはできません。企業活動に関するポジティブな情報もネガティブな情報もすべてが(潜在)求職者に届き影響を与え、その逆もまた然りです。これまで企業が「採用広報」として発信してき情報は、「募集職種の説明」や「説明会日程」など、採用にまつわる事務的な情報が主でした。
しかし、その状況が今、変化しています。生活者を取り巻く環境が変わることで、今では「この会社で働く理由」を求職者に持たせるための情報発信が必要となってきました。本稿では、採用広報が広がる背景と採用広報によって狙える効果について解説します。
採用広報が、特に注目を浴びるようになったのは比較的最近のことです。リクルートワークスによると、リーマンショック以降落ち込んだ大卒求人倍率が再び上昇に転じたのが
2013年のこと。
以降、採用難が進むにつれて採用広報という言葉を耳にする機会が増えました。現在、多くの企業が採用広報プラットフォームとして活用するウォンテッドリー(Wantedly)がローンチしたのが2012年。
採用広報オウンドメディアの「メルカン」が有名なメルカリも、初めはWantedlyで情報発信をしていました。Wantedlyの利用企業数の伸びからは、採用広報がここ最近一気に広がっている様子が伺えます。
企業にとって「採用広報」活動が欠かせなくなっている理由
採用広報の浸透には、主に以下のような理由が挙げられます。
「採用広報」活動が活発化している背景
・売り手市場、採用難
・求職者が「大切にする価値観」の変化
・採用メディアとツールの多様化による難易度の低下
最大の理由は、採用自体の難易度が上がっていることです。労働人口の減少などにより、昨今は求職者に有利な売り手市場が続いています。企業はそもそも事業継続に必要な人材を揃えるため、積極的な情報発信をせざるを得なくなっているのです。
さらに、生活者(求職者)が持つ価値観の変化も大きく影響しています。
以前記事でCAMPFIRE家入一真氏のツイートを引用して指摘した通り、商品やサービス自体での差別化が難しい現代において、ユーザーや求職者は「その企業が社会にどんな価値を提供しようとしているのか」「どんな世界を実現できるのか」に注目して購買や就職、転職を選択します。
そのため企業は、“単なる求人情報”を超えた「あなた(ターゲット)が当社で働く意味」(ストーリー)を伝えることが非常に重要になっています。SNSなどによって常に情報過多な環境で生活者する求職者に向け、他社とは違う自社オリジナルの価値を伝えるため、これまで以上に丁寧で積極的な情報発信が必要なのです。
今では、「メルカン」や「サイボウズ式」のように採用広報を目的とするオウンドメディアを持つ企業も増えてきました。
しかし、オウンドメディアまで持たなくとも、自社SNSや先に紹介したWantedly、PR Table、noteなど「採用広報」に手軽に使えるメディアやツールの選択肢が増え、より一般的になりました。取り組むハードルが下がることで中小企業から日本を代表する大企業まで、多くの企業が採用活動の一部として採用広報を始めています。
「採用広報」によって狙える効果とは
次に、実際に採用広報で成果を挙げている企業の事例をもとに、採用広報の効果とその実現のために有効な手法について紹介したいと思います。採用広報を行うことで狙える効果としては、以下のようなものが挙げられます。
「採用広報」によって狙える効果
・企業の姿を正しく理解してもらう
・理解によるミスマッチの回避
⇒入社後の定着と活躍
⇒採用の効率化
・データ蓄積、分析による採用活動精度の向上
元来、企業の採用活動における大きな壁は、「自社の認知度」(
新卒採用の課題は「自社認知度」63.7%で2位)で、採用広報はこの課題解決に大きな役割を果たします。
また、「自社をどう理解してもらいたいか」から逆算した適切なコミュニケーションを図ることで、ただ「知っている」状態を作るのではなく、求職者に選んでもらえるように「正しく理解してもらう」ことが期待できます。
採用広報の事例を紹介
以下では採用広報を取り入れた企業について、その内容をくわしく解説します。
●パナソニックの事例
パナソニックは元々、日本を代表する大企業でありながら、「売上構成はBtoBの比率が高く、多岐にわたる事業領域があるが、多くの学生からは”家電”のイメージで想起されている」(パナソニック採用ブランディング課 杉山秀樹氏)という課題を持っていました。
それゆえ会社としては「認知」はされていても、就職先として「選択」されにくい状態でした。そこで取り組んだのが、就職活動の時期に捉われず、押し付け感なく「働く場としてのパナソニック」の情報に常に触れられる機会づくりです。
キャリア選択を始める前の層に対して、1on1でインタビューをしたり、SNSを使ったソーシャルリスニング(ソーシャルメディアから情報を収集、分析)をしたりすることで学生のインサイトを捉え、その内容をもとに情報発信の設計をしました。
インサイトの理解を経て、取り組みをすすめていることのひとつが、社員一人ひとりの「I(アイ)メッセージ」を届けるということです。Iメッセージとは「パナソニックとはどんな会社か」や「パナソニックにはどんな仕事があるのか」といった会社としての情報ではなく、働く社員が「”私は”何を大切にして働いているのか」や「”私は”どんな時に幸せややりがいを感じるのか」という個人の視点に立って発信する情報です。
大企業としてガバナンスが厳しいこともあり、社員一人ひとりが直接SNSなどで情報を発信する方法ではなく、今はペイドパブ(広告記事)を主に活用しています。発信は「エンゲージメント数」(いいね、シェア、リツイートなどSNS上の反応数)で定量的に計測し、次の施策に反映しています。
パナソニックでは、これらの活動の結果、この2年間でエンゲージメント数が16倍に増加、「認知」から「選択」への遷移も従来の2倍に達しているそうです。
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