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  • 2017/06/06 掲載

「見守り」にWi-Fiスポットが使えたら? オープンな「SOTOE!」の可能性

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少子高齢化が進む日本において、児童が犯罪に巻き込まれないため、また独居高齢者の安全のためにも、「見守り」のシステムをどう構築するかは大きな課題だ。もちろん、人手を使って見守るには限界がある。そこで近年、注目を集めるのがGPSやBLEといった位置情報の技術を用いた見守りシステムだ。しかしそこには、まだまだ課題も多いという。その解決に乗り出した見守り支援システム「SOTOE!(外へ)」を提供するリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ ソリューション事業部 シニアマネージャーの藤森 和香子氏に話を聞いた。
(聞き手/構成:編集部 中島 正頼、執筆:中村 仁美)

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見守りサービスの抱える課題とは
(©takke_mei - Fotolia)

BLEビーコンとは何か?

──まずは改めて、Bluetooth Low Energy(BLE)ビーコンとは何かについて、簡単に教えてください。

藤森氏:Bluetoothについては、キーボードやマウス、イヤホンなどで皆さんにもなじみがあると思います。Bluetoothの規格はバージョンアップし続けていまして、4.0の時にそれまでより圧倒的に省電力化しました。その代わり以前のBluetoothと互換性がなくなってしまったので、4.0以降のBluetoothは特にBLEと呼ばれています。IoTの潮流もあって、非常に注目度が高い規格ですね。

 ビーコンは位置情報の伝達手段のことです。BLEビーコンとは「BLEを利用した位置特定デバイス」ととらえるとわかりやすいかと思います。

──位置情報の特定という意味ではGPSなどの技術もありますが、他の技術の採用は考えなかったのでしょうか。

藤森氏:意識せず自動的に位置情報が取得できるような環境が構築できればと思っていました。確かに、それを実現する技術はGPSやWi-Fi、NFC(Near Field Communication)などもあります。

 しかしGPSは屋内や地下だと電波が届かない、また消費電力が大きいという弱点がある。またNFCはNFC対応機器にかざすという手間がかかるという弱点がある。これらの点を解決するのが、BLEビーコンなのです。

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リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ
ソリューション事業部 シニアマネージャー
藤森 和香子氏

GPSよりもBLEが見守りサービスに適している理由

──なるほど、それでBLEビーコンに可能性を感じられたのですね。

藤森氏:はい。もちろん、それぞれの技術には特性があって、地図のナビゲーションであればリアルタイムで現在地を把握できるGPSなどが適しているでしょう。しかし、お年寄りや子供の「見守り」といった用途には、その特性からBLEビーコンが最適ではないかと考えています。

──それはなぜでしょうか?

藤森氏:見守りサービスには、BLEビーコンだけでなく、GPSを活用したものも登場しています。GPSによる見守りは、GPSタグの現在位置をリクエストし、GPSセンサーにより現在地を把握。一方のBLEビーコンの場合は、タグを受信機が検知し、受信機の位置情報より通過位置を把握します。

 BLEビーコンタグの利点はより小型化ができ、ユーザーが安価で利用できる点です。タグ端末は数百円からありますし、タグ側には通信回線が不要なので通信費もかからず、月額費用は数百円のサービス利用料のみです。しかも1年~2年は放置していても電池が切れることもありません。GPS端末は1万円前後で、通信費が発生しますし、最低でも週1~2回の充電が必要になります。

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BLEビーコン見守りの概要と特徴

 ここで注意したいのが、「見守られる対象は子供やお年寄りである」という点です。大きなデバイスを持たせたり、定期的に充電をしてもらうのは難しい層といえます。だからこそ、小型で持ち運びしやすく、1~2年連続稼働するBLEビーコンが見守りサービスにはもってこいなのです。

 実際、阪神電鉄の「まちなかミマモルメ」をはじめ、リクルート住まいカンパニー、JR西日本、ALSOKなどいろいろな企業がBLEビーコンを活用した見守りサービス開始を発表しています。

導入が進むも、明らかになり始めた課題

──自治体での導入が進んでいるのも、タグが安価で一括導入がしやすいといった背景があるからでしょうか。

藤森氏:その通りです。たとえば発表資料等によると、兵庫県伊丹市は、阪急阪神ホールディングスと連携して1000台の防犯カメラとBLE受信機を街中に設置し、小中学生の児童や生徒、徘徊の恐れがある認知症高齢者などの見守りを実施しています。また大阪府箕面市はottaと協定を締結し、市内約500か所に受信機を設置、市内すべての小中学生にBLEタグを配布し、見守っています。

 それ以外にもリクルートやALSOKなども、複数の自治体と実証実験を実施しており、BLEビーコンを活用した見守りサービスはどんどん広がっています。ただ、このような広がりを見せる上で、課題が見えてきたんです。

──どのような課題でしょうか?

藤森氏:導入している見守りシステムが、各自治体でバラバラなことです。たとえばA市の子供がB市に行ったとしても、サービスを提供している事業者が異なるので、A市の子供が持つタグに受信機が反応することはありません。もちろん、逆もしかり。つまり、市内限定の見守りになっているのです。

 そのことに各自治体は悩んでいました。見守りサービスを支援してきた弊社としても、何か解決策を提案しなければ思い、そこで各事業者の見守りサービスをつなぐ仕組みとして、「SOTOE!」を作りました。

SOTOE!なら受信機1つでマルチなサービスに対応できる

──つまり、タグは規格化されているのに、受信機のインフラが共通化できていないので、事業者を越えてオープンに活用できないのですね。

藤森氏:その通りです。従来のビジネスモデルでは、A社の受信インフラはA社のサービスでしか使用することはできませんでした。しかしBLEは国際規格なので、本来はいろいろなサービスに使えるはずなんです。SOTOE!を導入すると、ビーコン受信インフラが共有化されるため、A社、B社、C社のサービスが使えるようになるわけです。

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従来は事業者ごとにバラバラだったビーコン受信インフラを共有インフラ化することで、住民にとっても自治体にとってもプラスになる

──その際、受信機はリプレイスが必要でしょうか?

藤森氏:新たに見守りサービスを導入する自治体については、マルチサービスに対応した受信機を設置していきますが、すでにサービスを導入している自治体については、既存の受信機のソフトウェアを書き換えて対応できる場合もあります。

──なるほど。既存の受信機のほとんどは、ソフトウェアの書き換えで対応可能ということでしょうか。

藤森氏:もちろん、そのサービス専用受信機となっている場合もあり、そういうところは置き換えになると思います。

──見守りサービス以外でも、BLEを用いた位置情報サービスであれば利用可能なのでしょうか?

藤森氏:それはSOTOE!のもう一つの特徴で、違うエリアで違うサービスを導入していても、SOTOE!の仕組みを使っていれば相互連携ができるんです。

 たとえばA市では児童見守り用インフラ、B市では自転車盗難防止インフラとしてSOTOE!を活用していたとしましょう。するとA市の児童はB市でも見守りが可能となり、B市の自転車はA市でも検知可能となります。自治体視点で考えると、近隣の自治体もSOTOE!を導入してくれることによって、自分たちの市のインフラを整備する予算だけで、周辺自治体の協力も得られることになるのです。

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見守り以外の異なるサービスでも相互に連携することが可能だ

──導入する自治体にとっても、ユーザーにとってもSOTOE!は有効なサービスということですね。競合他社はあるのでしょうか?

藤森氏:弊社と同様のサービスを展開している事業者はまだありません。将来的には事業者専用受信機とマルチ受信機が混在する世界観になると思っています。

【次ページ】 受信機の設置コストをわずか1/10にした秘策とは?
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