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  • 2016/10/31 掲載

日本農薬とDJIがスマート農業を解説、農薬メーカーが推薦するドローンとは一体何か

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農業分野の課題は多い。農業従事者の数は年々減少しており、高齢化も進んでいる。TPPに向けた対応として、生産物のコスト削減や高付加価値化も叫ばれ、政府はスマート農業の推進、農地集約化や法人経営化などを進めている。では、ドローンはスマート農業でどう活躍するのか。日本農薬の米倉 浩晋氏とDJIの張 旭東氏が、農薬メーカーとドローンメーカーそれぞれの立場からスマート農業への動きを解説した。
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ドローンはスマート農業でそのような役割を果たすのか
※画像はイメージ


スマート農業が進みそうな国内3地域

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日本農薬
マーケティング部
マーケティンググループ
米倉 浩晋氏
 まず始めに、日本農薬の米倉 浩晋氏が、国内農業の課題に触れた。

 新規就労者も含めた農業の従事者数は、年々減少している。農業従事者年齢の全国平均も70歳に迫っており、高齢化が急速に進んでいる。環境面では、温暖化による異常気象が頻発していることも問題だ。政策的においてはTPPに向けた対応として、生産物のコスト削減や高付加価値化も叫ばれている。

 同氏は「このような状況で、少人数・大規模農業による効率的な経営の実現が課題になっています。そこで国策として、農業のIT化やロボティクス化、ドローンなどを導入した『スマート農業』の推進や、農地集約化、法人経営化、若手育成の補助金政策などを実施しているところです」と説明する。

 スマート農業では、ドローンに大きな注目が集まっている。農薬散布で利用できるからだ。いま、土地利用型の農業では、一定以上に面積を増やしても利益率は向上せず、経費が削減できないという実情がある。同氏は「統計上では20ヘクタールが効率化の壁と言われています。この壁を壊そうとして、農業従事者は努力していますが、ドローンが寄与することで簡単に破れそうです」と予測する。

 都道府県別にみると、中国地方、四国地方、北陸の一部で特に70代が多い。

「こういった地域で、スマート農業などの新しい農業が導入できるのか? という問題があります。北海道は平均年齢が約57歳と若く、個人としても新技術を吸収しやすいかもしれません。また九州や関東も60代前半が多く、積極的な投資を行っており、面白い技術を取り入れられそうです」(米倉氏)

農薬メーカーが推薦するドローン

 農業散布用ドローンの活用に関し、米倉氏は「大面積農場や中山間地で多数の圃場を持つ農家が活用することで、効率的に管理でき、経済的にペイする技術です」と期待を膨らませる。

 農業用ドローンのメリットは、軽労働で特別な身体機能が求められないこと、さらに全自動で稼働し、前年のフライトログを活用でき、農業クラウドと連動ができることだ。将来的には、農薬散布のほかに種蒔き・施肥・観測など、マルチに使える農業機械に進化することも期待される。

 従来の農薬散布には、人が農薬タンクを背負って行う方法や、自走式ビークルで散布する方法、施設栽培専用に煙(燻煙剤)の流れを利用する方法、水田用に湛水を利用して薬剤を広げる自己拡散法などがある。しかし人力は効率面で難がある。自走式ビークルは、機械化による大面積対応や軽労働化は可能だが、コストがかかる。燻煙剤や湛水用薬剤は小規模では使えるが、大規模だと適用範囲が限られてしまう。

「ドローンによる農薬散布は大面積での効率化が可能です。ただし、高濃度・少水量の散布であるため、すべての作物に対応できるわけではありません。現行技術では果樹と園芸は対象の範囲外になるでしょう。とはいえ、防除速度に関しては、やはり他の方法と比べて、空中散布の方が、圧倒的に効率が良いです」(米倉氏)

 これまでも無人ヘリによる農薬の空中散布は行われてきた。では無人ヘリとドローンでは、効率が良いのはどちらだろうか。この点について、同氏は農薬散布機と散布方法(スプレー式または自己拡散型)の違いによる効率性について説明した。

「これまでのデータから判断すると、ドローン+スプレー式が良さそうです。散布範囲と作業時間は無人ヘリのほうが有利ですが、ライセンスを取るのが大変でコストもかかります。ドローンは操作が簡単で、うまく運用すれば安全性も高いです」(米倉氏)

 同氏は「我々のような農薬メーカーが推薦するドローンは、安定した防除効果と安全性があるものです。最終的にドローンは農業分野でも普及するでしょうが、そのためには条件があります。丁寧に実証実験をしたものが残るでしょう。そこで、いま注目が集まっている間に、ドローンが本当に役に立つことを示す必要があるでしょう」と自身の見解を示した。

【次ページ】DJIの農業用ドローン「AGRAS MG-1」の強さ
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