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- 2016/01/20 掲載
KPMGが世界約1,200名のCEOに行った意識調査から紐解く、日本企業成長のカギ
世界のCEO意識調査から判明した企業経営動向
日本経済新聞社、IMD、ハーバード・ビジネス・スクールが主催した「第17回 日経フォーラム 世界経営者会議」では、「企業経営の新潮流」と題し、KPMGのニコラス・グリフィン氏が日本企業へ復活への処方箋を示すスピーチを行うとともに、日本経済新聞社編集委員をモデレータに対談を行った。
グリフィン氏はまず、KPMGが世界約1,200名のCEOに対して行った意識調査の結果を披露した。その結果、CEOの89%が「今後成長戦略を積極的に進めたい」、64%が「パフォーマンスを上げたい」、78%が「人員を増やしたい」、47%が「国際的な拡大を進めたい」、60%が「規制を憂慮している」、86%が「顧客のロイヤリティに懸念を感じている」ということが判明した。
国別の比較では、これまですばらしい成長を遂げてきた中国やドイツのCEOが「これからは効率向上に重きを置く」と答えているのに対し、アメリカのCEOは「コラボレーションやM&Aを通じて、グローバルな成長を続けていきたい」と考えていたという。一方、日本は、M&Aを検討しているCEOは6%で、成長を牽引している重要な業種でCEOが「IoTなど新技術の何が今後主流となるか予測できない」が「ブロダクトミックスには注目している」と回答していたのがグリフィン氏にとって印象的だったようだ。
こういった消極的な姿勢は、今後低成長につながる危険があるものの、日本は潜在的にまだまだ成長できる力を有している、とグリフィン氏は語る。ただし、その手段についてはよく見極めなければならないという。
M&Aよりコラボレーション
キーワードはコラボレーションだ。日本企業のCEOがM&Aに前向きではないのは、失敗のリスクが高いからである。同氏はここで、講演当日報道発表されたスウェーデンの通信機器ベンダー エリクソンと米国のネットワーキング機器ベンダー シスコシステムズの"将来のネットワークの創出に向けた、ビジネスとテクノロジーの両分野に渡るグローバルなパートナーシップの締結"について触れた。一言でいえば"コラボレーション"である。CNNのレポーターが「なぜ合併しないのか」と尋ねたところ、両社は「合併は市場から詳しく吟味されるために、結果を意識してしまう。その点、コラボレーションはしばられない。相手の信頼性や競争力を生かして、俊敏に動くことができる」と答えた。まさにこれがM&Aでは難しいコラボレーションの利点だ。
またM&Aが一方のリーダーシップによってその文化を押しつけがちなのに対して、コラボレーションはお互いを尊重することができる。日本の企業文化にも合っているとグリフィン氏は推奨する。
業種と業種の間の境がどんどん縮まっている
近年はまた、業種間の境が縮まっている。新しいプレーヤーが、新しいビジネスモデルで彗星のように現れて、新しい市場を形成する。新しいタクシー配車サービス Uber(ウーバー)や、個人が自宅を宿泊施設にして貸し出すAirbnbなどがその例だ。また、既存の業界にも変化の波が訪れている。たとえば、"コネクテッドカー"。今、多くの業界がクルマに関心を寄せている。医療業界はハンドルを血圧測定のモニタリングデバイスにすることを考えており、小売業界は乗員情報とナビゲーションシステムと連動させて道周辺ショップを紹介することを考えている。
この先の成長を持続するためにも、より速いスピードで、今までの枠組みを超えたコラボレーションをうまく推進することが必要だ。これはバランスシートに影響を及ぼすテーマだという。しばらく様子を見ていれば過去の繁栄が戻ってくると考えているCEOもいるかもしれないが、もう過去には戻らない。
アマゾンはKindleビジネスで売れ行きを見ながら一日に何度も価格を変えるダイナミックプライシングを試し、オンラインゲームは無料になり、ゲームの中で課金するビジネスモデルに転じた。「変化への俊敏さに欠ける企業が敗者になる」と、グリフィン氏は警告した。
【次ページ】 日本企業はもっとオープンマインドを持って世界と協業を
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