準天頂衛星、ロケーション・インテリジェンスも要注目
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消費者にさまざまな価値を提供する手段として位置情報サービスが脚光を浴びている。この6月にグーグルがマップを3D化したり、アップルがiOS6から独自マップを採用したり、位置情報サービスをめぐる覇権争いも始まった。なぜいま位置情報サービス競争なのか?「要因として挙げられるのが“SoLoMo”だ」と指摘するのは、「ITロードマップセミナー AUTUMN2012」に登壇した野村総合研究所の亀津 敦氏だ。現在のGPSよりも精度の高い準天頂衛星や、ロケーション・インテリジェンスといった新しい技術も登場しつつある。
新ビジネスは「Social」「Location」「Mobile」がキーワードに
SoLoMoとは、「Social」「Location」「Mobile」という3つの言葉の頭文字をとったキーワードのこと。ソーシャル(SNS)による位置情報の共有、地図や測位に関わるロケーション技術の進歩、スマートフォン/タブレットによる現在位置情報の取得の簡易化を指す。
「今後、ソーシャル、ロケーション、モバイルの3つの技術が合わさって普及していく。これにより位置情報を活用したさまざまなサービスが登場し、その関心はさらに高まっていくだろう。」(亀津氏)
国内のスマートフォン普及率は2011年からフィーチャフォンを抜き、年々その比率は大きくなっている(参考記事:
スマートフォンの出荷比率が7割超え)。スマートフォンには、GPS、NFC、気圧センサーなどが内蔵されており、スマートフォンが増えることは、ユーザーの意識に関わらず、センシング端末が増えることを意味する。ロケーションを把握するにも、かなり精度の良い測位が可能になった。
「スマートフォンに気圧センサーが内蔵されている理由は、気圧によって高度が分かるからだ。高度が分かれば、GPSのズレを補正して正確なロケーションを割り出せる。このようなセンサーで位置情報の精度を上げているのが昨今の状況だ。」(亀津氏)
SNSの普及も位置情報サービスを後押ししている。SNSでは「チェックイン」というサービスが世間に認知されてきた(関連記事:
「チェックイン」、ネットと現実を結ぶ位置情報サービスに未来はあるか)。
たとえば米国には、位置情報を利用してチェックインを行う「Foursquare」という専門のサービスがある。スマートフォンとGPSで現在地を検知し、周りの店舗や友人の所在などを地図上に表示するものだ。さらに自分が行きたい店舗をクリックし、チェックイン(来店の宣言)すると、特別なクーポン券が発行される。重要な点は、本当にその店の近くに来ている人だけにクーポンが発行されること。それを確認するためにスマートフォンのGPS機能が用いられる。
さらにチェックインした店の位置情報がFacebookなどのSNSで共有される。その人がどの店にいるのか分かり、多くの人に口コミできる。友人に来店を促す仕組みや、来店頻度に応じたクーポンを提示する仕組みなどが提供できるようになる。このようにスマートフォンが普及し、SNSによって位置情報が共有されると、明らかに消費者行動も変わってくる。
総務省の調査(平成23年)によれば、スマートフォンユーザーが外出時に、地図情報提供サービス(乗り換え案内サービスなど)を高頻度で利用している実態が明らかになっている。
「アマゾンのようなオンラインのeコマースの伸びが著しく、ベストバイのような実店舗を持つ企業の収益を脅かしている。実店舗のショールーム化が始まっており、消費者は店舗に来て商品を手に取ってもその場で購入せず、ネットで比較してからECサイトで買うという流れが起きている。」(亀津氏)
この流れは、米国で今春に注目を浴びていたものだが、いよいよ日本でもショールーム化の動きが見られるようになった。博報堂の調査によれば、店舗内でスマートフォンを利用して商品を調べる消費者の割合が、家電量販店では30%以上という。小売業にとっては、せっかく来店してくれた顧客をみすみす逃してしまうことになるため、実店舗ならではのサービスを提供することが大きな課題になってきたのだ。
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