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- 2012/10/02 掲載
資料作りが「バカのロングテール」になってないか?「IT断食」の是非を問う
アステラス 須田IT部長、関電 稲田副本部長らが議論
7割は職場でのIT弊害を感じている?
光の部分が強調され続けてきたITは、今やビジネス、生活ともに欠かせない存在となった。しかし、その強烈な洗礼を受けた私たちは公私ともにIT依存となり、弊害も出始めている。JUASスクエア2012のディスカッションテーブル「『IT断食のすすめ』~この挑戦状にIT部門はどう応えるか~」では、ドリーム・アーツ、代表取締役社長の山本孝昭氏の共著「IT断食のすすめ」を取り上げ、ITの効果や副作用、対処法などについて議論された。
議長:アステラス製薬 コーポレートIT部長 須田真也氏
副議長:荏原製作所 情報通信統括部 IT企画室長 池田和弘氏
関西電力 経営改革・IT本部 副本部長 稲田浩二氏
東レ 情報システム企画部部長 松田浩氏
ユーザー企業:半数以上
システム子会社:2割
ITベンダー:2割
その他:1割
最初に、「IT断食のすすめ」の著者である、ドリーム・アーツ、代表取締役社長の山本孝昭氏による“挑戦状”が映像として流された。
山本氏は「IT断食のすすめ」の中で、意味なくCCされる電子メールや共有ファイルが溢れかえる「Information Communication Flood」(情報洪水)、内容を深く吟味せずにコピペを繰り返すだけで資料を作った気になる「BLT」(バカのロングテール)など、IT依存の弊害を列挙し、その処方箋としてIT断食を提案している。
「PCに時間や気力を吸い取られて無力化した社員は、資料作りも以前の資料をただコピー&ペーストしているだけ。何も生産的なことをしていないのに“なぜか”忙しいと感じる人は、IT中毒を起こしているかもしれない」(山本氏)。
山本氏の挑戦を受けて、議長の須田氏は会場に次の質問を投げかけた。質問と結果は以下の通りだ。
弊害がある:7割
弊害はない:1割
どちらともいえない:2割
やるべき:25%
やるべきではない:25%
分からない:4割
もうやった:1割
続いて、IT断食への賛成・反対の代表意見が紹介された。
まず、賛成意見のプレゼンターは、プラントの設計やプランニングを業務とする企業に在籍し、技術拠点は世界各国にあって協業体制が敷かれているという。同プレゼンターは「分散された場所で大型プロジェクトを推進するには、ITが必須」としつつも、ITに依存しないコミュニケーションを取り入れてIT断食を実践していると紹介した。
「毎朝のホウレンソウ(報告・連絡・相談)、建設現場でのツールボックスミーティングを欠かさず実施し、調整が発生したときはメール連絡で済ませずにフェイス・ツー・フェイスの意見交換を推奨している。また、メールの件名には「依頼」「回答」などをつける、メールでは議論しない、電話で補則するなどのルールを設けている」。このようにITをうまく使いこなす方法を模索するきっかけとして、IT断食に賛成するとまとめた。
一方の反対意見のプレゼンターは、「オフィスにITが入ったことで仕事が効率化し、その結果、職場から人が減った。そのような環境で昔よりもコミュニケーションが少ないのは当然」と述べた。また、「PCに時間を吸い取られるという意見もあるが、少人数体制で生産性を上げるにはITが必要で、それとこれとは別」と反論した。
そして、ITでオフィス内のコミュニケーションが減り、それに伴う無駄が増えたと感じるのであれば、それはむしろ社員旅行やお茶くみなどのインフォーマルなコミュニケーションが減ったことに原因があるのではないかと指摘。「IT断食に安易に飛びつくのではなく、インフォーマルなコミュニケーションの場作りを心がける方が対策になるのではないか」と結論づけた。
【次ページ】悪いのはITではなく人の方?
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