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世界最大の航空宇宙機器開発製造会社である米ボーイング。787などの民間旅客機だけでなく、軍事衛星や軍用機、スペースシャトルの開発・製造まで手がける同社は、サイバー攻撃の格好の的で、日々脅威にさらされている。そのボーイングは現状のサイバー攻撃についてどう考え、どのような対策を構じているのだろうか。元シークレットサービスの特別捜査官で同社SOCセンター長のブライアン・パルマ氏がサイバー攻撃のトレンドと、情報優位性を獲得するために必要なサイバー攻撃対策を語った。
既存の情報セキュリティ対策を揺るがす6つのトレンド
標的型攻撃などのサイバー攻撃は、今や他人事ではなくなった。他企業や他事業とインターネットを介して有機的につながっており、つながりのある企業は漏れなく情報窃取や踏み台の的となる。
Interop Tokyo 2012の基調講演で、ボーイングのブライアン・J・パルマ氏は、ネットワーク技術がビジネスに恩恵をもたらす一方で、悪意のある第三者にとっても有益な手段となっていることを強調した。
ボーイングは、民間機以外にも衛星、軍用機、スペースシャトルなどの設計開発を行っている世界最大の航空宇宙機器開発製造会社。日本企業とも深い関わりがあり、最新のボーイング787 ドリームライナーは、日本企業がさまざまな部品の生産委託に携わっていることでも有名だ。「日本企業の多大な貢献があったからこそ」と述べたパルマ氏は、クラウドなどでのリアルタイムなコラボレーションもボーイング787の成功の一因にあったことを明かした。
その一方で、悪意のある第三者も最新ネットワーク技術を駆使して攻撃を実践する。「最近では、アルカイダがインターネット上に電子聖戦(Eジハード)を呼びかけるビデオを流し、米国の政府機関や重要インフラへの攻撃を呼びかけた。交通や流通など、あらゆる公共機能がインターネットに依存する現在、キーボード1つでシステムを麻痺させるのは簡単だ」(パルマ氏)。
こうした脅威は一時的なものではなく、高度に進化したテクノロジーの副産物だとパルマ氏は言う。「これまでは、高い壁や堀で囲まれた城を守ればよかった。今はスマートフォンやタブレットを持ち歩くデジタルノマドも保護しなければならない」(パルマ氏)。ネットワーク化されるほどに、保護対象は広がっているのだ。
ボーイングは、情報セキュリティに影響を与える最近のトレンドについて、顧客企業にヒアリングを実施した。その結果、6つのトレンドにまとめることができたという。
- データの急増
- 継続的に行われる非対称攻撃
- モバイルデバイスの急激な普及
- 消費者向けITの台頭
- 規制の有効性とコストの効率化
- セキュリティ対策モデルの転換
これらの問題の中心にあるのが、スマートフォンなどの「モバイルデバイス」と、一般ユーザー向けサービスが企業向けサービスに先行する「コンシューマライゼーション」だ。
「スマートフォン利用者は2016年までに10億人へ達し、利用端末を業務に持ち込むとの予測がある。一時的なトレンドと判断して持ち込み制限をかけたり、法規制の面から流入を防げると考える企業は近視眼的で間違っている」としたパルマ氏は、セキュリティの側面から利用を担保できるような、新たな長期セキュリティ戦略を講じるべきという。
では、新たな長期セキュリティ戦略は何か。それはビッグデータを利用した情報優位性を獲得すること。そして、その優位性を維持する仕組みを作ることだとパルマ氏は指摘する。
【次ページ】情報優位性を獲得するために必要な3本柱
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