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  • 2011/06/01 掲載

震災後のマーケティング、消費者の行動はどう変わったのか?

「買い占め」「買い控え」「消費自粛」「応援消費」を短期間に経験

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先ごろ日本は未曽有の東北大震災によって甚大な被害を受けた。現在、復旧に向けた努力がなされているところだが、エネルギー資源の消費を抑制し、持続可能な社会を構築することは日本だけの問題ではないだろう。すでに震災以前から、資源消費の「拡大」と「抑制」あるいは、「利己追求」と「利他(エシカル)追求」という2軸が絡み合う消費行動がみられるようなっており、相反する複雑な消費行動が震災後の「応援消費」としても結び付いている。こうした変化を踏まえて、企業は今後どのような考え方をベースに事業・マーケティングを実践・展開していけばよいのだろうか。

創造型マーケティングの基本的な考え方

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産業能率大学総合研究所
主幹研究員
安達隆男氏
 産業能率大学総合研究所 主幹研究員の安達隆男氏によれば、今回の震災をトリガーとして、資源消費の「拡大」と「抑制」あるいは、「利己追求」と「利他(エシカル)追求」という一見相反する「2軸消費」が生まれているという。

 この2軸消費の時代において、企業はどのようなマーケティング活動を実施すればいいのか、そこで同氏が掲げるのが「価値創造環境提供型マーケティング」だ。この価値創造型マーケティングとは、人類の幸福を実現することを目指した製品・サービスが新たな市場を創り出し、こうした活動が社会から「報酬」として認められるようになるべきである、という主張だ。

 社会問題の解決手法は大別すると2つに分けられる。1つは「分析型問題解決」、もう1つは「創造型問題解決」である。

 前者の分析型問題解決とは、あるべき姿と現状の劣っている姿の因果関係を調べて、どこに原因があるのかを分析し、そのギャップ=問題を埋めるというものだ。この分析型問題解決のプロセスは、現状観察から分析、企画、実行に移し、さらにその評価をフィードバックするという科学的な手法によるものである。

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「分析型問題解決」と「創造型問題解決」の違い。前者は原因を分析し、ギャップを埋める。後者は、まず目的ありき

 かつてモノ不足を解消して大量生産を実現するために、人間の作業を細分化し、組織構造をピラミッド型にして管理することで成功をおさめたのが、モータリゼーションを拓いた実業家のヘンリー・フォードだ。その手法は、まさしく分析型問題解決によるもの。日本では同手法によって、1955年ぐらいから家電が発達しはじめ、1965年ごろには家庭に製品が普及した。しかし、1990年代にはモノ余り現象が起きはじめるとギャップを埋めるような問題がなくなってしまう。分析型問題解決では、将来の予測が成り立たないことも多くなってきたのである。

 そこで登場したのが「創造型問題解決」だ。これはよりよい姿を創造し、その姿と現実のギャップを埋めていくという手法だ。未来は自分たちの意思で創るものであり、そこには原因追究や分析の考え方はない。まず目的ありきでスタートし、顧客の期待を越えるような価値を設定するために「探索学習」が必要になる。

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創造型問題解決のプロセス。目的ありきでスタートし、顧客の期待を越える高い価値の目的に向かって「探索学習」をしていく。組織構造はネットワーク型

 安達氏は、この創造型問題解決の具体例として携帯電話を挙げて説明した。「携帯電話は、iモードやカメラを搭載し、さまざまな機能が付いてきた。しかし、これは従来の問題を解決するために多機能になったわけではなく、ありたい姿を創造することで、我々消費者が引っ張り上げられたものだ」と指摘する。

 創造型マーケティングでは、このように目的を高く掲げ、将来を先取りするような形で目的と幸福を追求する。この創造型マーケティングを支えるのが「ネットワーク型構造」だという。それぞれの“個人”が創造し、協働していくことで創発され、高いミッション(=顧客の期待を越えた価値)を実現する。

 とはいえ創造型マーケティングが思い付きで終わらないにように、現実的な手段を駆使する方法論も必要となる。たとえば創造と論拠、完成と論理性、斬新性と実現性など、矛盾点も解消していかなければならない。創造型マーケティングでは、分析型と創造型を状況に応じて使い分け、両方をうまく組み合わせることが重要。それで最適な問題解決を実現すべきなのである。

【次ページ】震災後、事業・マーケティング活動のあり方はどう変わった?
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