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21世紀は都市の時代と言われる。世界人口の過半数が都市に住む一方、都市は一様ではなく、教育レベルや経済力の格差など、さまざまな要因や差異を抱えている。そうした多彩な都市の中に、グローバル都市が存在する。ヒト、モノ、情報が行き交う世界を結ぶ港となり、世界の政治・経済の動向までをリードするグローバル都市は、いわば「都市のエリート」ともいうべき存在だ。世界有数の経営コンサルティング会社A.T. カーニーは、シカゴ国際問題評議会、フォーリンポリシー誌とともに、グローバル都市リストを作成し、上位65都市について、2010年度の世界の都市のグローバル度ランキング「グローバル・シティ・インデックス」を発表した。ここでは、そのリポートの内容をダイジェストでご紹介する。
※本稿はA.T. カーニーの英文リポート「The Urban Elite -The A.T. Kearney Global Cities Index 2010」(原題)の日本語訳を要約したものです。
グローバル都市の条件とは? ~指標から見た各国のランキング動向
A.T. カーニーは長年、フォーリンポリシー誌と共同で世界各国のグローバル度調査を実施してきた。「2010年グローバル都市指標(グローバル・シティ・インデックス)」では、世界の資本や人材、アイディアを引きつけ、またそれらを生み出す能力を「グローバル度」として定義し、調査を行っている。具体的な測定方法としては、
① ビジネス活動、② 人的資本、③ 情報交換、④ 文化的経験、⑤ 政治的関与の5つの分野について評価・数値化を行い、それらの加重平均による総合スコアによって、世界の65都市のグローバル度を測定した。
ランキング順位
これまでも常に世界に対して開放的だったニューヨークやロンドンなどの都市は、2010年度調査でも、当然ながら上位を占めている
(図1)。東京、パリ、香港、シカゴ、ロサンゼルス、シンガポールが続いていることも、産業化時代の主要都市と同じ顔ぶれである。実際、2008年の前回調査から、上位8都市はほぼ変わらない。これらの8都市は5分野のすべてで高得点であり、その後にシドニー、ソウルが続く。
また、ほとんどの都市でグローバル度の平均スコアは前回調査時(2008年)よりも高くなっており、多くの都市でグローバル化が進展している。一方、最もランクの高い都市群と最もランクの低い都市群とのスコア差は広がっている
(図2)。またシドニーやサンフランシスコ、ベルリンなど中位層の都市は上位層との差を急速に詰めており、その下に続く大阪やヨハネスブルグ、カイロなども追い上げが目ざましい。しかし、重慶やダッカなど最下位層の都市と上位との乖離は、むしろ目立ってきている。
とくに顕著に見られた傾向は、グローバル都市は危機に対しても強かったということである。2008年の世界経済危機に際しても、上位のグローバル都市の多くは、懸念されたよりもダメージがはるかに小さく、むしろ反対に強さが増している。
情報も、グローバリゼーションには欠かせない要素だ。ベルリンやフランクフルト、シドニー、サンフランシスコ、マイアミの順位上昇がその証明である。これらの都市はいずれもブロードバンド面での向上や、国際的な報道の増加によりスコアが上昇している。
また2010年の指標には、新しく「検閲」という評価項目が加わった。この結果、2010年度の調査結果では、バルセロナやモントリオール、ジュネーブ、ヒューストン、ナイロビといった都市が上位65都市に新しくランクインしている。ジュネーブやナイロビには国連の重要拠点が置かれ、バルセロナはイベリア半島の文化とビジネスの一大ハブである。
アジアの都市の急上昇
2010年の指標では、アジアの都市の急上昇が目立った。総合ランキングの上位10都市中、東京、香港、シンガポール、シドニー、ソウルの5都市までがアジア太平洋地域にある。また下位では、中国とインドの都市が大きく伸びてきている。これらの都市は、国外から仕事や投資を呼び込んでいる。さらに若者の教育に力を入れアジアの未来を担うインフラ整備に余念がない。その目標は、グローバル化された世界でリーダーとなることに他ならない。
また検閲の項目が今回入らなければ、新興国の都市の多くがより高いスコアとなっただろう。移民の受け入れもグローバル化の重要なポイントだが、アジアの大半の都市はまだ充分な域に達していない。
BRICs
ブラジル、ロシア、インド、中国の勢いは疑いようもない。2008年に比べて北京が12位から15位、モスクワが19位から25位と後退したが、サンパウロは35位、ニューデリーとムンバイはそれぞれ45位と46位であった。BRICsのなかで、中国のGDP(国内総生産)は2009年で4兆9,000億ドルと最も高く、近接するライバル国インドのほぼ3倍の数字だ。グローバル度ランキングには6都市が入っている。全体傾向は比較的ビジネス活動のスコアが高いことだが(モスクワを除く)、さらに上位を狙うには経済だけでは難しい。
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