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- 2010/04/08 掲載
SaaS、仮想化、OSS、SOAはITコスト削減に寄与したのか、成功企業のベストプラクティスを探る--大和総研 大村岳雄氏ら
コスト削減のためのIT技術導入状況調査から
コスト削減にITは本当に役立っているのか

情報技術研究所長
大村岳雄氏
大村 今回の調査では、上場企業に対し、「SaaS」「OSS」「SOA」「サーバ仮想化」の4つの技術について、これらの技術がコスト削減に寄与したのかを、アンケートならびにヒアリングで調査しました(調査概要はこちら)。
この4つの技術はメディアではさまざまに取り上げられていますが、実際の効果については懐疑的な意見が少なくありません。たとえば、サーバ仮想化ではハードウエアの費用は減りますが、複雑な仮想化の基盤を管理するためのコストが増え、かえって負担増になったというケースもあります。

情報技術研究所
課長代理
大嶽怜氏
大嶽 さらに個別の技術についてだけでなく、「総合してどうか?」という視点からも調査を行いました。各種メディアの情報は、個別の技術についてのベストプラクティスが多く、それよりも「全体としてコスト削減になっているのか」という視点が重要だと考えたからです。
──結果はどうでしたか?
大嶽 4つの技術とも、「非常に満足」「満足」を合わせて50%以上で、おおむね満足しているという結果でした(図1)。コスト削減度合いの大きかった技術は、「SaaS」と「仮想化」ですね。「OSS」と「SOA」については、3割弱にとどまってしまいました(図2)。

(出典:大和総研,2010/03)

(出典:大和総研,2010/03)
SaaSはコストの変動費化が評価

情報技術研究所
課長代理
相川弘行氏
相川 満足度は高い反面、実際のコスト削減の効果については明確に効果が得られたという回答は想像以上に少ないものでした。むしろ、固定的なITコストを変動費化できる点を評価する回答が多く見られました。
つまり、大規模なシステムを導入する場合、売り上げが減少した時に、それと連動してITコストを削減できず、結果的に投資コストが回収できなくなるのを懸念していたのです。実際、調査でも企業の売り上げの変動率が、10%未満だった企業は10%強しかいませんでした(図3)。
その点、SaaSでは新規事業の立ち上げや事業規模の変化への柔軟な対応が可能になります。一方で、中長期のTCO(Total Cost Ownership)には、それほど寄与しないケースもありますが、それを許容したうえで利用しているため、満足度は高かったのだと考えられます。
大嶽 とある企業では、従業員数が3年間で1000人から100人に減少したものの、システムは1000人の時に構築した高価なシステムを維持せざるをえない状況になっていました。そのような状況に陥る可能性があるなら、多少割高になっても、コストが変動費化するメリットは大きいと言えるでしょう。

(出典:大和総研,2010/03)
──変動費化は、予算が立てづらいという意見はなかったのでしょうか?
相川 今回のケースでは、使用リソースに応じて従量制の課金になるパブリッククラウドのようなサービスを調査の対象とはしていません。SaaSの場合は、むしろアカウントごとの課金が多いため、予算化は決して難しいわけではないと思います。
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