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- 2009/07/03 掲載
【市場志向型経営の構図 第10回】顧客相談窓口の役割
武蔵大学経済学部 准教授 黒岩健一郎氏
市場情報を司る司令塔
市場志向型の経営を行うには、市場情報が社内をどのように循環しているかに注目する必要がある。その流れは多様である。市場調査部門から流れるルートや営業部門から流れるルート、ショールーム部門から流れるルートもあるだろう。それらと並行して、顧客からの問い合わせや苦情情報を社内に流すのが顧客相談窓口である。消費者の権利意識が高まっている今日、顧客相談窓口は、顧客からの要望を社内に行き渡らせるのに重要な役割を担う部門となっている。「苦情は顧客からの贈り物」と言われるが、顧客の苦情から製品改良してヒットした製品は多い。例えば、カルビーでは、顧客から「堅あげポテト(ポテトチップスの一種)の大ファンです♪でも、一人で食べるには量もカロリーも多いです」「バッグにポンと入れられるのがあったらいいな」という要望に応えて、小さな小袋を4つ繋げた4連パックを販売し、好評を得ている。ハウス食品でも、「レトルトカレーは便利でおいしいけれど、もっとカロリーの低いカレーが食べたい」という声に応え、油脂分を60%もカットした『咖哩ヌーヴォー』を開発している。顧客相談窓口が収集した市場情報が、製品開発に活用されているのである。
このような市場反応を生むには、顧客相談窓口が進化した組織になっていなくてはならない。一般に、顧客相談窓口は、3つの段階で進化する。第一段階では、苦情をゴミのような厄介なものと捉えて、できるだけコストをかけずに片づけることに注力する。社内では「苦情処理」という言葉が使われる。顧客相談窓口は、組織構造上、総務部や広報部に位置し、総会屋対策チームの隣にあることも多かった。第二段階になると、社内で使われる言葉が「苦情対応」に変化する。顧客の離脱を防ぐための機会として苦情を捉え、顧客満足の一つの手段となる。第三段階では、苦情や問い合わせは、重要な市場情報と捉えられ、その活用に注力するようになる。この段階まで進化すれば、顧客相談窓口は、市場情報を社内に行き渡らせる機能を果たすようになる。
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