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  • 2009/02/27 掲載

【市場志向型経営の構図 第6回】情報生成の優秀事例

武蔵大学経済学部 准教授 黒岩健一郎氏

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今回からの3回は、マーケティング・リテラシーの3つの能力である情報生成、情報普及、情報反応の優秀事例を取り上げる。これまでは、やや抽象的な説明が多かったが、この3回シリーズでは具体的な取り組みを紹介していく。まず、情報生成力アップのために参考になる事例から始めよう。

市場調査の歪みをなくす

 情報生成の第一歩は、市場情報の収集である。その代表的な手法は、市場調査である。市場調査には正確性が求められるが、バイアスがない状態で実施することは意外に難しい。その一つの理由は、しばしば市場調査がブランド・マネジャーの意見を社内で通すための材料に使われるためである。一般に、メーカーの市場調査担当者は、ブランド・マネジャーの指示によって、外部の市場調査会社との橋渡し役をする場合が多い。また、事業部門に属する調査担当者の業績評価には、同事業部門のブランド・マネジャーが関与する。このような場合、調査担当者は、ブランド・マネジャーが期待する調査結果が得られるような調査設計を行ってしまう可能性がある。サンプルの抽出方法や調査票の文章を操作することで、調査を歪めてしまう恐れがある。

  花王では、このようなことが発生しないように、さまざまな工夫をしている。まず、市場調査部門が事業部門から独立している。調査担当者は、自分の業績評価を気にせずに、ブランド・マネジャーに遠慮なく意見が言えるようになっている。市場調査部門は社内での発言力も強く、時には事業部門に対して「まだ、調査する段階ではない」といった指摘をすることさえあるという。

 また、調査会社そのものを傘下に持っている。外部の調査会社に任せるのではなく、コントロールしやすい関係会社で行うことによって、調査手法の一貫性を保っている。例えば、新製品の発売を決定する調査の調査票は標準化されており、事業部門が勝手に変更することはできない。そうしておけば、過去の調査結果との比較もでき、一度の調査だけでは得られないような示唆が得られる。

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