- 会員限定
- 2009/01/26 掲載
【仁科桜子氏インタビュー】問題山積みの医療現場で女医が目にしたものは?
崩壊しつつある現場からのダイレクトメッセージ!?
――現役のドクターというご多忙の身でありながら、文章や本を書こうと思ったきっかけは何でしょうか?仁科氏■小さい頃から文章を書くのがとても好きでした。作文コンクールとかもテンション上げて、自主的に応募しちゃうくらいに! だから、医者になってから普段の仕事の中で特に印象に残った出来事など、ちょっとしたことを自分のノートに走り書きのメモみたいに残してきたんです。日記というほど大したものではないけど、お笑い芸人のネタ帳みたいな感じなんですかね。
それを何らかの形にしたいなあ、と思ったのは確かですね。ただし、本を書きたいと思った直接のきっかけは、やはり最近の医療崩壊に関する報道です。連日テレビでは医療にまつわる暗いニュースばかり。中には実際の現場の現実とはかけ離れた報道もありました。それらを見ているうちに、現場の意見を何らかのかたちで皆さんに少しでも知ってもらいたいと思ったことが一番の理由です。医療の現場というと縁遠く感じてしまう人も多いでしょうけど、ビジネスマンやOLの方々が日々の仕事で頑張ったりヘマをやったりして、プライベートでは憂さを晴らすように、医者や看護師も同じように日常を過ごしているのよーという部分とかも読者に伝わるといいなぁと思います。
『病院はもうご臨終です』 |
仁科氏■「医者って大変でしょ」ってよく言われますが、私はこの仕事が好きなのでとても楽しいですよ。日々、緊張感を持って働けるのはすごく刺激的です。ただ、あまりに刺激的すぎるような辛いこともたくさんありますが(笑)。
やっぱり一番神経を使うのは、命に関わるようなミスをしないようにすることです。当たり前のことですが、これが毎日の仕事となると結構大変です。疲れている日もあれば自分が具合悪い日もありますよね。でもちょっとした気の緩みが大事故につながりかねない仕事ではあります。仕事上のミスが人の命に関わるという点が一番大変なところかもしれません。その分、やりがいもありますけどね。
あとは、とにかく体力勝負なところでしょうか。医者の仕事は、当直明けでも普通に翌朝から通常業務があります。休日でも夜中でも常に緊急の呼び出しに対応しなきゃいけないし、完全に仕事を忘れる時間っていうのがあまりないんです。だから肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまう医者がたくさんいるんです。もちろん、女だからって特別扱いもないですしね。ま、当たり前なんだけど。
それと、医者になってからというもの、自分の発する言葉にはかなり気を使うようになりました。患者さんに話す何気ない一言も、「医者の言葉」として重く受け止められることが多いからです。冗談のつもりが、患者さんに余計な心配をかけてしまったりとかあるわけですよ。また病気の説明をする時なんかは、いかにわかりやすく、また正確に伝わるかを考えながら話すように心がけています。でもこれって結構難しいんですよね。ボキャブラリーも磨かなきゃいけないし……やるべきことがありすぎる仕事です。とにかく白衣を着たら「医者として誠実な振る舞いをしなきゃいけないんだ」という重圧のようなものは感じます。大変というほどではないけど、神経は使いますね。
――病院も昨今の不況に関しては影響を受けている感じですか?
仁科氏■意外なほどに、病院でも最近は不況を肌で感じます。患者さんの意識が変わったというか、財布の紐がかたくなったという感じですかね。景気の良い時代は、「値段はいいから、とにかく個室がいい」なんて希望もわりと多く、1泊10万円くらいする広い個室の病室もすぐに埋まっていたように思いますが、最近はとにかくお金のかからない部屋を希望される患者さんが多いです。
また、検査を受けるにも、まず金額を聞いてから検討するような患者さんも増えています。まあ、本来は受ける前に金額を提示してあげるのが当然という気もしますけどね。自分だって病院に行っていろんな検査をされたら、「お金足りるかな……」と財布の中身を気にしてしまうことがありますから。昔、私もいろんな検査されて本当にお金が足りなくなった苦い経験もありますね。受付で、「すいません、足りないんですけど」って言うのがすごく恥ずかしかったです……。これからの病院は、検査や治療をする前におおよその金額を提示するとか、キャバクラじゃないですけど、もっと事前に明朗会計にできたらいいんじゃないかと思います(笑)。
PR
PR
PR