• 2009/01/19 掲載

杉原 佳尭の「ICTによる選挙新時代」(1)なぜオバマは選挙に勝ったのか

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2009年1月20日、第44代アメリカ合衆国大統領としてバラク・オバマ氏が就任する。オバマ氏がどのように米国を変えていくのかは今後を見守る必要があるが、選挙活動では圧倒的に不利な状況から「Change」というキーワードで大きな旋風を巻き起こすとともに、積極的にICTを活用したことでも知られている。日本でも2009年は選挙イヤーを迎えるにあたり、ICTによりどのように選挙が変わっていくのか、自民党本部(人事局・国際局)、長野県知事特別秘書などを経て、現在インテル渉外部長、NPO法人 地域情報化推進機構 理事長、在日米国商工会議所 インターネット・エコノミー タスクフォース 委員長を勤める杉原 佳尭氏が俯瞰する。
執筆:杉原 佳尭

ICTで変わる選挙

Photo by The Obama-Biden Transition Project

第44代アメリカ合衆国大統領
バラク・オバマ氏

 2008年のもっとも大きな話題は、言うまでもなく経済の混乱だっただろう。ただ、その次に大きな注目を浴びたのは、実は「政治」だったのではないだろうか。

 1月20日、「Change」というキーワードで、米国民から熱い期待を浴びて登場するオバマ新大統領はもちろんそうだが、政治に注目が集まった理由はそれだけではない。

 なぜなら、米国に限らず、民間の経済状況の悪化に伴い、世界中の経済界から各国の政府に、特定融資や公共支出が求められていた、もしくは求められているからである。

 市場の失敗を補うのが政府の役目とはいえ、経済危機の原因の一翼は政府にもある中で、政府は今後こうした失敗の教訓をどのように活かしていくのだろうか。その意味でも世界的に「政治」に強い関心が集まっていると言えよう。

 私は、政府の能力の限界が、民主主義の誤謬(ごびゅう)、そして選挙活動にあるのではないかと考えている。公共支出のかさむ高齢者の投票率は高く、それを負担する若年層は投票率が低い。政治家は当然選挙に勝つことが至上命題であるため、投票率の高い年齢層、地域層、あるいは、宗教、性別に影響され、票の取れる政策に傾倒する。

 本来は、若者が政治にもっと関心を持ってくれれば事態は変わるのであろうが、日本に限らず、大半の先進国では、そうはいかない状況である。しかし、今回の米国大統領選挙では大きく事情が異なったと言われる。若者が動いたとされているからだ。そして、彼らを動かしたツールがインターネットだったというわけである。

 このように述べると、インターネットが若者を動かし、オバマ候補を大統領に導いたかと受け取られるかもしれないが、事情は少し違っているようである。確かにオバマ候補のサイトは良くできてはいるが、実は他の候補と際立った違いはない。また、ネットによる少額献金が取り上げられることもあるが、これもオバマ候補が初めて行ったものではない。

 しかしながら、30ドル以上の献金者にはオバマTシャツを送るという顧客管理システム、見知らぬ若者同士が次にどの場所で応援するか相談できるコミュニケーションツール、そのための自動車の相乗りを募ったり、オバマガールと称する若い女性がビデオメッセージでオバマ支持を訴えるといった事実は、選挙そのものがICTの力によって大きく変わったことを意味している。

 ここから導き出されるのは、企業のICT化とまさに同じ論理だろう。ICTは、おのおのの潜在的な力をエンパワーメントするということだ。ただし、ICTが候補者の魅力を強く伝えることはできても、それだけで選挙で当選することはないだろう。これは、ICTにより会社の業務を効率化することがあっても、それだけで会社が順調に成長していくわけではないということと同じである。本質的な魅力や利益の出る仕組みを考えるのは、やはり、生身の人間なのではないか、オバマ新大統領は、それを理解していたからこそ、ICTをツールとして駆使できたのかもしれない。

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