• 2009/01/09 掲載

2009年は仮想化やコンプライアンスでSIerの選択と集中が進む、国内IT市場10大予測

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IDC Japanは、2009年の国内IT市場でキーとなる技術や市場トレンド、ベンダーの動きなど主要10項目を発表した。
 IDCの予測によると、2009年の国内IT市場は、前年比マイナス成長、市場縮小となる見込みだという。IDC Japanが10月に発表した国内製品別IT市場動向での予測をさらに下方修正した形だ。中でも特にハードウェア市場の減少が大きいという。

 こうしたことを踏まえて、IDC Japanが発表した2009年の国内IT市場予測、主要10項目は以下の通り。

1. 国内IT市場は、これまでの拡大傾向から一変してマイナス成長

 IDC Japanは、2008年9月に発生した米国大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻の前後で、国内のユーザー企業が2009年度のIT関連予算の見通しをどのように変えたのかについて、緊急の調査を実施。その結果、破綻前には予算の増額を予定していた企業が20%であったが、破綻後には3%に急減し、減額とした企業が27%から51%にほぼ倍増したことが分かったという。

 また、第3四半期の出荷状況調査の結果に基づき、IDCが12月にまとめた2009年の予測では、ハードウェア、ソフトウェアおよびITサービス市場のいずれも2008年9月に発表されたものから下方修正している。2009年のIT市場全体では前年比成長率はマイナス1.7%と予測している。国内のIT投資がプラスの成長を回復するのは2010年以降になるという。

2. 仮想化サーバーとシステム管理ソフトウェアの拡大がSIerの選別を促進する

 IDC Japanは、サーバーの仮想化が市場の大きな流れとなっていると指摘。2008年に国内で出荷されたx86サーバーの12%は仮想化ソフトウェアの管理対象になっているという。サーバー仮想化でその効果を確認した企業ユーザーは、2009年、さらにストレージやネットワークを含めて、システムインフラ全体の仮想化の実現によって、さらに維持管理コストの低減と管理の容易性、システム構築の柔軟性を求めるという。しかし、その一方で、インフラとアプリケーションの完全な分離が標準化されていない現状では、それぞれに試行錯誤が繰り返されると警鐘を鳴らす。

 また、統合化が進む結果、ユーザー企業と製品ベンダーの双方から信頼を得られるSIerの優位性が急速に高まり、選択が進むものとIDCではみている。

3. PCの急速な価格下落によって、主要ベンダーの事業撤退が起こる

 2008年第3四半期の国内市場では低価格PCの出荷台数が30万台に迫る勢いで躍進し、2008年を通じて出荷台数で見た消費者市場を大きく拡大する結果となった。これまでのところ個人による利用に止まっているが、価格性能比が向上するに従い、企業向けPC市場に低価格PCが大規模に受け入れられ、2009年には全出荷台数の11.3%となる165万8,000台に達するとIDCではみている。

 以上の流れは、低価格PCを販売していないベンダーにとって市場機会が縮小することを意味する。高価格で高性能であるPCの存在意義がなくなることはないとしても、性能差が縮まる状況の中では、価格を引き下げる努力が欠かせない。その結果収益性低下が顕在化し、2009年中に市場からの撤退を選択するベンダーが出るとIDCではみている。

4. バーチャルクライアント化が進展し、サーバーとストレージによる処理集中化への回帰が起こる

 前項で述べられたように、低価格PCの市場拡大が、企業のPC利用の再検討を迫ることになるという。PC自体の維持管理コスト削減や、セキュリティおよびコンプライアンスの観点から情報の一元管理や情報共有が求められ、その実現手段として、低価格PCを利用したバーチャルクライアントの利用が検討されるとIDCはみている。

5. モバイルPCの利用拡大と、携帯電話向けアプリケーションの増加によって、クラウドコンピューティングへの流れが加速する

 モバイルPCの利用が拡大している。この動きは2009年に複数のセグメントに重大な影響を与えるとIDCではみている。移動体通信事業者にとってモバイル低価格PCがビジネス分野で利用される可能性が見えてきており、イー・モバイルに対抗するサービスの販売強化を進める。これを推進するのはビジネス向けアプリケーションであり、アプリケーション開発ベンダーは新たなビジネス機会を得ることになる。PCベンダーは、この両者に協力することでモバイルPCの市場性をさらに高めることができる。

 低価格PCの無線LAN接続の急速な普及と、携帯電話のインターネット接続は、互いに同期をとりながらビジネス向けアプリケーションの品揃えを強化することになる。また、移動体通信事業者にとっては、双方ともサービス収益拡大の期待が持てる。両者が相互に影響し合ってビジネス向けアプリケーションの拡充が進むことで、クラウドコンピューティングに向かう動きが加速するという。

6. 部門単位のSaaS利用拡大はIT統制見直しの契機となる

 SaaS(Software as a Service)利用の環境が整備され、PCの低価格化がネットワークベースのアプリケーション利用を促進する結果、その利用や導入の意思決定は、全社の統一されたポリシーが整備される前に、各事業部やグループなど、より小さな組織単位での利用が進展する。2009年は、ユーザー企業に、所有すべきソフトウェアと非所有で利用すべきソフトウェアの選定力が求められるという。

7. セキュリティ市場に新技術が投入され、システムインフラ整備の重要な要素となる

 ウイルスなど外部からの脅威に対して、セキュリティベンダーは新しい技術を取り入れ、サービスとしての提供を開始しつつある。従来はウイルスを検知するデータベースをクライアント側に持たせる方式が標準であった。ところが、ウイルスの種類が急速に増加し、また発生間隔が短くなる傾向にあり、この方式では安全性を確保できない状況になりつつある。こうした事態に対応するため、インターネット上で攻撃パターンをチェックすることで、最新のデータベースによる検知を可能にするサービスが提供され始めた。ユーザー企業はその投資対効果を慎重に見極める必要があるものの、その負担と現実の脅威の増加は避けられないことから、導入は速いペースで進むとIDCではみている。

8. データセンターのグリーン化への取り組みが本格化する

 地球温暖化防止への関心の高まりとグリーンITを求める市場の要求に対応するため、データセンター事業者は、これに積極的に取り組むことで差別化と高付加価値化を狙うものとIDCではみている。データセンター事業者がこれに取り組むことで、熱効率の良い建屋とシステムの構築が可能となり、国内のITに関連する電力消費量を抑える効果が期待できる。電力コストを抑えることでデータセンターの利用料金を低く設定し、より多くのクライアントをサポートできる。そうした業者はさらに投資を行い、利用料金のさらなる抑制と、競争力の強化を実現できるという好循環が生まれると予測している。さらに温室効果ガスの排出量取引との結びつきも出てくると指摘した。

9. 日本のITベンダーによる海外進出が加速する

 国内市場のIT分野の成長性が低いことから、ビジネスの拡大を求めて海外進出を果たすことが国内ITベンダーの大きな課題であった。過去にいくつかのITベンダー買収の実績があるものの、いずれも十分な成果を上げてきたとはいえない。しかし、国内ベンダーにとってのクライアントである日本企業の海外展開も常態化し、それら企業の海外子会社に対するITサービス、ITソリューションの提供機会が増加している。さらに、国内で実績のあるIT製品の海外での販売も重要な拡大戦略の1つであることから、国内ITベンダーの海外進出は重要な選択肢となっており、2009年はこうした動きがさらに活発になるであろうと予測している。

 国内ITベンダーは、これまで海外オペレーションに積極的に関与せず、組織の統合化、一体化に取り組む姿勢が希薄であった。しかし、買収対象となった企業の期待はグローバル化と、管理職の国際化を含めた組織の融合であることも確認されている。製品の開発からマーケティングまで、一体化したアプローチが実現できるかどうかが国内ベンダーにとって買収を成功させる鍵となるものとIDCではみている。

10. ITベンダーのコンプライアンスへの対応力が試される

 厳しい経済環境と企業活動における規制強化の流れの中で、金融機関の融資条件の中に占めるコンプライアンスやセキュリティを重視する傾向が強まっている。そのため、ITベンダーがコンプライアンス関連のITソリューションを提供する場面では、技術上の課題解決だけでなく、金融機関の融資条件にも適合するシステムを提供できる能力を備える必要がある。2009年は、こうした対応力を持ち高い付加価値を持ったITベンダーと、これに遅れを取るベンダーの間で優劣の差が大きく開く年となるという。

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