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第1回では、SaaS/ASPサービスの体系的な分類と、提供ベンダー側の視点から、現状の市場傾向や今後のマーケット規模の推移などをみてきた。
第2回では、提供者側および利用者側双方の視点から、SaaS/ASPのメリットの1つであるコスト優位について、従来型のパッケージ型ソフトウェアと比較して分析した。第3回では、SaaSの現在の認知および利用状況や、アプリケーションの動向などについて述べていく。
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ユーザー企業にSaaSはどの程度浸透しているのか
ECRでは、国内の一般企業に向けてSaaS/ASPの認知と利用に関するアンケート調査を2008年に行った。アンケートのサンプリングで獲得した回答数に対して、日本の企業デモグラフィクス(従業員規模別/業種別企業数)にあわせたウェイトバックを行い、アンケートで得られた結果が、日本市場全体としてはどのような規模感を伴うものなのかを分析した。
この調査結果によると、まずSaaSを認知・認識している企業は、農業など第一次産業を除いた全国の約133万企業のうち、全体の13%、17万8,400社となった。業種別にみると、公共やIT関連業で、認知の度合がやや高かった。このうち、一般系企業では、1,000人以上の企業で認知がやや進んでおり、IT系企業は一般系企業に比べると比較的どの規模でも認知が進んでいた。
すでにSaaSを利用している企業は、全体で4%に過ぎず、約4万6,700社が利用しているとみられる。業種別にみると、公共での利用が最も進んでいる。規模別にみると、利用率では一般系、IT系ともに100人以上の企業が高いが、利用企業数が多いのは、国内市場においてもともとの企業数が多い一般系100人未満のセグメントとなる。
この結果から、SaaSは、市場のライフサイクルでは現在まだ黎明期にあり、現在導入している企業は、イノベーターからアーリーアダプターに属する企業であるといえる[
注1]。認知や利用も、業種や規模でばらつきもみられ、本格的な導入の普及に向けて、まずはSaaSに対する適正な認知が進むような活動を、市場に対して行っていくことが求められている
SaaSへの投資金額は平均130万円
SaaSに対する投資金額は、2007年では1社あたりで平均137万円となり、業種でみると金融業での平均投資金額が高かった。2008年には130万円とやや投資金額は下がるものの、SaaSを利用する企業数が増加するため、市場としては拡大が見込まれる。
SaaSで提供されるアプリケーションはさまざまで、多岐に渡っている。アプリケーションは以下のような種類に分けられる。
財務・会計
給与・人事・勤怠管理
生産・販売・仕入・物流
基幹業務(ERP・SCM)
社内メール管理
データバックアップ
ビデオ電話・ビデオ会議
情報共有(GW、ナレッジマネジメント)
eラーニング
電子商談・WEB-EDI
顧客管理(CRM)
業種特化アプリケーション
コールセンター支援
オフィスソフト
ファイアウォール・アクセス監視
ウイルスチェック
総合セキュリティ管理ツール
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このようなSaaSのアプリケーションの利用契約数は、2007年では全体で20万2,300契約とみられる。利用企業数4万6,700社とあわせてみると、SaaSを利用する企業1社で4本ほどの複数のアプリケーションを導入していることがわかる。現在利用契約数が多いアプリケーションは、ファイアウォール・アクセス監視、ウイルスチェック、総合セキュリティ管理ツールなどのセキュリティ系アプリケーションと、セキュリティ系以外では、業種特化アプリケーションやサポート支援などの利用が多い。2008年では、これらに加えて、社内メール管理、顧客管理(CRM)の導入が進むとみられる。いったんSaaSを利用すると、初期導入コストの削減や運用のしやすさなどの導入のメリットから、1種類のアプリケーションの利用に留まらず、追加導入の傾向がみられる。
[注1]イノベーターからアーリーアダプターに属する企業
米スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が提唱したイノベーター理論より。商品購入のスタンスについて、商品購入の早い順に「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つに分類したもの。
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