• 2008/03/03 掲載

【セミナーレポート】“守り”のスタンスを脱した戦略的なシステム運用管理の方向性を提示

2月7日開催「システム運用管理 レベルアップの秘訣セミナー」

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企業間の競争が激しさを増し、ITシステムが大規模化・複雑化するなか、多くの運用管理者にとって、システム停止や障害をいかに未然に防ぎ、安定的な稼働を実現するかは喫緊の課題だ。最近ではセキュリティやコンプライアンス強化の面からも、さらに効率的かつ高信頼のシステム運用が求められてきている。そこで2月7日開催「システム運用管理 レベルアップの秘訣セミナー」では、企業の生命線を守りビジネスのさらなる発展を実現する“攻め”のシステム運用管理について、現状と課題、展望、さらには具体的なツールまで幅広い視点から探ってみた。

新しい技術の導入を積極的に進めて
「守りの運用」から「攻めの運用」への転換を

【ITアーキテクト】“守り”のスタンスを脱した戦略的なシステム運用管理の方向性を提示
IDC Japan
ソフトウェア リサーチアナリスト
入谷光浩氏
 IDC Japan ソフトウェア リサーチアナリスト 入谷光浩氏は、「最新動向から見る運用管理の将来像」と題して基調講演を行った。

 入谷氏はまず、情報システムが企業活動において不可欠の存在になる一方で、システムの大規模化・複雑化が進んだ結果、システムの構成・変更を管理者が把握しきれず、トラブル発生時にも迅速な対応が取れない、複雑なシステムが人的オペレーションミスを招いているといった問題を挙げた。

 さらにオープン化の進展によるサーバの増加が、これに拍車をかけていることも見逃せないと言う入谷氏は、「現在全国で275万台にもおよぶオープン系サーバが企業に設置されており、毎年50万台超が新たに増加しています。また、サーバの価格が下がったため、足りなければ買い足すといった安易な増設が増えて部分最適化が進み、企業全体での一元的な管理や相互のシステム連携がうまくいかなくなってきていることも大きな要因です」と語り、「昨今、セキュリティ/情報漏えい対策/コンプライアンス対応といった社会的・法的要請や、SOA/仮想化といった新技術の登場、グリーンITなど環境的要請の高まりなど、運用管理の担う範囲が飛躍的に拡大していることも見逃せません」と、現在の運用管理者が置かれている困難な環境を浮き彫りにしてみせた。

 一方で企業の側では、運用管理におけるITコストが大きな問題になっているとも入谷氏は語る。

「企業のCIOを対象にした調査では、『コスト削減』を最優先課題と考える経営者が全体の4割を超えており、同じく企業のITに対する課題のなかでも『システム運用管理コストの削減』がもっとも多くなっています。従業員1000人以上の企業では7割以上がこの要件を挙げており、とくに大企業で複雑化するシステムへのコスト対応が深刻化していることがわかります。」

 入谷氏は、こうした状況を打開するためには「人手による管理の限界を認識し、運用管理に特化したツールを導入することで、包括的かつ効率的な管理を実現することが必要です」と強調した。

「現在の運用管理ソリューションには2つの大きなトレンドがあります。『自律運用』と『統制型の運用管理』です。前者はシステム自身が運用タスクを自動的に実行する、いわば『自動化』の流れであり、後者は運用プロセスの標準化やシステム拡張への柔軟な対応、そしてコンプライアンス対応といったことがらによって、システムの運用管理を一元化することを指しています。」

 入谷氏は最後に、「『自律』と『統制』を融合した次世代型運用管理を実現するための技術は、着実に進化しつづけています。既存のプロセスを脱却し、いち早く新たな技術を採り入れて改善を図ることで、企業の経営力と競争力は向上します。それによって今までの『守り(引き算)』から『攻め(足し算)』の運用管理への転換を実現していきましょう」と訴えた。

 
システムの「可視化」→「判断」→「改善」の
ライフサイクルマネジメントを実現するWebSAM

【ITアーキテクト】“守り”のスタンスを脱した戦略的なシステム運用管理の方向性を提示
日本電気(NEC)
第一システムソフトウェア事業部
グループマネージャー
山崎正史氏
 続いて、日本電気(NEC)第一システムソフトウェア事業部 グループマネージャー 山崎正史氏が、「攻めの運用管理への転換 『個別最適から全体統制へ』」と題して講演。同社の提供する統合運用管理ソフトウェア「WebSAM」を用いた、ITシステム運用の改善・構築について紹介した。

 WebSAMには「全体統制型システム運用管理」というNECの運用管理におけるコンセプトが込められている。これは個別最適化が進んでいる現在の企業ITシステムにおける縦割り管理とその弊害に対して、システム全体を可視化し、業務視点に立った横断的なシステム監視・管理を実現しようというものだ。

「縦割りの管理体制では、機器やシステムごとにバラバラの状況把握しかできません。これでは障害発生時に迅速な原因特定や対応ができないばかりか、業務に及ぼす影響も把握が困難で、サービス品質が大きく低下してしまいます。また特定の管理者に依存した属人的管理も問題です。システム全体を可視化して業務全体を見渡せる管理体制を確立し、システム全体で管理ノウハウの蓄積・共有化を行って、運用レベルを平準化・効率化することが不可欠です。」

 こうした「個別最適」から「全体統制」への移行を実現するツールが「WebSAM」だと、山崎氏は紹介する。WebSAMでは運用管理に必要な基盤機能をWebSAMフレームワーク上に共通化して運用性を統一し、なおかつ製品間の連携性を向上して運用サイクルをシームレスに実行可能にしているという。

「その具体的なツールの例が『統合コンソール』です。複数の運用ツールを一つのコンソールで一元管理でき、システム全体の状況を単一の画面上ですべて把握することが可能です。画面のGUIは当社の研究所で人間工学に基づいて開発したもので、情報をオペレータが直感的に把握できるために、見間違いなどの人的ミスを防止できるようになっています。」

 もちろんWebSAMの強さは、こうしたインタフェースなどの表面的な改善だけではない。同製品ではシステム運用管理の全体にわたって「システムの可視化」→「判断」→「改善」のライフサイクルマネジメントを実現できる多彩な機能を実装しており、各フェーズにおいて管理者の負荷を軽減する自律的な管理とナレッジの提供を可能にしている。

「たとえばシステムを監視していて異常を発見した場合、いち早くそれを管理者に通知するだけでなく、解決に必要なマニュアル情報などあらかじめ蓄積しておいたナレッジを提供して、迅速なアクションを助けるといった動的な対応が可能です。しかし企業のIT要員は増えておらず、こうした一連の対応を、従来のように人手で行うことはすでに限界にきています。複雑化・高度化したシステムを限られた人的・費用的リソースで管理していくには、日常蓄積してきたITインフラの運用ノウハウと解決ノウハウを共有化していく仕組みづくりが必要です。」

 それらをもとに、ハードウェア/OSからミドルウェア、業務アプリケーションまでのプロビジョニングをシナリオ運用で自動化し、構成変更にともなう監視の再設定などの煩雑な作業も、すべて自動化して運用効率を向上させる取り組みが不可欠だと山崎氏は強調する。

 さらに山崎氏は、NECネクサソリューションズ社のデータセンターにおける採用事例などを挙げたのち、「より高度な監視ニーズへの対応」として、EMCジャパンの提供する「Smarts」との連携による「モデル・ベース障害分析」を紹介した。

 「システムの複雑化により障害発生時の原因特定が困難になっており、障害対応時間が長期化する原因のひとつになっています。そこで、WebSAMでは、Smartsの分析テクノロジーをプラグインすることで、迅速適確な原因特定を可能にしています」と説明し、今後も引き続きEMCとの協業によって、より統合的で自律的なシステム運用管理を探っていきたいと締めくくった。


モデル・ベース管理など独自の技術で
効率的な管理を実現するEMCのSmarts

【ITアーキテクト】“守り”のスタンスを脱した戦略的なシステム運用管理の方向性を提示
EMCジャパン
グローバル・サービス統括本部
シニアテクノロジーコンサルタント
鈴木 聖氏
 最後のセッションでは、EMCジャパン グローバル・サービス統括本部 シニアテクノロジーコンサルタント 鈴木聖氏が、「より複雑化するITインフラの効率的な管理」と題して講演を行った。鈴木氏は、自律運用を構築する上での課題と要件を解説しながら、自社製品である「Smarts」と同製品が提供するモデリングをベースとしたトポロジ検知機能などについて紹介した。

 「Smarts」は、ITサービスおよびITサービスの基盤となる複雑なネットワーク、アプリケーション、サーバ、ストレージ・インフラストラクチャのエンド・ツー・エンドの管理を自動化するツールであり、WebSAMとの連携によってより正確なシステム上の障害検知と一元的なシステム管理を実現できるという。

 鈴木氏はまず、「ITマネジメントにおいてはSLA(Service Level Agreement)の遵守が何よりも重視されなくてはなりませんが、それにはサービスの稼働維持が最大の要件です。そうした視点に立ったシステム運用管理では、万が一障害が発生した場合、障害原因の切り分けが迅速かつ適確な対応のポイントになります。『Smarts』はITインフラやアプリケーションといったシステム構成要素の正確な検知と相関関係図を作成することで、管理者に必要な情報を提供します」と説明。同製品がサービス/インフラストラクチャのエンド・ツー・エンドの管理を実現するために、ネットワークに関連する問題の根本原因およびインパクトの解析を自動的かつリアルタイムで、ドメインにまたがる形で実行できることを紹介した。

 とりわけ注目を集めたのが、同製品のベースとなる「リアルタイム・モデル・ベース管理」や「Codebook Correlation Technology」といった独自の技術だ。これらを用いることで、「情報インフラシステムの構成を正確に把握することが可能になり、なおかつシステムの構成変化にも自動的に追従できます。このため障害発生時にもすぐに適確な対応をとれ、余分な手間を省くことが可能になります。その結果、少ない管理者であっても本来のインシデント管理に充分注力できるようになります。これはモデル・ベース管理だからこそ可能なことです」と、鈴木氏は再度製品のアドバンテージを強調した。

 昨今の運用管理への意識の高まりを反映して今回は序盤から満席となったセミナーだったが、最終セッションまでほとんど退席者もなく、運用管理のレベルアップに寄せる関心の高さを今さらながらに実感させられるセミナーとなった。

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