- 2007/12/03 掲載
【セミナーレポート】Enterprise 2.0がもたらすコラボレーションシステムの変革とは
11月2日開催 セミナー「Enterprise 2.0が変える企業の新しい作業スタイル」
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企業ITの世界に押し寄せる“第3の波”
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インプレス R&D インターネットメディア総合研究所所長 中島由弘氏 |
冒頭、中島氏は「Web 2.0の復習」として、提唱者であるTim O'Reilly氏の論文やミームマップなどを紹介しながら、Web 2.0の概念や登場の背景などを説明。その象徴的因子として、「検索」「参加」「関係」という3つのキーワードを挙げた。
Enterprise 2.0は、こうしたWeb 2.0の技術や情報モデルを企業内の情報システムに適用することで生産性を向上できるとして、ハーバードビジネススクール准教授のAndrew McAfee氏が2006年に提唱した概念である。コンシューマ向けのインターネットの世界で起きた現象が企業情報システムの世界にまで波及したことで大きな注目を集めているが、中島氏によると、このような例は決して珍しいことではないという。
「基本的にITの技術というのは、世の中でこなれたものが企業にも採り入れられます。まずパソコンが第1の波で、かつては個人が趣味で使う道具に過ぎなかったのですが、1982年頃に企業で使われはじめると、ミニコンやオフコンに代わって完全に主流になりました。次に1994年のインターネットが第2の波。これも、メールやWebの利便性がコンシューマの間で認識された後に、企業で一気に導入が進んだものです。Web 2.0の要素を企業内の情報共有の仕組みとして取り込もうというEnterprise 2.0の動きは、まさに第3の波と言えるでしょう。」
そして、中島氏はEnterprise 2.0を「本質的には“全員参加の情報共有システム”」と位置づける。そこで求められるのは、企業内で従来から行われてきたトップダウン型でも、なかなかうまく機能していないボトムアップ型でもなく、トップとボトムと社外の区分けのない情報共有の仕組みだという。また、具体的なシステムとしては、ファイルサーバやメールが第1世代、グループウェアやエンタープライズ・ポータルが第2世代とすると、「ユーザー参加の概念と、検索やタグ付けなどのWeb関連技術を採り入れた、第3世代のコラボレーションシステムが必要」と説明した。
一方で中島氏は、情報共有の柔軟性を阻害する要因として、企業内のデータが「3つの世界」に隔てられている現状を指摘する。1つは、ERPやCRMなどのシステムで扱うデータベース化された定型データだ。もう1つは、企画書や見積書などに代表されるOfficeドキュメントなどの非定型データ。そして3つ目が、ブログやSNS、掲示板などの、昨今増えてきているインターネット系のデータである。中島氏は、「これらを相互に関連付けて、横断的に検索可能としていくことが必要であり、それを実現するプラットフォームとしてのEnterprise 2.0ソリューションが求められています」と述べた。
続いて中島氏は、インターネットメディア総合研究所が4月に実施した、Enterprise 2.0導入意向調査の結果を紹介。Web 2.0の認知状況や業務に与える影響度の認識が全般的に大企業ほど高いことから、社内のコミュニケーションが難しくなるほどWeb 2.0(およびEnterprise 2.0)のニーズが高まると考えられるなど、さまざまな興味深いデータおよび考察を示した。
最後に、中島氏は「コンシューマが自ら望んで参加しているインターネットの世界と異なり、企業情報システムの世界では、参加者のモチベーションが一定しないという課題があります。Enterprise 2.0型の情報共有を実現する上では、システム的なことだけではなく、ユーザー1人ひとりの“参加の意識”を高めることが不可欠です」と述べ、講演を結んだ。
「StarOffice Xシリーズ」
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日本電気 第二システムソフトウェア事業部 統括マネージャー 悦喜弘人氏 |
今日、多くの企業はグローバル化による競争激化やコンプライアンスに対する要請といった激しい社会環境の変化に直面している。一方で、企業内部では、多様化する勤務形態、プロジェクト制業務の増加、日々増大する多種多様な情報といった、コラボレーション環境の変化も起きている。このような環境において、コラボレーションシステムには何が求められるのか?悦喜氏は次のように説明する。
「コラボレーションシステムに求められるものとして、4つのポイントがあります。まず、1人ひとりがアイデアを創出しやすい作業環境を提供することです。2つ目として、個人のアイデアを組織的な成果につなげるための共同作業環境も重要です。3つ目として、個人やチームが作業をする上ではさまざまな情報を活用したり、新たな情報を生み出したりすることになりますが、それら膨大な情報を容易に利活用できる手段も欠かせません。最後に、これら全体を支える企業の基盤として、十分なセキュリティ対策やコンプライアンス対策も求められます。」
こうした要求に応えるべく開発されたのが、10月5日にリリースされた「StarOffice Xシリーズ」であり、「個人パフォーマンスの最大化を組織力につなげて、企業価値を向上することを支援する製品と位置づけている」(悦喜氏)という。StarOffice Xシリーズの提供機能は大きく分けて4つ。統合作業環境、コラボレーションサービス、情報管理基盤、システム基盤で、悦喜氏は「統合作業環境では『ビジネスナビゲータ』、コラボレーションでは『ブログ』など、それぞれ最適な機能を提供していきます」と語る。
StarOffice Xシリーズでは、ビジネスナビゲータ上のボタンをクリックするだけでメールやスケジュール、キャビネットなどのさまざまなサービス(機能)を切替表示できる。Microsoft Officeなど、よく利用するツール類のボタンを追加することも可能だ。さらに、メール新着、ファイルのキャビネット新着、RSSリーダなどのWidgetをビジネスナビゲータウィンドウに自由に組み込んで、自分が必要とする最新情報を容易に取得することもできる。
つまり、ユーザーそれぞれが効率的に作業を行うための使い勝手の良さや、作業を行う上で必要となる情報収集を容易に行うことができる作業環境を実現することで、個人パフォーマンスを向上できるというわけだ。
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セミナー当日の会場風景。多くの来場者が 耳を傾け、注目度の高さをうかがわせた |
会議開催のスケジュール調整で悦喜氏が紹介した手順は次のとおり。まず、主催者はビジネスナビゲータ上で呼び出したスケジュール帳から関係者の予定を確認して、開催日を入力。これで関係者には会議の開催が通知される。そして、通知を受けた関係者はビジネスナビゲータの画面で参加するか否かを選択するだけで、主催者への返信も自分のスケジュール帳への登録もすべて完了する。従来のメールを使ったスケジュール調整に比べ、圧倒的に工数を削減でき、複数のメール情報を管理する必要もない。
キャビネット機能を利用した、ドキュメントのレビュー依頼で紹介した手順は次のとおり。依頼者がビジネスナビゲータ上のキャビネットに文書を保管するだけで関係者にレビューしてほしい文書が格納されたことが通知されるというもの。つまり、複数の関係者が1か所に保存された同一のファイルに対してレビューを行えるので、メールによるレビュー依頼に比べて大幅に作業を効率化でき、文書の管理も容易になるのは明らかだ。
ブログについても同様に、デモを交えながら解説。特に、組織や役職によりアクセス可能なブログをきめ細かく設定できる点を重点的に説明した。企業でブログを活用する際にはプロジェクトチーム内のみで情報を共有したい場合なども多く、アクセス制御は必須の機能といえる。なお、このアクセス制御はブログに限らず、StarOffice Xシリーズのユーザー管理の基盤となる機能であり、悦喜氏によると、「日本型組織に対応した管理構造で、人事システムとも高い親和性を確保しているため、人事異動にも柔軟かつ迅速に対応できる」という。
さらに、悦喜氏は業務システムやインターネット上のサービスをStarOfficeと組み合わせて1つのサービスとして利用するマッシュアップの例を紹介。たとえば『出張申請』という作業を行う場合、従来は社内の出張申請システムのほかに、交通機関の選択や宿泊施設の予約、行き先の地図情報など、複数のWebサイトなどを使って作業する必要があった。デモでは、マッシュアップによってこれらの複数のサービスを統合して、同一画面上で出張申請という1つの作業として実施できることを紹介した。
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悦喜氏は最後に「『Enterprise 2.0対応のコラボレーティブウェア』の完成を目指して、NECでは今後も継続的に機能強化を図っていきます」と強調し、講演を締めくくった。
以前はイメージが先行していた感のあるEnterprise 2.0だが、徐々にその有効性が認識され、具体的なソリューションなども登場してきたとあって、企業側の注目度はかなり高まっているようだ。本セミナーにおいても、悦喜氏の講演後に設けられた質疑応答では、時間終了間際まで熱心な質問が寄せられるなど、このテーマに対する関心の高さを改めて感じさせた。
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