- 2007/11/02 掲載
【特別寄稿】安全管理と危機管理を徹底せよ(2/2)
チェック&バランス体制の下
冷徹な緊張関係が不得手
日本的な経営風土の中では、調和と平和が重んじられる。そして互いの面子を尊重しあって、暗黙の相互理解と以心伝心によるコミュニケーションに重きが置かれる。そうした経営体制の中では、内部告発までも積極的に活用する冷徹な緊張関係を前提とするチェック&バランス体制は受け容れ難いのだ。
しかし、企業はすでに高度に発達した情報技術の成果を業務の中に幅広く取り入れてしまっている。その結果、それに伴う危険を必然的に包含しているのだ。また、地球的な規模で広がっている温暖化や環境汚染の危険にも曝されている。企業がすでに背負っているそうした危険とリスクの大きさを考えると、日本的な経営風土を温存している余裕はもうないのだ。続いている企業の大事故は、「対岸の火事」ではなく「明日はわが身」なのだ。
新商法下の監査役
企業の監査役は、総会で選任される独立した株主代表ということになっているが、現実には社長に指名・任命されて報酬を貰っているに過ぎないから、社長の方針に背いたり、ほかの取締役の職務執行をチェックしたりすることはできなかった。おまけに取締役会において意見を述べることはできても議決権を行使することはできなかった。
しかし、2002 年の商法改正によって、大規模会社は、従来方式の監査役を設置するか、あるいは米国式の監査委員会設置会社にするかの選択が可能になった。委員会設置会社においては、監査役を置かない代わりに、監査委員会、メンバーの過半数を社外取締役とする指名委員会、および報酬委員会の三委員会と、業務執行を担当する執行役( =執行役員)を置く。監査委員の取締役には、今までの監査役と同様の権限、すなわち、調査権、違法行為の差止請求権などが付与されており、しかも従来の監査役の限界がかなり解決されている。
会社の業務において適法性に疑問がある案件を発見した場合には、従来の監査役と異なり、議決権を行使して問題案件の承認を防止することができる。承認されてしまっても、従来通り違法行為の差止請求権を行使することも可能だ。この委員会制度における監査委員会こそ、チェック&バランス体制の構築と運営を担うべき主体なのである。
すでに上場企業のうち60から70社程度が委員会設置会社であり、執行役員制度は広まりつつある。しかし監査委員取締役によるチェック&バランス体制の推進情況はどうだろうか。もう一度見直してもらいたい。
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