- 2007/10/29 掲載
【中国ビジネス最前線(9)】上海フリーペーパー×Webメディアミックス事情-プロト(2/2)
上海で無料中古車情報雑誌をリリースする「宝路多(プロトコーポレーション)」
宝路多、取材スタッフ出社前の様子 |
また、競合他社は積極的に著名ポータルサイトなどと相互リンクをし、安直にPVを増やす方法で実績を作ろうとしている。だが、宝路多の神谷氏は現在のところ、あくまで吉車網のサイトの広告には投資せず、コンテンツ、つまり掲載車数の拡充に努めるとしている。「現在所有している1000台、2000台の情報量では、メーカー名、ブランド名、価格などのいくつもの条件で絞るとその結果は数台しか表示されないでしょう。それでは情報サイトとしては少なすぎてまだ意味がありません。」
メインコンテンツである中古車情報以外にも吉車網はコンテンツの拡充を行っている。たとえばオークションの落札データ。これを掲載しているのは吉車網のみだ。また日本のGoo-netでは車の拡大写真を表示する機能が好評であるため、この機能を吉車網にも搭載した。今後もコンテンツの拡充を行う予定で、まずは販売価格の相場を出す予定だ。
「PageViewを増やしてもコンテンツがなければユーザーは喜ばないでしょう。競合会社がお金をかけてまで古い情報を公開して、結果ユーザーの評価を下げている現状があります。確かにお金を出せば(著名なポータルサイトの)新浪や(上海で支持を得ている地場サイトの)上海熱線とリンクできますが、我々には充実したコンテンツがあるので、まずはそれで勝負していきたいですね」。実際に吉車網のサイトを訪れる人はどのサイトを経由するのだろうか。その答えはダイレクトにURLを入力する人が全体の6割で一番多いのだという。これについて神谷氏は「紙媒体の吉車を入手して、その上に書かれた吉車網のURLを入力しサイトに訪れる人が最も多いのでしょう」と推測している。
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副董事長の神谷健司氏(右)と 総副経理の金仲吉氏(左) |
インターネットの普及に伴い、中国最先端の都市上海では、宝路多を例にとっても、日本で起きたような紙メディアとWebメディアが融合が進みつつある。今回の宝路多のビジネスの大きな軸は、「成長段階でリーダーになっておく」という点と「ユーザー視点で必要な情報を利用しやすい形で提供していく」という点だ。どちらも当たり前のことだが、中国ビジネスでは前者に偏重しているケースもある。中国でも当たり前の"ユーザー視点"が必要とされてきているなど、質が大きく問われる時代を見据えた同社の事業戦略を今後も見守っていきたい。
山谷剛史 海外専門ITライター。守備範囲は中国・東南アジア・インド・北欧など。現在主に中国に滞在し、中国関連の記事を複数メディアで執筆。一般誌にも時々執筆するが、とはいえノンポリティカルな執筆が基本。統計数字だけではなく、できる限り誰にでも読めて分かり、匂いや雰囲気を感じることができる記事をつくるのがポリシー。そのために裕福な人々ではなく、国民の大部分である平民層以下にスポットを当て、現地で体を張って取材。 |
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