• 2007/09/06 掲載

セカンドライフの大いなる可能性とは(2/2)

デジタルハリウッド大学院三淵啓自教授にインタビュー

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仮想世界が人々にもたらす心理的作用の長所、短所


――仮想世界がもたらす人々の心理への影響とは。

三淵■
 とても大きいですね。環境を共有したりアバターがコミュニケーションすることにより、Webよりも誹謗中傷が心配になってきます。セカンドライフ内での暴力的行為も心配になってきます。冷静に考えれば、中でテレポートもログオフもできるんですけど、中に入りこんでいるほど、パニック状態に陥り精神的な影響を受けてしまうと思います。

 ただし、逆転の発想で治療にも使えるのではないかと思います。例えば、対人恐怖症の人は、アバターを通して人と会うことができるので、人との付き合い方の練習になるかもしれません。 セカンドライフの中では性的なことも含めて暴力的な行為を行う人もいるのですが、これはある意味で社会のストレスが反映されているのではないかと感じています。

 例えば、心理カウンセラーや診療内科医など専門家が参入してくれないか、という構想も練っています。やはり、心身両面に悩みを抱えていても、精神科を受診するのはまだまだ敷居が高い。これらの専門家が、萌え系のきれいな看護婦さんのアバターとして入るなら、話しやすくもなるだろうし。そういう悩みを聞くことで、リアル社会で暴力的行為を踏みとどまる歯止めになるかもしれない。

――仮想世界で、美しく若い女性になったとすると、現実の自分自身に幻滅感を覚えたりしませんか。

三淵■
それが大きな問題で、依存症に陥る原因といわれています。現実にないものを中で作ることによって、現実逃避につながる点も否めません。しかし、自身の目標が見えてくることもあります。中でいろんな人にあいさつしてると、友達も増えていく。すると、人と人とのコミュニケーションはそれほど難しくないなと感じたりする。物理的コンプレックスをもつ人たちは、そのコンプレックスにとらわれて、自身の人間性、ものの考え方の部分の問題点を認識していない場合も多い。

 アメリカでは、体型が太っていた女性が、セカンドライフ内でスタイル良く愛想のいい女性になっていたところ、たくさん声をかけられ、現実社会でも努力をして体重を落としたという話もありました。セカンドライフは、色々な気づきも与えてくれるんですね。

――現時点の登録者の平均年齢は?

三淵■
 平均年齢は、35歳。ある程度、地位を確立して時間にゆとりがある、アーリーアダプターがいい世界を作ってくれています。これから若い人たちにも広がっていくと思いますが、今の現状を押し付けではなく、いかに楽しみ方を伝えていくかが課題です。

若者は社会の厳しさを知ってからセカンドライフに来てほしい


――これから登録者となる若者に向けて一言お願いします。

三淵■
 できれば社会の厳しさを知ってから入ってきてほしい。セカンドライフは定年退職後の「セカンドライフ」にぴったりとも言われていますが。基本は、リアル社会を知らずに中に入ってくると、「だるいなぁ」とゴロゴロ寝たままの人が増えるかもしれないと思っています。リアルで色んな苦労を知っていて、建築家になりたいと夢を持っていた人などは、セカンドライフの中では無料でそれができる。中でお店もできる。この楽しさはリアルを知らないと実感できない。

 ところが、リアルを知らずに小学生からセカンドライフを先に知ってしまうと、空も飛べるし、ビルも建てられる。そして、現実で問題に直面したときに、あまりの実現の難しさにすさんでしまう。

インターフェースを向上させれば、リビングで世界遺産が見れる日も


――最後に。これからの、セカンドライフの改善点と将来は。

三淵■
 コンピュータのインターフェースの改善に取り組むのは当然のことですね。中は、自由度が高いのに、二次元の画面で見ると臨場感を得られないし、キーボードやマウスで操作するのは難しい。そのため、アーリーアダプターが多い段階にとどまっている。バーチャルリアリティ・グローブでコンテンツを作るなどが必要になってきます。私はそのブレークスルーが今年末にかけてくるのかなと思っています

 リビングルーム自体がセカンドライフにつながる実験もしています。具体的には、セカンドライフの中にカメラを3台置いて、カメラが同期して動いていくんです。カメラの映像をプロジェクターで正面と側面に映し出すと、バーチャルな空間がリビングに登場する。高齢者でも孫と一緒に世界遺産を見に行くことが可能になります。

 実は、数年前にバーチャルリアリティは盛り上がった。しかし、デバイスが高かった上にコンテンツがなかったんです。DNA分子構造をぐるぐる回せますといわれても一般消費者は興味を抱かなかった。そのときと比べて、セカンドライフの中には、コンテンツが無尽蔵につまっていて、日々、新しいものが生み出されている。これらが、普及していけば、ハードウェアも数百万のものが数十万円になるかもしれません。

 リアリティのあるインターフェースが必要です。

――貴重なお話、ありがとうございました。

今回でこの連載は終了します。


(取材・構成:ソフトバンク ビジネス+IT編集部 坂井)

●三淵啓自(みつぶち・けいじ)
1961年生まれ。スタンフォード大学コンピューター数学科にて修士号取得後、米国オムロン社サンタクララ研究所にて人口知能や画像認識の研究に携わる。その後、米国ベンチャー会社設立を経て(株)日本 ウェブコンセプツ、米国法人3U.com 社を設立。2004年からデジタルハリウッド大学大学院の大学院専任教授に就任。2005年7月デジタルハリウッド大学院「メディアサイエンス研究所」NCG研究室長に就任し文部科学省の調整費プロジェクトに従事、2006年10月、セカンドライフ研究室を設立。室長に就任。 主な著書:『セカンドライフの歩き方 バーチャルガイドブック』(ASCII出版)




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