- 2007/04/05 掲載
【中国ビジネス最前線(4)】対応が最も難しいのは中国人--成都「Sim's Cozy Guesthouse」(2/2)
ゲストハウス「Sim's Cozy Guesthouse」は 成都の静かな観光地に位置する |
ゲストハウス設立にあたって、雇ったスタッフは大卒のスタッフが全体の半数を占める。大卒のスタッフは宿泊客を直接もてなすフロント、バー、旅行カウンターで働く。いずれも成都市内の人材市場と呼ばれる、日本の職安のような場所で年間500元(8,000円程度)を払うと求人活動ができる権利を得る。ゲストハウスに必要とされたスタッフの条件とはなんだろうか?「やはり私たちの舞台は中国なので中国語、それと世界中からのお客さんと意思疎通の手段である英語は必要不可欠。また私が日本人で日本人のお客さんも多いので、日本語スタッフも常時います」とコミュニケーション能力を重視したという。
気になる離職率だが、雇ったスタッフの多くは長くここで働く。「客層が国際的なゲストハウスが成都市内に数軒しかなく、辞めても同業のゲストハウスに就くことは難しい。そのため離職率は低いのではないでしょうか」と植田さんは分析する。ただし、皿洗いや掃除のスタッフは先述の人材市場ではなく、知り合いのツテをたどる。そうでないとセキュリティなどの観点から「トラブルが起きやすい」のだそうだ。
国際的なサービス提供をウリとしているSim's Cozy Guesthouseだが、客が少なめの昼間はスタッフを集めて会議を行う。そこで植田さんやスタッフが問題提起をし、スタッフ自ら解決策を模索するという徹底した現場主導が行き届いている。とはいえ、それに至るまで、中国人スタッフの扱いはときに授業料を払って学んだという。「客からもらうお金と、スタッフに経費などで支払うお金は別々に管理しなければいけないとか、作業が細かくないからチェックをするとかいろいろありますが、管理次第では中国人スタッフでも十分戦力になってくれます」と植田さんは言う。
一見人材は潤沢に見えるゲストハウスだが、宿経営の管理を司る理想的なマネージャ探しには本当に困っているのだそうだ。「理想的な人物像は“口先だけではなく確かな実践力がある管理者”なのですが、なかなか見つからなくて困っています。中国には賢い人が多く、アイデアもあり、また能力もあるのに、基本的にほとんどの人が行動に現さないし、決めたことを持続できません。たぶん自分自身のためなら必死になるのでしょうが、会社のため、人様のために動くという意識が希薄な感じがします」と植田さんは中国でビジネスを行う難しさを語る。
現在植田さんは成都の2軒目のゲストハウスを申請中だという。「Sim's Cozy Guesthouse」の設立の経験から、2軒目の設立にだいたいこれくらいはコストがかかると見積もっていたが「予想より随分高くついて驚きました。実際に手続きしてみないといくらかかるか予想もつかないですね。その辺の行政の情報が不透明で不満です」と、やはり日本では考えられない行政の対応も中国でビジネスを展開する上で知っておく必要のあることだろう。
![]() |
Sim's Cozy Guesthouseのネットカフェ
|
簡易インターネットカフェにはパソコンが5台置かれており、利用時間は無制限。ただし誰かが待ってたら適度に利用を切り上げてね、という宿泊客のモラルに任せた利用システムとなっている。その利用システムでパソコンが足りなくなった場合、フロントのパソコンも利用者に貸し出す。最高で120人が泊まれるゲストハウスだが、6台のパソコンで数が足りなくなったということは滅多にないという。
近年日本以外でもデジカメが相当に普及し、個人旅行者ならば誰もがデジカメを持ち始めたし、デジタルミュージックプレーヤーも普及した。成都にも大きな秋葉原のようなPCマーケットはあるが、ここでメモリカード類を買い足したいというような旅行客はまだ少ないそうだ。一方で「ゲストハウスが提供するデジカメのデータをCD-Rに転送するサービスはとても好評で、利用する旅行客は多いですね」と植田さんはいう。
旅行者に人気のソフトはSkypeだ。最近特に人気が上昇しており、多くの利用者が国際電話代わりとしてIDを所有している。そうしたニーズにこたえるべく、Skypeをインストールしているだけでなく、貸し出し用のイヤホンとマイクが一体化したヘッドセットもゲストハウス側で所持している。ほかにはMSN Messengerがさまざまな国の旅行者に、QQという中国産チャットソフトが中国の旅行者に人気で、いずれもインターネット端末にインストールしている。
山谷剛史 海外専門ITライター。守備範囲は中国・東南アジア・インド・北欧など。現在主に中国に滞在し、中国関連の記事を複数メディアで執筆。一般誌にも時々執筆するが、とはいえノンポリティカルな執筆が基本。統計数字だけではなく、できる限り誰にでも読めて分かり、匂いや雰囲気を感じることができる記事をつくるのがポリシー。そのために裕福な人々ではなく、国民の大部分である平民層以下にスポットを当て、現地で体を張って取材。 |
関連コンテンツ
PR
PR
PR