- 2007/02/14 掲載
ERP導入で企業を強くする[第3回/全3回]
~中堅中小企業のERP導入実践シナリオ
コスモコンサルティング 代表 ・ITコーディネータ ・名古屋ソフトウェアセンター ERPアドバイザー ・独立行政法人中小企業 基盤整備機構 IT推進アドバイザー 畠山忠彦氏 |
ERPシステム導入に当たって全ての業務システムを刷新する必要はない。使えるものは使うのが原則だ。
■ 全ての業務に適合するテンプレートが備わったERPシステムはない
■ 無理してERPシステムに業務を合わせることは会社の「強み」を損なう
■ 足りない機能をカスタマイズ、アドオンすれば予算と導入期間が増大する
■ 既存システムが陳腐化していない(まだ使える)
以上の理由から使える既存システムは残して、ERPシステムとの充分なインターフェースを構築すればよい。前述の通り、業務間のリアルタイム性と整合性が維持されていればERPシステムとしての要件をクリアする。生産管理システムなどは、受注形態、製造品目、顧客などにより独自性があり、ERPシステムのテンプレートごときでは対応できないのが現実だ。ERPシステム+既存業務システムのコンビネーションも大いにありだ。前述のD社もこの手法を取ったことでコスト、導入期間を縮めることができた。(図4)
図4:D社事例[ERPパッケージ+既存業務システム活用ケース]
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このような業務システム統合ケースにおける留意点は以下の通りである。
■ 特殊な業種・業態については無理をせず既存システムもしくは専用パッケージを使うことも選択肢として検討する
■ 業務システムからERPシステムへ限りなくリアルタイムにデータを収集する仕組みを設ける(インターフェースを開発する)
■ 業務システム側でデータの修正・削除が行われた際の整合性が保たれるようにインターフェースを設計する
この手法を用いれば全システムを刷新するリスクを避けて、段階的な導入も可能となり、効果を早期に享受できるメリットがある。
ERPシステム導入プロセス
下記に示すERPシステム導入プロセス(図5)のうち、1~4の導入前プロセスが重要で、その後の成否に大きな影響を及ぼす。
1 経営戦略を明確にして企業の進むべき方向性を明確にする
2 戦略の実行に必要な業務プロセスを企画し、あるべきビジネスモデルを考案する。企画したビジネスモデルを実現する上で必要なシステム要件を企画する(戦略実行効果の仮説を立てる)
3 RFPを発行して複数のベンダーから提案と見積もりを求め、その中から最も適合するERPシステムを選択する
4 ERPシステムを導入する
5 ERPシステムを運用する(仮説の検証)
図5:ERP導入プロジェクトの進め方
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外部の人材の活用も検討する
D社の事例にあったとおり中小企業におけるERPシステム導入には人材に関する不安がつきまとう。大企業ならば情報システム室のスタッフが導入前の準備を行うが中小企業においては少数精鋭で業務をこなしているなかで専任スタッフを捻出する余裕はない。外部の人材にアドバイスを求めることも検討するとよい。ERPに熟知し、的確なアドバイスができる人材に導入前の作業を依頼することは期間短縮効果だけでなく第三者としての経営改革のアドバイスが大いに期待できる。ITコーディネータなどERPシステムに強いコンサルタントが適任といえる。
今、中堅中小企業へのERPシステム導入は旬を迎えている。素早い経営判断をして、競争優位を確立するためにも、一日でも早くERPシステム導入への取り組みを始めることを薦める。
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