- 2006/11/27 掲載
【中堅中小企業 ERP市場調査】ERPベンダーの勢力を紐解く 今後の台風の目はNEC
<調査結果サマリー>
■2005年度のERP市場は1064億円(前年比8.1%増)、2006年度見込みは1154億円
中堅中小企業向け市場規模は、670億円(2年連続で2桁の13.4%増)。2006年度も2桁成長を遂げ741億円へ。2010年には1027億円市場へ
■中堅中小企業向け市場の伸びの要因は景気回復感による投資意欲増進、老朽化した基幹システムのリプレース、内部統制、日本版SOX法などの「コンプライアンスブーム」が追い風
■中堅企業と中小企業に住み分けが明確化。特に中堅市場は「ヒートアップ」
■ベンダーシェアは、富士通、大塚商会、住商情報の上位3社は変わらないが、「寡占化」から「混戦市場」へ
■中小企業ERPは大塚商会が圧倒的、ミロク、OBCは差を埋められない
■NECの本格参入で06年度はますます混戦模様。SAP、オラクルの実績はいつ顕在化するか
2005年度のERP全体市場規模は、1000億円を超えて対前年比8.1%増の1064億円だった。2006年度には対前年比8.5%増の1154億円に達する見込み。しかし大企業向けERP市場は飽和感が強く伸びは小さい。実際にERP市場の伸びを牽引しているのは中堅中小企業向けERPである。
中堅中小企業向けERPの05年度は、2年続けて2桁の伸びで対前年比13.4%アップの670億円となった。2桁成長を維持している要因は、景気回復によるIT投資意欲の増加と、オフコン、PCサーバなどの老朽化した基幹系システムの見直しでERPへのリプレース、内部統制や日本版SOX法などの「企業コンプライアンスブーム」が追い風となっている。ベンダーがユーザにERPを営業、提案する機会が増えたこと、ユーザー企業も課題対応のソリューションとして検討したことが要因である。
今後、日本版SOX法の実施基準が明確になる2007年以降も順調に市場の拡大が見込まれ、2010年には1000億円を超えることが予測される。
Source:ノーク・リサーチ |
ERPパッケージライセンス売上高市場規模推移
|
2005年度中堅中小企業向け市場(年商500億円未満企業)のERPシェアトップは、3年連続で富士通の「GLOVIA-C」で16.1%だった。次いで、大塚商会の「SMILE α AD」が13.3%、住商情報システムの「ProActive」が8.5%となっている。昨年に比べ富士通、大塚商会、住商情報システムの上位3社の順位は変わらない。ただし、下位ベンダーとのシェアは微妙に詰まってきている。それは過熱気味の中堅企業への全ERPベンダーによる集中展開が、上位3社による「寡占状態」を拒んでいる要因だ。特に飛躍的に伸びたベンダーは見当たらないが、「住み分け」によるベンダーの得意カテゴリでの位置取りが明確になっている。特にNECによる本格参入が、ERP市場のシェア争いの混戦模様をさらに激化させている。
Source:ノーク・リサーチ |
ERPベンダーシェア推移
|
「年商50億円未満」の中小企業市場では大塚商会の「SMILE α AD」が38.5%と際立ったシェアでトップを堅持している。中小企業市場はまだら模様の景気状況で必ずしも全般的に好転しているとは言えない状況で、「豊富な既存顧客に着実な提案をし続ける」地道な営業活動をベースに、セミナーなどで新規顧客を獲得する政策が功を奏し、2年連続でシェアトップを維持している。
「年商50億円-100億円」「年商100億円-300億円」の市場では富士通の「GLOVIA-C」が2年連続でトップ。既存顧客のリプレースに加えて、中堅企業市場攻略に特化した新しい事業部設立による「オール富士通」としての販売力強化などが実績を高める弾みとなっている。
「年商300億円-500億円」では住商情報システムの「ProActive」が16.8%で昨年から引き続きシェアトップ。昨年はグループ会社へまとめて導入するなど規模の大きな案件が多く、シェアの維持に繋がっている。また、この中堅上位層の市場では、オラクル、SAPが出始めている。大企業市場に強みを持つ2社だが、中堅上位以下では2社の実績は少なく、SMB市場攻略に苦戦していることがわかる。
Source:ノーク・リサーチ |
年商別ERPベンダーシェア推移
|
中堅大企業は、COMPANY、OracleEBS、my SAPBusinessSuite、GLOVIA-C、OBIC7ex、ProActive、SuperStream、CORE Plus、GRANDIT、SMILEie、スーパーカクテル、奉行新ERP、Smile α ADに「販売のベクトル」が集中しているのは明らかだ。しかもシェア上位3社は競合視されていながら、シェアを維持している。その要因は「販売力」。富士通は富士通ビジネスシステムを中心とした富士通グループのチャネル網、住商情報システムには住商エレクトロニクスなどの住商グループの総合力、オービックは自社の強力な営業力をもっている。そして、まだ競合視されることは少ないが、この上位3社と同様の販売力を持ち、この構図を崩す可能性を持っているのはNECである。
また「業種・モジュール別」という住み分けを行い、ニッチな戦略を進めているベンダーもいる。内田洋行は「製造業の販売管理」を基点に展開している。SSJは「中堅企業の財務会計」という足場を固めようとしている。東洋ビジネスエンジニアリングは「製造業の生産管理」の方針を貫いている。一方、外資系ベンダーは苦戦を強いられている。SAPはBusinessOneのチャネル戦略、パートナープログラムの見直しを行うことで現状からの脱却を図っている。オラクルは「JD Edwards」のブランドを復活させ、短期導入パックの販売などの政策を打っているが、SAP同様に苦戦している。国産ベンダーが激しくせめぎ合う中堅中小企業市場で、パートナーの「頭数を揃える」のではなく、「売ることができるパートナー」の存在が課題となっている。
このように、競合が激戦化している中堅企業市場は「自社または他社製品の基幹システムのリプレース」市場で、いずれ大企業市場同様に飽和状況となるのは時間の問題だ。今後潜在需要の大きな中小市場(年商30億円~100億円)に力点が移るのは間違いないところだ。
Source:ノーク・リサーチ |
ERPベンダー勢力マップ |
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR