- 2006/09/11 掲載
【特別企画】グローバルe-ガバナンス-今後の課題はアメリカ中心主義の排除と人の教育
【IT戦略】世界情報社会サミット
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ITUは世界で一番古い国際組織。今から141年前、フランスではナポレオン3世、イギリスではビクトリア、ドイツではビスマルクの時代、この時代に世界で初めて電報が使われ始めた。人々は一度電報を使いだすと有益だと認識し、瞬く間に普及していった。
しかし、電報を国際間でやりとりするには国ごとに規格や料金が異なるため、なかなか容易ではない。この状況では国際通信などできないということで、関係者がパリに集まり、国際電報条約を締結。国際通信における電報のやり方、料金のシェアといった内容を皆で合意したのである。これを実施していくため事務局が設立。これがITUのはじまりである。
実施の過程では、さまざまなマルチな取り決めがなされた。例えば、一国一票制の導入や使用言語、会議の仕方など。それらが国際組織法を構成していった。これが後に国際連盟に引き継がれ、今やITUで策定されたさまざまなルールが使用されているのである。
また、ITUは時代の流れとともにその役割を変化させてきている。3年前、コンサルタント会社ブースアレンが、世の中の環境の変化に対処し生き抜いてきた10の機関を発表した。企業ではGE、大学ではオックスフォードなどが選ばれ、その中でITUも選ばれたのである。
ジュネーブとチュニジアで開催された世界情報サミット
そのITUは2003年と2005年、世界情報社会サミットをジュネーブとチュニジアで開催した。
情報通信がこんなにも我々の生活を革命的に変革している時に、世界のリーダーが集まり、未来の情報社会がどうあるべきかの共通認識を持つ必要がある。その目的でサミットが開催されたのである。
2003年12月10~12日、ジュネーブで開催された第一回会合では、何十という会合が開かれ、かつ一回の会合には何十万の方々が携わり、合意を形成した。合意の中身は、人々を中心とし、皆が参加し、発展を中心とした情報社会を形成すること。情報技術を使って知識や情報を得、皆が自分の潜在能力を最大限活用できる公平な社会の形成を目指す。これを2015年までに建設しようと、世界中の国の元首が集まって合意したのだ。
2005年、チュニジアで開催された第二回では、その実現のための具体的な実施計画が策定された。世界レベル、国家レベル、地域レベルでやるべきことは何か。11のアクションラインに基づき、国連それぞれの担当機関、例えば、インフラはITU、コンテンツはユネスコなど、各機関が責任を持って取り組み、皆で進めていくことに合意したのである。
残念ながら、これらの経緯は日本ではあまり報道されなかったが・・。
今後の課題。米国中心主義の排除と人の教育
2015年までに世界中の人たちが道具(インターネット)を持つようになる。それに向けて、人々が道具を使えるようにならなければいけない。そのためには教育が必要だ。そして、道具があって、使い方も知っているが、使わないケースが考えられる。例えば、図書館。図書館の利用方法を知らない人はいないが、利用する人はそれほど多くない。こういったケースはさけなければならないのだ。
それにはインターネットを使えば便利だということを認識してもらう必要がある。使う意思がないと当然ながら人はそれを使わない。使いたいと思う人をどう増やすかがこれからの教育の大きな問題となる。 この問題に対して情報サミットではあまり議論されなかった。
情報サミットの中でもう1つ解決できなかった問題は、インターネットガバナンスである。現在、インターネットはアメリカがすべて支配している。インターネットからあがる利益、コントロール(アメリカがある国のインターネットを止めようと思えば止められる)など、すべてアメリカの思い通りと言っても過言ではない。これでいいのかというのがインターネットガバナンスの問題である。
この一国集中体制の解除に対してアメリカやインターネットに携わっている人々は当然ながら反対をしている。現体制の維持を望んでいるのだ。一方、開発途上国は、インターネットは皆のもの、皆でコントロールしていかなければならないと主張する。
このインターネットガバナンスの民主化をいかに進めていくか。アメリカ集中体制をいかに解除するか、今後も議論していかなければならない。
まとめ
最後にまとめとしてあらためて、世界情報サミットで合意したこと、やり残した課題をあげておく。
第一回のジュネーブでは世界中の人々が、2015年までに公平な情報社会をつくることに合意し、第二回のチュニジアでは、実施計画が決定した。ファシリテーターは国連機関がつとめ、企業、市民団体など皆で実施していくことになった。
解決できなかった問題は、インターネットガバナンスと、インターネットを使いたくなるような人を育てる教育である。
今後は、これらに関しては議論していく必要があると考えている。
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